Last Updated 2007/03/12

慢性腎炎について
透析や移植につての基本][検査・診断について][透析患者さんのために
治療法・薬について][多発性嚢胞腎について][腎臓移植について][その他

●1.

慢性腎炎は必ず透析が必要になるのですか。

●2.

ネフローゼといわれましたが、どんな病気ですか。

●3.

IgA(アイジーエー)腎症ってどんな病気ですか。

●4.

慢性腎不全の食事療法はなにに気をつければよいのですか。

●5.

慢性腎不全になるとなぜ食事中のタンパク質を減らさなければいけないのですか。

●6.

lgA腎症だと診断されましたが運動制限は必要なのでしょうか?

●7.

グッドパスチャー症候群と診断されましたがどのようなものですか?

●8.

腎生検でメザンギウム増殖性糸球体腎炎と診断されました 軽度なので治療の必要はないといわれたのですが、これからどんな経過をたどる のでしょうか?またどんな注意をすれば進行を遅らせることができるのでしょう か? 潜血+4 蛋白+1です。

●9.

尿蛋白が陰性になったのですが、それでもIgA腎症は一生治らない病気なのでしょうか?

●10.

慢性糸球体腎炎と診断されて10年が経ちましたが、特に悪くも良くもなりません。もう受診しなくてもよいのではないでしょうか?

●12.

膜性腎症にはステロイド療法は効果があるのでしょうか?

●13.

膜性増殖性腎炎とはどういう病気ですか?

●14.

多発性嚢胞腎でクレアチニン2.3mg/dlの36歳の女性です。妊娠9週です。出産は可能でしょうか?

●15.

7才時から10回再発を繰り返しているネフローゼ症候群の21才です。一生直らないのでしょうか。

●16.

IgA腎症は必ず腎不全になってしまう病気なのでしょうか?

●17.

IgA腎症が進行性かどうか(透析に進むかどうか)はどうやって分かるのでしょうか。

●18.

IgA腎症は妊娠出産により悪化するのでしょうか?

●19.

IgA腎症の進行を抑えるのに扁桃腺摘出やステロイド療法が効果的、というのは本当でしょうか?

●20.

.慢性腎炎の女性は妊娠中毒症になりやすいのでしょうか?

●21.

巣状糸球体硬化症(FGS)で血尿が出るのは良いことなのですか?

●22.

紫斑病性腎炎とはどのような病気ですか?

●23.

学童の紫斑病性腎症は治らない病気でしょうか?安静はどの程度必要ですか?

●24.

微小変化型(リポイド)ネフローゼ症候群の治療法を教えて下さい。

●25.

ネフローゼと言われましたが、運動はしても良いのでしょうか?

●26.

ネフローゼ症候群はなぜ再発するのでしょうか?

●27.

IgA腎症のためステロイド療法を行うと言われました。腎機能は80%以上はあるそうです。どのくらいの効果が期待できるのでしょうか?

●28.

腎生検によって推定された腎機能はどのくらい正確なのでしょうか?

●29.

膜性腎症と膜性増殖性糸球体腎炎III型はどのように違うのでしょうか?

●30.

膜性腎症の予後を教えてください。

●31.

膜性増殖性糸球体腎炎のIII型の長期予後を教えてください。

●32.

腎臓病患者に対するインフルエンザワクチンの安全性および効果につき教えてください。

●33.

ANCA関連腎炎について教えてください。

●34.

慢性糸球体腎炎と診断されました。肉体労働をしていますが大丈夫でしょうか?

●35.

微小変化型ネフローゼ症候群の再発はどれくらい、どういう時に起こるのですか?

●36.

微小変化型ネフローゼ症候群の再発を防ぐにはどうすればよいですか?

●37.

微小変化型ネフローゼ症候群と言われました。再発しやすいと言いますが、どのくらいの頻度で再発するのでしょうか?また再発を予防することはできるのでしょうか?

●38.

非IgA腎症と診断されました。腎不全になってしまうのでしょうか?

●39.

慢性腎臓病とはなんですか?

●40.

ネフローゼ症候群(微小変化型)で再発を繰り返し、ステロイドを服用しています。
再発しないようにこの先なるのでしょうか?他に治療法はないのでしょうか?

●41.

