●●一般向け特集1●●
「透析療法を受けている皆様へ-リンと便秘対策のお話です」
I. 透析療法を受けている方に大事なリンの話
II. 透析患者に多い便秘対策
I. 透析療法を受けている方に大事なリンの話
監修:東京女子医科大学腎臓病総合医療センター血液浄化部門教授 秋葉 隆
リンはカルシウムと一緒に骨を作り、また筋肉を作るとても大事なミネラルです。しかしながら、慢性腎不全になりますと血液中にリンがたまり、その結果血管に石灰化が起こり、心筋梗塞や脳梗塞の危険性が高まります。このリンについての皆様の疑問に以下のようにQ&A形式でお答えしました。
| Q1. 腎臓が正常な場合のリンとカルシウムの体内調節は? |
| A1. リンはカルシウムとともに骨と筋肉を作る大切なミネラルです。 ですから体の中にその過不足があってはいけないので、腎臓が尿の中にリンをどれだけ排泄するかを調節しています。 その排泄の調節には副甲状腺ホルモンとビタミンDが主にかかわっています。 こうしてカルシウムとともに血液中の濃度(2.5〜3.5 mg/dL)が正しく保たれています。 |
| Q2. 腎臓が悪くなるとリンとカルシウムの調節はどうなるの? |
| A2. ところが腎機能が30%以上低下すると(腎不全)、腎臓からリンは十分排泄されなくなり、血液中のリン濃度が増加します(「高リン血症」と呼びます)。 これは特に透析療法が必要になった患者さん(腎機能が10%以下に低下されています)には顕著に表れます。 これとともに血液中のカルシウム濃度が低くなり、かつ副甲状腺ホルモン(PTHと略して呼ばれます)が高くなります。 こうした状態を指して二次性副甲状腺機能亢進症と呼びます。 この病気が起きると骨からカルシウムとリンが溶け出して骨がかすかすになり骨折しやすくなります。 |
| Q3. それでは血液中にリンが溜まるとどうして悪いのでしょう? |
| A3. それには2つの理由があります。 第一に、副甲状腺ホルモンをさらに増やし骨を溶かして骨折しやすくします。 第二に、骨から出てきたカルシウムとくっついて骨以外の血管や筋肉、肺などにそれを貯めてしまうことになるからです。 中でも動脈にカルシウムがリンと結合して溜まっていくと、動脈硬化をおこして心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくします。 日本透析医学会の統計調査では血清リン濃度が7.0 mg/dL以上になると透析患者さんの寿命が明らかに短くなることがわかっています(図4:日本透析医学会統計調査2002年度)。 |
| Q4. 透析患者にとって血液中のリン濃度はどれくらいに保ったらよいか? |
| A4. 腎臓が正常な人の血液中のリン濃度は2.5〜4.5mg/dLですが、透析患者にとっては3.5〜5.5
mg/dLの範囲が最適と考えられています。 一方、低すぎるのも骨を弱くすると考えられています。 またこの値は血液中のカルシウム濃度とも関連があり、カルシウム濃度は8.5〜9.5 mg/dLに保たれ、カルシウムとリンの濃度をかけ合わせた値(Ca×リン積)は55以下(できれば45以下)が動脈硬化を予防する上で良いと考えられています。 |
| Q5. どうやって血清リン濃度を正しく保ったらよいのでしょう? |
| A5. 食事療法が基本です。 通常では食事中のリンの含有量は1日1000〜2000 mgであり、その60%が腸から体に吸収されます(600〜1200 mg)。 腎臓が正常であればこの吸収された分はすべて尿から排泄されます。ところが、血液透析や腹膜透析では1日300mg程度しか血液から取り除くことができません。 ですから食事中のリンは透析をしている方は1日800 mg以下にする必要があります。 そして、それでも多くなってしまう分は薬で取り除くしかありません。 |
| Q6. 血液中のリンを下げる薬にはどんなものがあるでしょう? |
| A6. リンを下げる薬(国内でリンを下げる医薬品として投与が認められている薬剤)には以下のものがあります。 @ 塩酸セベラマー(処方箋が必要) 国内では2社から同じものが発売されており、商品名はレナジェル(中外製薬)またはフォスブロック(キリンビール医薬カンパニー)と言います。 この薬剤は長く待たれていた薬剤で日本ではこの6月26日(2003年)に発売になったばかりです。 食物中のリンと結合して便とともに排泄してしまうイオン交換樹脂の一種です。 この薬剤の最大の長所は従来のリン吸着薬のようにその成分であるカルシウムやアルミニウムが体に吸収されないという安全性です。 ただ欠点としては10人中2人ぐらいに便秘になる方がいて、便秘のケアーが大事になります。通常、食直前に4錠から8錠服用します。便秘症の方はもっと少ない量から始めてお腹を慣らしたり、緩下剤を併用したりします(便秘特集にリンク)。 