Last Updated 2007/03/12
多発性嚢胞腎のQ&A

●1.

多発性嚢胞腎といわれましたがどんな病気ですか?

●2.

遺伝病といわれましたが具体的には?

●3.

腎臓の働き(機能)が悪くなるとはどういうことですか?

●4.


多発性嚢胞腎でどんな症状が現れますか?


●5.

腎不全とは?

●6.

多発性嚢胞腎で腎臓の他に悪くなるところはありますか?

●7.

多発性嚢胞腎の診断はいつ、どのようにしてすることができますか?

●8.

嚢胞が大きくなるのを防ぐことはできますか?

●9.

手術によって治すことはできないにでしょうか?

●10.

腎不全の進行を止めることはできないのでしょうか?

●11.

くも膜下出血を予防することはできますか?

●12.

将来血液透析が必要といわれましたが、血液透析とはどういうものでしょうか?


●13.


遺伝病といわれましたが結婚はできるのでしょうか?

●14.

家族検診を勧められましたが受けたほうがよいでしょうか?

●15.

多発性嚢胞腎の腎動脈塞栓術を受けた場合、血圧はどうなるでしょうか?

●16.

嚢胞腎の透析患者ですが、お腹の圧迫で苦しいです。まだ尿量があるので片方の腎臓摘出か、片方の腎動脈塞栓術(TAE)を受けようか迷っています。

●17.
 
多発性のうほう腎が原因で血液透析を受けていますが、腎臓移植は可能でしょうか?

●18.
 
慢性腎臓病とはなんですか?


1. 多発性嚢胞腎といわれましたがどんな病気ですか?

腎臓は正常では左右一対存在します。多発性嚢胞腎とはこの両方の腎臓に嚢胞が多数発生し腎臓が次第に大きくなる病気です。
嚢胞とは腎臓の中に生じる液体が溜まる袋状の空洞のことです。通 常、20歳以降に嚢胞の出現が明らかとなり、多くの場合しだいに腎臓に働きが弱まります。病気の進展はふつう遅く、腎臓に働きが全く失われるには40歳以降です。このほか類似疾患として胎児の時からすでに嚢胞がある先天性嚢胞腎や、高齢になって発見される単純性嚢胞があります。

これらは多発性嚢胞腎とは異なる疾患です。


2. 遺伝病といわれましたが具体的には?

専門用語で常染色体優性遺伝という遺伝形式をとります。
これは、夫婦のうちどちらかがこの病気の遺伝子をもっていれば、子どもには50%の確率で性別に関わりなくこの遺伝子が遺伝することを意味します。
しかしながら病気の遺伝子が遺伝したとしてもその発病の程度は軽いものから重いものまで千差万別です。


3. 腎臓の働き(機能)が悪くなるとはどういうことですか?

人の体の50〜60%は水分です。
この体の水分の量や中に含まれる成分(毒素やミネラル分)を調節するのが腎臓です。

このほか血圧を調節したり、血液、骨をつくることに関与するホルモンを出します。
こうした働きが次第に弱まることを腎臓の働き(腎機能)が低下するといいます。
腎機能を知るには血液検査でクレアチニン(CR)値を測定し、糸球体濾過量(GFRジーエフアール)を計算して調べます。
腎機能が正常ならば年齢と男女により異なりますがクレアチニンが0.9mg/dl以下です。


4. 多発性嚢胞腎でどんな症状が現れますか?

血尿が最も一般的で、目で見てわかる程度から顕微鏡でわかる程度のものまであります。嚢胞の中に出血すると血尿はひどくなります。
また尿蛋白がでる人もいます。
嚢胞の数や大きさが増えてくると腎臓が大きくなります。
のためお腹がはるようになったり、食事が一度に多く食べられなくなったりすることがあります。
嚢胞内に細菌感染が起きると発熱、腎臓痛(背中から腰の痛み)があります。
高血圧は多発性嚢胞腎の患者さんの60%に見られます。

腎機能が低下すると尿量減少やむくみなどが現れ始めます。


5. 腎不全とは?

腎機能が低下し、色々なそれに伴う症状が出てくることを腎不全といいます。
腎不全になると、尿量が減少するためにむくんだり、心不全になったり、血圧が上昇したりします。その他、尿酸値の上昇、血液中のカルシウム濃度が下がり血液中のリン濃度が上昇、骨折しやすくなり、貧血が進行します。
腎機能が10分の1以下になると、末期腎不全と言い全身のだるさ、食欲低下、貧血、めまい、吐き気、呼吸困難、精神錯乱など尿毒症による症状が起きます。さらに治療せず放置しておくと昏睡状態になり死亡することになります。これらすべては腎臓専門医によって治療が可能です。


6. 多発性嚢胞腎で腎臓の他に悪くなるところはありますか?

