1.慢性腎炎は必ず透析が必要になるのですか。
慢性腎炎でも腎機能が低下しないものはいくらでもあります。 でも悪くなる可能性を考えて定期的に診察を受けるのが大事です。
尿に蛋白が一日3g以上漏れてしまい、そのためむくむ病気です。 原因別に3つの病気に分かれます。 最も多いのがリポイドネフローシス(または微小変化群)で比較的若い人に多く急に激しくむくむのが特徴です。ステロイドがとてもよく効きますが何回か再発しやすい病気です。腎不全にはなりません。 つぎが膜性腎症といってそれほどむくみはひどくないのですがステロイドはあまり効かず慢性化します。次第に腎機能が低下する場合があります。また癌が隠れていることがあり、注意が必要です。
日本人に一番多い慢性糸球体腎炎の一種で腎生検をしないと診断がつきません。血尿が特徴的で風邪を引いたりすると血尿がひどくなります。半数は慢性腎不全で透析が必要になると言われます。
基本は蛋白質の制限です.詳しくは「腎臓病のABC」で
5.慢性腎不全になるとなぜ食事中のタンパク質を減らさなければいけないのですか。
蛋白質を全体のカロリーを保ちつつ0.5g/Kg体重(50Kgの人は25g)以下に抑えると腎不全の進行が遅くなることが実証されているからです。
8.腎生検でメザンギウム増殖性糸球体腎炎と診断されました。 軽度なので治療の必要はないといわれたのですが、これからどんな経過をたどるのでしょうか?またどんな注意をすれば進行を遅らせることができるのでしょうか? 潜血+4 蛋白+1です。
現在の尿所見であれば薬物による治療は必要ないと考えます。 また、特別に日頃注意することはありません。 あえて云えば、風邪をこじらせないようにすること、また、過労をためないことです。 日常生活は普通にして軽い運動も行って、定期的に(2、3ケ月に1回)通院し、尿蛋白の程度を確認してもらって下さい。 今後、もっとも大切なことは経過観察を定期的に受けることです。 メサンギウム増殖性糸球体腎炎は大きく分けて、二つあります。 一つはIgA腎症です。この病気は慢性に経過する糸球体腎炎の約半数を占めている病気で、日本ではもっとも多い病気です。IgA腎症は基本的には二通りの経過があります。 約半数の患者さんが安定した経過をとり、透析医療を必要になることはありません。 残りの半数の患者さんが徐々に進行し、10-30年の経過で透析を必要とすることになります。 そこで、貴方の今後を考えた場合、腎生検で組織所見が軽度であって、蛋白尿が1+程度であれは進行する可能性は少ないと考えます。 もし、進行性の経過をとるとしたら、必ず、蛋白尿が増えて2+〜3+になってゆきます。 したがって、今後の定期的な通院が非常に大切になってきます。 今後、進行性の経過をとったとしても、現在では、早い時期であれば進行を抑える治療法もあります。 もう一つのメサンギウム増殖性糸球体腎炎は頻度はIgA腎症より少ないのですが、病気の経過はIgA腎症に似ていて、安定して経過する場合と蛋白尿が徐々に増えて腎機能が徐々に低下して行く場合があります。 この二つの経過の頻度はIgA腎症より安定して経過するほうが多い病気です。 これらの糸球体腎炎を含めて全ての腎炎において、病気の進行を抑える予防策はまだ見つかっていません。 しかし、さきほどもお話し申し上げましたように、進行し始めた早期に治療を開始すれば進行を抑えることがかなり可能になってきました。 したがって、病気が進行することを、あまり心配しないで、軽症のうちはなるべく普通 の生活をしていただいた方がよいと思います。 繰り返すようですが、進行期を見逃さないために、経過観察を続けていって下さい。 (あけぼの病院腎臓内科 小林豊先生)。
9.尿蛋白が陰性になったのですが、それでもIgA腎症は一生治らない病気なのでしょうか?