悪玉のコレステロール(LDLコレステロール)を下げ、善玉(HDLコレステロール)を増加させる働きがあります。 さらに沈降炭酸カルシウムを1年以上服用すると動脈に溜まった石灰がさらに増加したのに対し、この薬剤を服用した場合動脈に溜まった石灰は増加しなかったことが米国で報告されています。 A 沈降炭酸カルシウム(処方箋が必要) 今まで15年以上にわたって使用されていたリン吸着薬です。粉薬と錠剤があります。通常1回0.5〜2.0gを食直後に服用します。食事と時間を空けると効果が少なくなってしまいます 。一般的に透析患者さんは食事中のカルシウムのとり方が少ないので、これを補う働きもあります。 しかしながら1日3.0g以上服用すると、カルシウム量として1200 mgとなり、食事中のカルシウムとあわせて過剰になる危険性があります。一日にとるべきカルシウムの量は1000から2000 mgが最適です。 B その他: 従来は水酸化アルミニウムゲルが用いられていました。リンを下げる働きは優秀なのですがアルミニウムが腎不全患者では体にたまり、骨や脳を傷害する恐れがあり禁忌(使用を禁じられている)となっています。このアルミニウムはよく制酸薬(胃薬)に含まれているので、知らずに服用していることがあるので注意が必要です。 他には酢酸カルシウムもあります。これは服用すると胃不快を伴う場合がありますが、欧米では沈降炭酸カルシウム同様使用されています。本邦では医薬品としては販売されていません。 その他、高脂血症の治療薬として使われているニセリトロール(商品名ペリシット)やコレスチミド(商品名コレバイン)もリンを下げる働きがありますが、前者は血小板を下げる副作用があり服用には注意が必要です。 |
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便秘の原因
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その理由
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| 大腸の運動が弱い | その理由としては運動不足、糖尿病のための自律神経障害、動脈硬化、ビタミンB(特にパントテン酸など)不足などが考えられます。 |
| きばれない | これも運動不足により腹筋が弱くなっていることが原因として考えられます。 |
| 繊維の不足 | しかしなんと言っても、透析患者さんはカリウムと水分の制限のために食物繊維にとむ野菜類や乳製品、豆類、海藻類を充分に取れないことが大きな原因になっています。一日の必要量は10g以上です。 |
| 飲水制限 | 尿量が減ってしまうと、とる水分量を減らさないとむくみ、心不全になります。このため水分をとる量が厳しく制限されます。 |
| 大腸の病気 | あまりに便秘がひどい(1週間もでない、便が細い、下痢と便秘を繰り返す、便に血が混ざる、便が黒い、など)場合は大腸の病気がないか調べてもらいましょう。腹膜炎や手術による腸の癒着、アミロイドの沈着、大腸癌、などの危険性があります。 |
| 便秘になりやすい 薬の服用 |
リンを下げる薬(レナジェル、フォスブロック)、カリウムを下げる薬(カリメート、アーガメイトゼリー)、コレステロールを下げる薬(コレバイン)など |
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便秘のタイプ
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原因
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対策
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| 便が固い、 ウサギの糞の様な便 |
・腸から水分が沢山吸収されてしまう ・水分を吸収する薬を飲んでいる(レナジェル、フォスブロック、カリメート、コレバイン、など)注1 ・腹筋が弱い、運動不足 |
・ 水分のとり方にメリハリをつける(透析の間の体重増加は5%以内で!)。冷たい100〜150ccの水を一気に朝飲み、あとは制限範囲にする、など。 ・便を柔らかくする薬を処方してもらう。 ・便秘体操をする。 ・出口付近の便が固くなりすぎたときに下剤を使うと腸に穴が開く危険があるので、先に浣腸や摘便で塊を取り除く必要があります。 |
| 便の量が少ない | ・繊維が少ない(1日必要量は10g以上) ・食べる量が少ない |
・繊維の多い食事をとる。 ・サプリメントで食物繊維をとる(後に例示)。 ・栄養士に相談する。 |
| 便意を催さない | ・腸の運動が弱い | ・刺激性下剤を用いる(次項参照) |