膜性腎症に対するステロイド療法と免疫抑制薬の効果について教えてください
(2007/2/7)


1.慢性腎炎は必ず透析が必要になるのですか。

慢性腎炎でも腎機能が低下しないものはいくらでもあります。
でも悪くなる可能性を考えて定期的に診察を受けるのが大事です。




2.ネフローゼといわれましたが、どんな病気ですか

尿に蛋白が一日3g以上漏れてしまい、そのためむくむ病気です。
原因別に3つの病気に分かれます。
最も多いのがリポイドネフローシス(または微小変化群)で比較的若い人に多く急に激しくむくむのが特徴です。ステロイドがとてもよく効きますが何回か再発しやすい病気です。腎不全にはなりません。
つぎが膜性腎症といってそれほどむくみはひどくないのですがステロイドはあまり効かず慢性化します。次第に腎機能が低下する場合があります。また癌が隠れていることがあり、注意が必要です。




3.IgA(アイジーエー)腎症ってどんな病気ですか。

日本人に一番多い慢性糸球体腎炎の一種で腎生検をしないと診断がつきません。血尿が特徴的で風邪を引いたりすると血尿がひどくなります。半数は慢性腎不全で透析が必要になると言われます。




4.慢性腎不全の食事療法はなにに気をつければよいのですか。

基本は蛋白質の制限です.詳しくは「腎臓病のABC」で




5.慢性腎不全になるとなぜ食事中のタンパク質を減らさなければいけないのですか。

蛋白質を全体のカロリーを保ちつつ0.5g/Kg体重(50Kgの人は25g)以下に抑えると腎不全の進行が遅くなることが実証されているからです。




6.lgA腎症だと診断されましたが運動制限は必要なのでしょうか?

IgA腎症も含めて、慢性腎炎全体に云えることですが、生活、仕事は普通にして、過激な運動を避けるようにします。
これまで、慢性腎炎になると、運動を禁止したり、 仕事をセーブしたりすることが多かったのですが、最近では、あまり制限をしないようにしています。
それは、普通の運動が腎臓の病気を悪化させるという証拠がないのと、慢性腎炎の治療を30年以上行ってきて、実際に、過激な運動以外、普通 の生活や仕事が腎臓の働きを悪くすることがないからです。



7.グッドバスチャー症候群と診断されましたがどのようなものですか?

グッドパスチャー症候群とは肺と腎臓に同時に病気が発生し、肺出血と急速進行性糸球体腎炎を起こす急性の疾患です。
原因は免疫反応です。
病理検査で抗基底膜抗体を腎臓糸球体と肺胞基底膜に検出されることで診断が決定します。
治療法としてはステロイド薬、免疫抑制薬、血漿交換療法が行われます。



8.腎生検でメザンギウム増殖性糸球体腎炎と診断されました。 軽度なので治療の必要はないといわれたのですが、これからどんな経過をたどるのでしょうか?またどんな注意をすれば進行を遅らせることができるのでしょうか? 潜血+4 蛋白+1です。

現在の尿所見であれば薬物による治療は必要ないと考えます。
また、特別に日頃注意することはありません。
あえて云えば、風邪をこじらせないようにすること、また、過労をためないことです。
日常生活は普通にして軽い運動も行って、定期的に(2、3ケ月に1回)通院し、尿蛋白の程度を確認してもらって下さい。
今後、もっとも大切なことは経過観察を定期的に受けることです。
メサンギウム増殖性糸球体腎炎は大きく分けて、二つあります。
一つはIgA腎症です。この病気は慢性に経過する糸球体腎炎の約半数を占めている病気で、日本ではもっとも多い病気です。IgA腎症は基本的には二通りの経過があります。
約半数の患者さんが安定した経過をとり、透析医療を必要になることはありません。
残りの半数の患者さんが徐々に進行し、10-30年の経過で透析を必要とすることになります。
そこで、貴方の今後を考えた場合、腎生検で組織所見が軽度であって、蛋白尿が1+程度であれは進行する可能性は少ないと考えます。
もし、進行性の経過をとるとしたら、必ず、蛋白尿が増えて2+〜3+になってゆきます。
したがって、今後の定期的な通院が非常に大切になってきます。
今後、進行性の経過をとったとしても、現在では、早い時期であれば進行を抑える治療法もあります。
もう一つのメサンギウム増殖性糸球体腎炎は頻度はIgA腎症より少ないのですが、病気の経過はIgA腎症に似ていて、安定して経過する場合と蛋白尿が徐々に増えて腎機能が徐々に低下して行く場合があります。
この二つの経過の頻度はIgA腎症より安定して経過するほうが多い病気です。
これらの糸球体腎炎を含めて全ての腎炎において、病気の進行を抑える予防策はまだ見つかっていません。
しかし、さきほどもお話し申し上げましたように、進行し始めた早期に治療を開始すれば進行を抑えることがかなり可能になってきました。
したがって、病気が進行することを、あまり心配しないで、軽症のうちはなるべく普通 の生活をしていただいた方がよいと思います。 繰り返すようですが、進行期を見逃さないために、経過観察を続けていって下さい。




9.尿蛋白が陰性になったのですが、それでもIgA腎症は一生治らない病気なのでしょうか?