結論からお話しします。IgA腎症は治る(医学的には治癒と云います)病気ではないと考えています。 IgA腎症が初めて報告されて、まだ33年しか経っていないため、長期間の経過はまだ十分には分かっていません。 しかし、長期間病状がきわめて安定している患者さんも稀ではありません。 医学的には、このような状態を寛解と呼んでいますが、これは、今後、いつか再発がある可能性があるという意味を含めた考えです。 IgA腎症の再発は急に悪化しません。 現在、蛋白尿がほぼ陰性として、もし、いつか、再発があるとした場合、少しづつ蛋白尿が増えてゆくことになります。 したがって、2、3ケ月に1回程度尿検査を受けていれば、再発してきたかどうか、すぐ分かります。 そして、再発してきたら、適切な治療をまた受けて対応してゆけばよいと考えます。 IgA腎症の治療も最近ではだいぶ進歩してきました。 IgA腎症の長期的な経過について現状をお話ししましょう。 私どもの施設ではIgA腎症と診断が確定してから、10年間治療をしながら継続して経過観察をした患者さんが多くいます。 その患者さんたちの10年間の状態(医学的には転帰と呼んでいます)は約50%の患者さんが貴方と同じように、蛋白尿や血尿が少なく、腎機能も保持されています。 残りの25%の患者さんが徐々に進行して少しづつ腎機能が低下しています。 最後の25%の患者さんが残念ながら10年間のあいだに慢性腎不全になり透析療法を受けています。 このように、IgA腎症でも治療のいかんにかかわらず、病状が安定し、中には、全く蛋白尿や血尿が消失して経過している方も少なくありません。 問題はこれらの安定した経過をとっている患者さんが、今後も続けて安定した経過をとるかどうか、まだはっきりしていません。 したがって、今後も、主治医の先生のアドバイスを常に受けて、病状がいつも安定しているかどうかを、確かめながら生活をしていって下さい。 一般に、病状が安定している時は、生活や仕事は全く普通にしても支障はありません。 また、今後、妊娠、出産についても何ら支障がありません。 自分の病気をたえず見つめながら、病状に応じた充実した一生を送られることを期待しています。 あけぼの病院腎臓内科 小林豊先生
10. 慢性糸球体腎炎と診断されて10年が経ちましたが、特に悪くも良くもなりません。もう受診しなくてもよいのではないでしょうか? 腎臓の病気は何であっても、一部の病気を除き、一生続く病気です。 しかも、多くの病気がある頻度で進行し、最終的には末期腎不全(透析療法を受ける必要な状態)になることがあります。 それぞれの病気はある時期は安定し、ある時期は進行します。 もし、2ー3年自分の病気がどのように経過しているのか、正確な情報を知らないまま過ごし、その時期が進行期にあたっていますと、取りかえしのつかないことになってしまします。 したがって、一番大切なことは、安定している時期にこそ、定期的な通院診療を根気よく受けることです。 安定している時期は2、3ケ月に1回で十分です。 患者さんにとって、大切なことは、以上のように、ご自分の病気が、いま、どのように経過しているか、ということを知って、日々充実した生活を送ることだと思います。 (あけぼの病院腎臓内科 小林豊先生)
17. IgA腎症が進行性かどうか(透析に進むかどうか)はどうやって分かるのでしょうか。 1日の蛋白尿が1gを超えているかどうかである程度判断可能です。 したがって、現在、外来で蛋白尿が1+程度なら心配ありませんが、2+ないし3+が続いているようでしたら、1日の尿を全部ビンにためて1日の尿蛋白の定量を行ってもらって下さい。 IgA腎症のおいては、1日1g以上の蛋白尿が持続すると徐々に腎機能が低下して進行してゆきます。 しがたがって、その時点で扁桃線を摘出し、ステロイド療法を開始します。 この治療の評価は今後時間をかけて判断されると思いますが、おそらく進行を抑える可能性が大きいと考えています。 (あけぼの病院腎臓内科 小林豊先生)
20.慢性腎炎の女性は妊娠中毒症になりやすいのでしょうか? IgA腎症を含む慢性腎炎の患者が妊娠中毒症の頻度が高い事実はありません。 北里大学病院の妊娠した31名中4名が妊娠中毒症になりましたが、この頻度は健康妊婦と差異がありません。また、全員出産後はもとのIgA腎症の病状にもどっており、進行した方はおりません。 仕事も十分注意して対応すれば、継続可能です。
21.巣状糸球体硬化症(FGS)で血尿が出るのは良いことなのですか?
1。巣状糸球体硬化症という病気は一般には蛋白尿が主体で、 血尿は少ないのが特徴です。 しかし、血尿が蛋白尿と同時にみられることも決して稀では ありません。 2。巣状糸球体硬化症の診断は腎臓の組織検査で決まります。 その際、腎生検で採取した腎組織を光学顕微鏡、電子顕微鏡、 蛍光抗体法の三つの検査で検討します。この三つの検査は 大きな医療施設であれば、必ず行っていると思います。 巣状糸球体硬化症はこの三つの検査所見を総合して行います。
22.紫斑病性腎炎とはどのような病気ですか? 紫斑病性腎炎は小児に多い病気ですが、20-30才代でも、けして稀れではありません。 紫斑病性腎炎は皮膚に紫斑が生じるため、このような病名がついています。 その他、腎臓や消化管、関節などに異常が生じることがあります。 腎臓の病気、すなわち、紫斑病性腎炎は皮膚の紫斑と同時に始まる場合もありますが、おくれて始まってくる場合も少なくありません 。皮膚の紫斑は、しばしば繰り返すこと(再発)がありますが、紫斑病性腎炎は多くの場合1年前後で蛋白尿や血尿が消失し、再発はほとんどありません。 そして腎臓の病気の程度は蛋白尿の程度とほぼ比例します。
23.学童の紫斑病性腎症は治らない病気でしょうか?安静はどの程度必要ですか?