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便秘薬の働き別種類
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特徴
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薬の名前
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| 便の出をよくする薬 (刺激性下剤) |
大腸の働きを高めて、排便を促します。通常効き目が出るのが8〜10時間後なので就寝前に服用します。 ただ連用すると次第に効かなくなってしまう(耐性といいます)ことがあります。 |
よく使われるのは漢方薬のセンナやその類(センノシド)などを用いた薬でアローゼン、プルセニド、ヨーデルS,アジャストAなどがあります。 また大黄や甘草を用いた漢方薬も用いられます。 これらの下剤は耐性を生じることがありますが、ラキソベロンには耐性が少ないようです。ラキソベロンは液状の下剤で水に滴下して服用します。これには便をやわらかくする効果もあります。 |
| 便をやわらかくする薬 | 透析患者が飲める薬としては残念ながら余りありません。 | D−ソルビトールは糖類の一種で頻回(2〜4回)に服用すると効果的です。これまで良くカリメートと一緒に服用されていましたが、腹痛や腸に穴が開くなどの重篤な副作用が報告されたことから、最近あまり使われなくなりました。ですから固い便が出口付近にあるときは危険だと思われます。 同様にモニラックやラクツロースといった薬剤も糖の一種でとてもよいのですが、残念ながら便秘には保険の適応がされていません。 いずれも腸から吸収されないので糖尿病の方も服用できます。 |
| 漢方薬 | その人の体質により、効果的な薬、逆効果な薬があるのであった薬を処方してもらってください。 | 潤腸湯、麻子仁丸、大黄甘草湯、桂枝加芍薬湯、大建中湯、小建中湯、大柴胡湯、加味逍遙散などがあります。 いずれも医師の処方が必要です。 医療従事者専用サイトには漢方薬に関する情報が載っています。 主治医に見てもらってください。 |
| 透析患者が 服用しないほうが 良い薬 |
体にたまる成分を含んでいたり、大量の水分と一緒に服用する必要のある薬剤。 | ・カマなどマグネシウムを含んだ便秘薬:これはマグネシウムが血液中にたまってしまうので長期に服用してはいけません。 ・バルコーゼ:これは大量の水と服用しなければならないので、飲水量の制限のある患者さんは飲めません。 |
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質問
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答え
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摂りすぎるとどうなるの?
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| 繊維はどれだけ 摂ったらいいの? |
1日に摂るべき繊維量は最低10gで目標は20gです。 | おなかが逆にはったりします。 |
| カリウム(K)は どれだけ摂れるの? |
ご自分の定期血液検査で血清カリウム濃度が5.5 mEq/L以下であれば、現在摂っている量でかまいません。逆に3.5
mEq/L未満では少なすぎるのでもっと摂らなければなりません。 1日の目安は1500 mg以下です。 |
致死的な心室細動という不整脈が起こり、突然死の原因となります。 |
| リン(P)は どれだけ摂れるの? |
定期血液検査で3.5〜5.5 mg/dLの間にあればOKです。 高い人は、1日800mg以下に抑えるようにしましょう。 |
血管が固くなり、心臓に負担がかかって心筋梗塞や心不全、脳卒中がおこりやすくなります。 |
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食材
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繊維量
(1人前) |
KとP
(1人前) |
調理の工夫など
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| 第1位 | スパゲティ240g フェットチーネ160g ペンネ100g うどん240g |
ス(3.6g) フェ(2.4g) ぺ(1.5g) う(1.9g) |
ス(K29mg, P110mg) フェ(K19mg, P74mg) ぺ(K12mg, P46mg) う(K22mg, P43mg) |