結論からお話しします。IgA腎症は治る(医学的には治癒と云います)病気ではないと考えています。
IgA腎症が初めて報告されて、まだ33年しか経っていないため、長期間の経過はまだ十分には分かっていません。
しかし、長期間病状がきわめて安定している患者さんも稀ではありません。
医学的には、このような状態を寛解と呼んでいますが、これは、今後、いつか再発がある可能性があるという意味を含めた考えです。
IgA腎症の再発は急に悪化しません。
現在、蛋白尿がほぼ陰性として、もし、いつか、再発があるとした場合、少しづつ蛋白尿が増えてゆくことになります。
したがって、2、3ケ月に1回程度尿検査を受けていれば、再発してきたかどうか、すぐ分かります。
そして、再発してきたら、適切な治療をまた受けて対応してゆけばよいと考えます。
IgA腎症の治療も最近ではだいぶ進歩してきました。
IgA腎症の長期的な経過について現状をお話ししましょう。
私どもの施設ではIgA腎症と診断が確定してから、10年間治療をしながら継続して経過観察をした患者さんが多くいます。
その患者さんたちの10年間の状態(医学的には転帰と呼んでいます)は約50%の患者さんが貴方と同じように、蛋白尿や血尿が少なく、腎機能も保持されています。
残りの25%の患者さんが徐々に進行して少しづつ腎機能が低下しています。
最後の25%の患者さんが残念ながら10年間のあいだに慢性腎不全になり透析療法を受けています。
このように、IgA腎症でも治療のいかんにかかわらず、病状が安定し、中には、全く蛋白尿や血尿が消失して経過している方も少なくありません。
問題はこれらの安定した経過をとっている患者さんが、今後も続けて安定した経過をとるかどうか、まだはっきりしていません。
したがって、今後も、主治医の先生のアドバイスを常に受けて、病状がいつも安定しているかどうかを、確かめながら生活をしていって下さい。
一般に、病状が安定している時は、生活や仕事は全く普通にしても支障はありません。
また、今後、妊娠、出産についても何ら支障がありません。
自分の病気をたえず見つめながら、病状に応じた充実した一生を送られることを期待しています。




10. 慢性糸球体腎炎と診断されて10年が経ちましたが、特に悪くも良くもなりません。もう受診しなくてもよいのではないでしょうか?


腎臓の病気は何であっても、一部の病気を除き、一生続く病気です。
しかも、多くの病気がある頻度で進行し、最終的には末期腎不全(透析療法を受ける必要な状態)になることがあります。
それぞれの病気はある時期は安定し、ある時期は進行します。
もし、2ー3年自分の病気がどのように経過しているのか、正確な情報を知らないまま過ごし、その時期が進行期にあたっていますと、取りかえしのつかないことになってしまします。
したがって、一番大切なことは、安定している時期にこそ、定期的な通院診療を根気よく受けることです。
安定している時期は2、3ケ月に1回で十分です。
患者さんにとって、大切なことは、以上のように、ご自分の病気が、いま、どのように経過しているか、ということを知って、日々充実した生活を送ることだと思います。



12.膜性腎症にはステロイド療法は効果があるのでしょうか?

ステロイド療法を開始して最初の3ケ月で蛋白尿が減少しはじめれば、今後の6ケ月目、1年目の蛋白尿がさらに減少する可能性を示唆ます。
膜性腎症に対するステロイド療法の効果はわが国では一般に認められている事実です。
北里大学病院ではネフローゼ症候群を呈する膜性腎症の80%が2年間のステロイド療法で蛋白尿が1g以下に減少し腎機能の保持がみられています。



13.膜性増殖性腎炎とはどういう病気ですか?