紫斑病性腎炎であれば蛋白尿や血尿は徐々に少なくなりま す。 9割以上は1年以内に蛋白尿や血尿は消失し、完全寛解の状態になります。 再発は多くの慢性腎炎と異なり、ほとんどありません。 もし、良くなったあとに 蛋白尿や血尿が3+-2+と再び出現してきたら、他の腎炎との鑑別のために腎生検 が 必要になってきます。 とくに、IgA腎症との鑑別が大切になってきます。 それは、IgA腎症が一生続く病気だからです。 一般に腎臓の病気はその急性期は安静が必要ですが、1ケ月程度過ぎたあとはなるべ普通の生活をしながら長期にわたる腎臓の病気を治療してゆくことが大切です。 とくに、慢性腎炎の場合はそうです。 お子様の紫斑病性腎炎の場合は確かに腎臓の病気が始まってから1ケ月前後は入院なり、自宅安静が必要ですが、その後は自然の経過で軽快してゆくことが 大部分ですから、なるべく、学校生活は普通にした方がよいと考えます。 ただし、以上の療養に関する事柄はお子様を実際に診ていただいている主治医の 先生のご意見を伺った際の参考にしていただければ幸いです。 (あけぼの病院腎臓内科の小林 豊先生より)
32..腎臓病患者に対するインフルエンザワクチンの安全性および効果につき教えてください。
移植患者へのインフルエンザワクチンの安全性は確立されていますが、効果については多少議論があるようです。UpToDateではこれを推奨しています(Clin Transplant 1996 Dec;10(6 Pt 1):556-60)。一方塩酸アマンタジンは腎障害患者には十分注意して投与すべきとされています。 また透析患者での抗体産生は低下していることが考えられますが、実際の効果は一般とあまり変わりないということで投与が推奨されます(Semin Dial 2000 Mar-Apr;13(2):101-7) ネフローゼ症候群、IgA腎症、SLEなど対しステロイドなど免疫抑制療法を施行中の患者様にも推奨されています。 なおタマゴや他の薬剤にアレルギーの経験がある方は避けたほうが良いです(花粉症は関係ありません) (秀和綜合病院腎臓内科 塚本雄介)
41.膜性腎症に対するステロイド療法と免疫抑制薬の効果について教えてください (2007/2/7)
1.ステロイド療法について。 5年ほど前に当時の厚生省の『進行性腎障害調査研究班』で全国調査をした結果、膜性腎症によるネフローゼ症候群の治療としてステロイド療法は明らかに有効であるとの報告が出されました。ステロイド薬単独でも多くの方が不完全寛解I型(尿蛋白の1日の量が1.0g以下になる状態のことです。このレベルまで蛋白尿が改善した場合は将来腎機能が低下して末期腎不全にならないという状態です)に改善することが分ってきております。私どもの施設(30年間北里大学病院に在籍しておりました)でもステロイド薬単独で約80%の方が2年間の治療により不完全寛解I型に達しました。したがって、ステロイド療法を行って蛋白尿が減少傾向になり、明らかに効果があると考えられた場合は、そのままステロイド薬の単独療法で2年間治療をしております。私どもの2年間のステロイド療法はプレドニン40mg/日から開始して7ヶ月で15mgまで漸減し、その後の1年半を15~10mgで維持しております。このような治療に反応しない場合、免疫抑制薬を併用するようにしております。最初から免疫抑制薬を併用していない理由は、ご存じのように免疫抑制薬にもいろいろな副作用があるからです。ステロイド薬も副作用がある薬ですから、いくつもの副作用がある薬を同時に用いることを避けております。問題はステロイド薬単独で効果が現れない場合です。 2.ステロイド薬と免疫抑制薬の併用について。 この場合、多くの施設でステロイド薬に加えて免疫抑制薬を併用しております。ご存じのように免疫抑制薬にもいくつか種類があります。それぞれの免疫抑制薬が実際に膜性腎症に有効であるかどうかは全国調査の段階では明らかにされておりません。多くの施設で現在検討が行われているところで、5〜10年先きにはこの効果の有無があきらかになると期待されています。お話しのブレデニンという免疫抑制薬はわが国で開発された薬で副作用が少ない薬です。その効果に関しては、まだ、十分に明らかにされておりませんが、厚生省の薬事審議会で成人のネフローゼ症候群に対して保健の適応が承認された薬剤で一定の評価はされております。 ( あけぼの病院腎臓内科 小林 豊先生より)