日本そばはリン、Kがさらに多い。中華麺は繊維多いがKが多い。 |
| 第2位 | ライ麦食パン65g (6枚切り) |
ラ(3.6g) | ラ(K124mg, P85mg) | 塩分が多いのもあるので注意。 白い食パンは1切れ1.4g。 |
| 第3位 | 干ししいたけ15g なめこ100g えりんぎ70g |
し(4.9g)、 な(3.3g)、 え(2.8g) |
し*(K150mg,P 37mg) な*(K 230mg,P66mg) え*(K294mg, P77mg) |
茹でたり、ソテーで。Kも少なくないので注意。 |
| 第4位 | ゆで小豆缶詰30g 煮おたふく豆30g こしあん30g さらしあん30g |
ゆ(1.0g) お(1.8g) こ(2.0g) さ(8.3g) |
ゆ(K48mg, P24mg) お(K33mg, P42mg) こ(K48mg, P22mg) さ(K17mg, P23mg) |
缶詰ならばKやリンが低くなっている。和菓子でさらした小豆あんは特によい。 |
| 第5位 | なす80g ごぼう50g キャベツ50g |
な(1.6g) ご(2.9g) きゃ(0.9g) |
な*(K130mg, P22mg) ご*(K96mg, P31mg) きゃ*(K41mg, P14mg) |
生ではKが高いのですが、おなべのように煮てしまうとKが少なくなります。 |
| 第6位 | 赤飯150g(1杯) | 赤(2.6g) | 赤(K119mg, K81mg) | 白米では0.4gしか入っていない。小豆は先ゆでして加えればKを抑えられます。 玄米は繊維2.0gと多いのですがK138mg,P189mgとKとPが多くなります。 白米は繊維0.4g, K42mg,P49mgです。 |
| 第7位 | 板こんにゃく50g(なま芋) しらたき50g |
こ(1.5g) し(1.5g) |
こ(K22mg, P4mg) し(K6mg, P5mg) |
しらたきは安心して使えます |
| 第8位 | もずく30g(塩抜き) ワカメ30g(湯通し) |
も(0.6g) わ(0.9g) |
も(K2mg, P1mg) わ (K4mg,P9mg) |
昆布はKが多くだめ。もずくは特に良い。 |
| 第9位 | ブルーベリージャム (おおさじ一杯) |
ブ(0.9g) | ブ(K16mg, P3mg) | イチゴや桃はKが多いのでだめ。ピーナッツバターはリンが多い。 他のジャムもK,Pは低いのですが繊維がイチゴジャムで0.3g程度とあまり多くはありません。 |
| 第10位 | 桃の缶詰60g | も(0.8g) | も(K48mg, P5mg) | 果物は繊維が多いがKも多い。 缶詰のシロップにはKが溶けているので飲んではだめです。 |
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サプリメントの種類
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選ぶ上での原則、注意点
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市販されているもの
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| ファイバー (食物繊維) |
繊維を多く含む食物の多くにはKやリンも含まれています。これを除いたものを選ぶ必要があります。 一日の食事での必要量は10gです。 |
とおりあめ(キッセイ薬品)、セルリーハイ(扶桑薬品)、ネイチャーメイドファイバー(大塚製薬)、イージーファイバー(小林製薬)、ファイブミニ(大塚製薬)他。カリウム、リン、塩分のないものを選びます。 |
| 乳酸菌、 ビフィズス菌 |
乳製品にはKが多く含まれています。また一部の医薬品にはリン酸Naが含まれているので注意が必要です。 | ビフィズス菌HD(森下仁丹)、ビオフェルミン(ビオフェルミン)他 |
| ビタミンB類 | 必要なのはB1,B2,B6,パントテン酸、葉酸、B12です。 一般の必要量と同じだけ摂ってください。とりすぎは危険です。 |
ネイチャーメイドBコンプレックス(大塚製薬)他 |
注意してください!
市販されているサプリメント(健康補助食品)は価格がさまざまです。高額なものには注意が必要です。成分がはっきりしており製造販売元の信頼できるものを選んでください。なお、ここに掲載した製品は公示された成分を添付された文献により検討しておりますが、当ネットで臨床試験はしていませんのでその効用や副作用には一切の責任をもちません。
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