腎臓以外にも肝臓や膵臓にも嚢胞が出来ます。中には肝臓の嚢胞が巨大化し黄疸や胃腸への圧迫症状を起こすことがあります。
大腸憩室といって大腸にくぼみができる人も多いようです。

また、重要なのは多発性嚢胞腎の患者さんの30%に脳動脈瘤が見られることです。
これは脳の動脈に瘤のように腫れたところができることです。これが破裂すると、くも膜下出血を起こし、生命の危機が生じます。ただし動脈瘤の全てが破裂するわけではありません。また最近ではMRA(エムアールエー)検査により直径5ミリ以上の動脈瘤は診断することができます。これが10ミリ以上になると破裂する危険が高いと考えられます。また家族にくも膜下出血を起こした人がいると破裂する危険性が高いと考えられます。


7. 多発性嚢胞腎の診断はいつ、どのようにしてすることができますか?

多発性嚢胞腎は遺伝性がはっきりしていますので、まず家系にこの病気にかかっている人が存在するかが大事な決め手となります。
存在した場合は超音波検査により嚢胞の有無を確認します。
これはほとんどの病院で手軽に行えます。検査の結果 、腎臓に多数嚢胞が存在すれば
多発性嚢胞腎を強く疑います。肝臓や膵臓にも嚢胞があればまず診断は間違いないと思われます。
10歳以降に次第に診断がつくようになりますが、20歳以前では嚢胞が見つからないことも多いようです。

もし家系に存在するかどうか不明な場合は高血圧、くも膜下出血を起こした人がいないかということが参考になります。
そのような人がいる場合はやはり超音波検査を行います。


8. 嚢胞が大きくなるのを防ぐことはできますか?

残念ながら防ぐことはできないと思います。
腎機能が正常ならばクエン酸カリウム(野菜、果物に豊富)が有効なことが動物実験で最近言われています。


9. 手術によって治すことはできないにでしょうか?

多発性嚢胞腎を治すための手術方法はありません。
しかし、嚢胞が大きくなるために腎臓や肝臓が腫大し、その結果 腸管を圧迫したり、出血により痛みが強い場合、針を刺して嚢胞を縮小させることもあります。
最近、腎臓に行く血管に詰め物をする塞栓術が腎臓を小さくすることに有効なことが分かりました。
でもその結果腎機能は失われてしまいます。

既に透析療法に入っていれば圧迫症状が強い場合は腎臓そのものを摘出することもあります。


10. 腎不全の進行を止めることはできないのでしょうか?

「腎不全の進行を遅らせる」ことは可能です。最も大切なことは血圧を130/80以下まで下げることです。
第2に、のう胞の感染を極力さけ、起こった場合は抗生物質で適切に治療すべきです。

このため尿検査で白血球が出ていないか毎月検査します。
のう胞が感染するとお腹や背中が痛くなって高熱を出します。
第3はクレアチニン値が2.0をこえたら食事中の塩分とタンパク質を制限すべきでしょう。
またカフェインは嚢胞を大きくすると考えられているので避けるべきです。腎機能が正常な内は(クレアチニン値が1.0以下)柑橘類に多く含まれているクエン酸も有効と考えられています。また2007年1月現在、嚢胞が大きくなるのを防げるかもしれない新薬の臨床治験が始まっています。

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11. くも膜下出血を予防することはできますか?

できます。
クモ膜下出血の原因は脳動脈瘤の破裂です。

脳動脈瘤は多発性嚢胞腎を持っている人の数%〜数10%に合併すると考えられています。
したがって第1に脳動脈瘤の早期発見が重要です。

少し前まではこの診断のためには脳血管撮影が必要でしたが、現在では大変簡単なMRIによる検査で発見できるようになりました。
家族に出血したことのある人がいる場合は自分も出血する確率は高いようです。
ただ手術は危険性もあり、さらに腎機能が悪化するとそれだけ難しくなるので、
なるべくはやい時期にMRI検査を受けるほうがよいと思います。
また血圧を高くしないことも重要です。
そのために日常生活の過ごし方が大事になります。


12.将来血液透析が必要といわれましたが、血液透析とはどういうものでしょうか?

血液透析とは人工腎臓ともいうべきもので、腎臓の働きが失われた人のために行う治療法です。
通常腕の血管を使って血液を取りだし、透析器により血液をきれいにし、余分な水分を取り除きます。
年齢や体重にもよりますが、腎機能が低下し尿素窒素が80mg/dl以上、クレアチニンが8mg/dl以上になると尿毒症となり、血液透析を行う必要があります。


13. 遺伝病といわれましたが結婚はできるのでしょうか?

腎機能が悪くなり腎不全になると女性は妊娠、出産が難しくなります。
しかし既に述べたように多発性嚢胞腎で腎不全になるには通 常40〜50歳以降です。
男性の生殖能力にはあまり問題はありません。


14. 家族検診を勧められましたが受けたほうがよいでしょうか?

