8.CAPDとは

CAPDというのは、比較的良く知られている血液透析療法とは別 のもう一つの透析法です。
CAPDというのは英語でcontinuous ambulatory peritoneal dialysisという長い名前の頭文字をとった略号です。日本語では持続的携行式腹膜還流という訳になります。これは御自分のお腹を使って、人工的に尿を作り出して体にたまった老廃物を体外に捨てる方法です。また、同時に体に溜まった塩分と水分も除去し体の環境を整えるます。しかも御自分のお腹を使うので機械は不要のため、病院に定期的(週3回など)に頻繁に通 う必要はありません。また、どこでもできるので多くの方は御自宅で・時には職場で行われています。このため、時間的制約という面 では血液透析療法より制約が少ないことが多いのです。もう少し詳しく説明しましょう。

 

    図4 CAPD
 

 もともと腹膜透析(peritoneal dialysis:PDと略されています)は1960年前後の朝鮮戦争のときに開発された最も古い透析方法です。おなかの中には小腸や大腸が曲がりくねって収まっていますが、これらの腸管をくるんで束ねている透明の薄い膜を腸管膜といいます。この腸管膜の中には毛細血管が網の目のように張り巡らされています。腹腔にホースのような管を入れて透析液を入れるとこの腹膜がちょうど血液透析の透析膜の役をして、毛細血管を通 る血液との間に物質や水の交換が起こります。したがって血液中の毒素や過剰なイオンは腹腔に入れた透析液中に流れ出すわけです。

だいたい6時間ぐらい透析液を腹腔内に貯留しておけば十分に毒素が出ていくので、汚れた透析液を体の外に入れたのと同じ管からぶどう糖の濃さを利用したサイホンの原理でくみ出します。そして再び新鮮な透析液を入れて再び6時間程度置くのです(図4)。この操作を通 常4〜5回行います。この時に出てきた液は、元々は無菌の混じり気のない透析液ですが、見かけは尿そっくりの薄黄色で尿の匂いもします。

この方法の利点は病院に一日おきに通う必要がないことで、液の交換に要する30分ほどをのぞけば好きなことをしていられることです。また食事療法でも血液透析のような厳しいカリウム制限は必要なく、果 物や生野菜が自由に食べられるという大きな利点があります。しかも血液透析療法を始めるとすぐに尿量 が減少することが多いのですが、一方、このシ−エ−ピ−ディ−は始めてからも長く尿量 が保たれることが多いです。5年経っても尿量が保たれることも稀ではありません。これはくだらないことのようですがとっても大事なことです。尿が出るという心理的な安心な効果 のほか、膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症も予防するだけでなく、塩分や水分・老廃物を尿の中に捨ててもくれるため食事療法や血圧のコントロ−ルなどがとっても楽となるのです。
このため、かつてはともかく20世紀の最後の時点ではシ−エ−ピ−ディ−療法は、血液透析療法のように御自分の腎臓の機能を置き換えてしまうようなものではなく、御自分の最後まで残った腎臓の機能(残腎機能と呼んでいます)を手助けする治療法と考えられています。ですから少しでも御自分の腎臓の働きが残っている間に始められることをお薦めしています。血液透析療法を何年か行われた方は全く尿が出なくなっていることが普通 ですので、シ−エ−ピ−ディ−療法は原則として施行することはお薦めしていません。

しかし良いことばかりではありません。すべて自分で行う必要があるため、あまりにもいい加減な人にはお薦めできません。あまりにいい加減な人は腹膜炎というお腹に細菌が感染してしまうことすらあります。しかし、意外にいい加減そうな方がちゃんとやられたりしていることもままあります。このため意外に多くの患者さんがシ−エ−ピ−ディ−療法をやっても良い方と思われます。

しかしながら、日本では約5%の患者さんがシ−エ−ピ−ディ−療法をしているに過ぎず95%の患者さんは血液透析療法を選択されています。これはシ−エ−ピ−ディ−療法を行なえる病院の数が少なく、シ−エ−ピ−ディ−療法を良く知っていて管理できるお医者さんが少ないためです。そして何より腎不全で診療を受けている患者さんの中に、シ−エ−ピ−ディ−療法という治療法のことを全く聞いたことなくて血液透析療法を選択されている方がおられることは大きな問題だと言えます。シ−エ−ピ−ディ−療法は血液透析療法に先んじて行なうことが原則であり、シ−エ−ピ−ディ−療法から血液透析療法へ移ることは容易ですが、血液透析療法を一定期間行われてからシ−エ−ピ−ディ−療法に移ることはお薦めできないからです。

さてシ−エ−ピ−ディ−療法が腎臓の働きを助ける治療法であることから、手助けする腎臓の機能が全く無くなった時、言い換えれば尿が全く出なくなった時にはシ−エ−ピ−ディ−の良さが減ってしまうため、血液透析に移ることを考える時期となります。また自分のお腹を透析膜として使うため、お腹がバテテきて機能が低下して透析療法としての効果 が薄れてくることがあります。この時期は多くは尿も出なくなってくる時期と一致していることが多いので、やはりこの時期にはシ−エ−ピ−ディ−療法を諦めて血液透析療法へ変わられることをお薦めしています。個人差があるので一概には言えませんが、多くはシ−エ−ピ−ディ−療法から血液透析療法へ変わられることをお薦めしている時期の目安は、5年経過した時点で患者さんと相談して10年以内には血液透析療法へ変わられることが必要と考えられます。ところが食事の豊かさ・時間的制約の少なさ・医者という他人に管理されるのではなく自分で自分を管理できるという誇りなどから、そろそろシ−エ−ピ−ディ−療法から血液透析療法へ変わられる時期であっても、シ−エ−ピ−ディ−療法を止めたくないという患者さんも多くおられます。しかし、一定の年数のシ−エ−ピ−ディ−療法をおやりになったなら、潔く血液透析療法への移行をお薦めしています。さもないと、むくんだり血圧が上がったり、ヒドイ時には腸閉塞のような症状すら出てくることがあります。やはりシ−エ−ピ−ディ−療法に固執されるのは良いことではないでしょう。

いずれにしても腎不全になって透析療法が必要となっても、多くの方は透析を始める前より元気になるのが普通 です。そして1〜2年で止めるわけでなく10年・20年・30年と続けられている方も多くおられます。しかし、シ−エ−ピ−ディ−療法や血液透析療法どちらか単独では30年以上続けるのは大変です。このため腎移植も含めた幾つかの複数の治療法で長期の治療を行なうことになるでしょう。その選択肢の一つにシ−エ−ピ−ディ−療法はあると思われます。こうした、シ−エ−ピ−ディ−療法を含めた各治療法の意味付けを図5に示しておきます。

 
図5 末期腎不全の各病期
原則としてCAPDを始めに考えます。

 


menu1.腎臓の構造と体の中での場所2. 腎臓病の種類3. 尿に蛋白が出たら
4.尿に血液が出たら5. むくんだら6. 腎不全とは7. 血液透析とは8. CAPDとは
9. 腎移植について10. 腎臓病の食事療法11. 腎臓病で使用する代表的な薬


copyright
本サイトが提供する、文書、映像、音声、プログラムなどを含む 全ての情報を、著作権者の許可なく複製、転用することを固くお断りいたします。