早く発見されたからといって治るわけではありませんが、多発性嚢胞腎とうまくつき合って腎機能の低下を少しでも防ぐために検診を受けることをお勧めします。


15. 多発性嚢胞腎の腎動脈塞栓術を受けた場合、血圧はどうなるでしょうか?


以前多発性嚢胞腎(ADPKD)患者に対して両側の腎摘除術を試行した時期がありました。
これらの患者さんの多くが術後低血圧と貧血に悩んだのも事実です。
私達が開発した腎動脈塞栓術(TAE)に関しても、当初は同様なことが起こるのはないかと危惧していました。
しかしいざふたを開けてみると、多くの症例において高血圧がみられました。
その原因としてこの治療により腎臓が小さくなったのにも拘わらずDW(ドライウェイト)を下げなかったからだと分かりました。
従ってTAE後適切にDWを調節すれば血圧上昇はみられなくなりました。
むしろ血圧が高い場合にはDWを下げたりなかったと考えられる患者さんが多く見受けられたのも事実です。
TAE後3-6ヶ月後に腎臓が充分に縮むと今度は栄養状態がよくなるためか、肥りだしてきます。
この時点でDWを同じ
にしておくと今度は血圧が下がり過ぎてきます。
則ち今度はDWを逆に上げなければならなくなります。
ですからTAE後は極めてダイナミックな変化が起こるわけです。
これにうまく対応してゆくことが大切になります。
例えば極端な例(かなり腎臓が大きな症例)ではDWが8kgTAE後に下げ、その後8kg取り戻したということもありました。
またTAE後に高レニン性の高血圧になることもありません。
従ってTAE後には外科的腎摘除術後の変化とは違うと考えた方がよいかもしれません。
この差はどこにあるのかと考えた時、外科的腎摘除術後には腎臓の内分泌機能がゼロになるのに対し、TAEではおそらく10%程度が自然に残りそれが適切な血圧管理によい影響を与えていると考えています。
我々は現時点で147名に対してTAEを施行しましたが、上記の対応で大丈夫です。
あまり心配はいらないと思います。

(虎ノ門病院腎センター内科 乳原義文)



16.嚢胞腎の透析患者ですが、お腹の圧迫で苦しいです。まだ尿量があるので片方の腎臓摘出か、片方の腎動脈塞栓術(TAE)を受けようか迷っています。

片方の腎摘除術を受けられた場合、残った反対側の腎臓が急激に大きくなること多いようです.
一方腎摘された側では多くの患者が腹壁瘢痕ヘルニアで悩みます.
丁度左右不対称なお腹になります.
片側のみの腎摘除術を受けられるのなら,片側のみのTAEの方が後に腹壁瘢痕ヘルニアを作らないだけのみならず,術後の傷口の痛みに悩まずにすむことを考えるとよいと思います.
尿量を維持したい場合には片側のみのTAEも可能です.
ただしこの場合に残した対側の腎より嚢胞出血もみられることがあることも御了解下さい.
これは片側の腎摘除術を行った場合でも同様です.
我々は尿量の維持されている患者さまに対しては,「尿量が減ったころに腎TAEをやりましょう.しかし尿量減少と引き換えてもよい程の腹部膨満が強い場合には患者さんさえ納得してもらえばやりましょう」とお話してきました.
実際尿量が極端に減ったがやってよかったという患者さまもいました.

虎の門病院腎センター内科 乳原善文先生


17.多発性嚢胞腎(ADPKD)が原因で血液透析を受けていますが、腎臓移植は可能でしょうか?

これは全く問題ありません。のう胞腎が大きい場合には摘出したあとに腎移植をすることもできます。

日本医科大学第二内科 飯野靖彦先生


18.慢性腎臓病とはなんですか?

1. 慢性腎臓病は糖尿病や高血圧による腎臓障害、IgA(アイジーエイ)腎症などの慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎など沢山の原因による慢性に経過する腎臓病の総称で、2002年に米国で提唱され現在は世界的な用語になっています。

2. 腎臓の働き(糸球体濾過値)が60%未満に低下すると、心筋梗塞などの心臓病になって死亡する危険性が増します。糖尿病や高血圧、肥満、高脂血症などのメタボリックシンドロームは心臓病を引き起こす重要な原因となりますが、これらにより腎臓が侵され慢性腎臓病になると飛躍的にその危険性が高まります。

3. 慢性腎臓病が進行し腎不全となり透析療法をしなければならなくなる原因の第1位は糖尿病、第2位はIgA(アイジーエイ)腎症などの慢性糸球体腎炎です。年間3万6千人があらたに透析療法を日本では開始しています。

4. 慢性腎臓病は高血圧の原因となります。血圧が130/80以上の方は先の2つの簡単な検査を定期的にうけて、早期発見につとめましょう。

5. 糖尿病が進行すると慢性腎臓病になります。尿中アルブミン濃度が30 mg/gを超えたらその兆候です。腎臓専門医にも受診してください。

( 秀和綜合病院腎臓内科 塚本雄介)

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