膜性増殖性糸球体腎炎は一般に二つに分けて考えられています。
一つは腎臓の糸球体だけに病気がある場合です。
これを原発性膜性増殖性糸球体腎炎と呼んでいます。
二つ目は他の臓器にも病気があり、同時に腎臓の糸球体に病気が生じる場合です。
これを続発性膜性増殖性糸球体腎炎と呼んでいます。
原発性の膜性増殖性糸球体腎炎は頻度は少ないほうで、多くの場合は小児期に発病します。
しかし、20-30代でも、また、年輩の方でも珍しくはありません。
この病気の始まりは二通りの発病の仕方があります。
一つは急激に発病する場合です。
二つ目は健康診断などの偶然の機会に蛋白尿や血尿で見つかる場合です。
急に発病する場合は、しばしば、むくみや血尿が急に出て気が付くことが一般的です。
この場合は、ただちに入院をして検査をし、膜性増殖性糸球体腎炎と診断が付い たらステロイド薬などの薬物療法が必要になります。
急に発病した膜性増殖性糸球体腎炎 は多くの場合、治療に良く反応して蛋白尿や血尿が減り、腎臓の機能も改善することが多い病気です。これに対して、蛋白尿や血尿で見つかり、年の単位で病気が徐々に進んでくる場合はむくんだり、腎臓の機能が低下し、治療をしても必ずしも改善しないことがあります。
いずれの病気の場合も、早期に治療を開始することが大切になります。



14.
多発性嚢胞腎でクレアチニン2.3mg/dlの36歳の女性です。妊娠9週です。出産は可能でしょうか?

出産は7ヶ月後で、そのころのクレアチニンは3.0前後だと思います。
今回の妊娠・出産は貴重なチャンスだと思います。
出産によって肝嚢胞は悪化しますが、多発性嚢胞腎の腎機能が出産で悪化するという報告はありません。
本人の意志があれば、妊娠・出産は続けるべきだと思います。



15.
7才時から10回再発を繰り返しているネフローゼ症候群の21才です。一生直らないのでしょうか。

ネフローゼ(微小変化ネフローゼ症候群)は8〜9才がもっとも発症し易い年令と考えられています。
そして、およそ半数の方が再発をし、3分の1の方が頻回に再発をするといわれています。
時間が経つにつれて、再発の時の症状が軽くなるのが一般的です。
また、再発と再発の間隔が徐々に長くなっていくと考えられています。
この病気のもっとも特徴的なことは再発を何度繰り変えしても腎臓の働きが低下しないことです。
いずれ再発をしなくなる時がきます。
これからは蛋白尿がない時は普通の生活をしていって下さい。また、将来、妊娠・出産も普通に出来ます。



16.
IgA腎症は必ず腎不全になってしまう病気なのでしょうか?


IgA腎症の長期経過がすこしずつ分かってきておりますが、現在までのわが国の成績では発病してから、30年後に約半数の患者さんが透析を必要とするようになる可能性があるとされています。
しかし、このことは、半数の患者さんは一生病状が安定して行く可能性があるということを示しています。
また、妊娠、出産はIgA腎症の経過にほとんど影響を与えないということも分かってきました。
さらに、最近ではIgA腎症が進行性に経過するようになった時点で積極的な治療を行うことにより、その進行をかなり抑えることが出来ることも分かってきました。



17.
IgA腎症が進行性かどうか(透析に進むかどうか)はどうやって分かるのでしょうか。


1日の蛋白尿が1gを超えているかどうかである程度判断可能です。
したがって、現在、外来で蛋白尿が1+程度なら心配ありませんが、2+ないし3+が続いているようでしたら、1日の尿を全部ビンにためて1日の尿蛋白の定量を行ってもらって下さい。
IgA腎症のおいては、1日1g以上の蛋白尿が持続すると徐々に腎機能が低下して進行してゆきます。
しがたがって、その時点で扁桃線を摘出し、ステロイド療法を開始します。
この治療の評価は今後時間をかけて判断されると思いますが、おそらく進行を抑える可能性が大きいと考えています。




18.
IgA腎症は妊娠出産により悪化するのでしょうか?


IgA腎症にかぎらず、慢性腎炎一般に言えることですが、最近では、妊娠は病気の経過に悪影響を与えることはほとんどないと考えられるようになってきました。
北里大学病院でもIgA腎症患者31名、47回の妊娠、出産がありますが、一人も妊娠、出産後に経過が悪化した方はおりません。
安心して、妊娠、出産をするようにして下さい。
最終的に進行した方もおりますが、その方々は病気自体が進行性の経過をとったことによると考えております。そして、妊娠、出産をしなかった患者と長期経過を比較しても妊娠した患者としなかった患者で差異はありません。



19.IgA腎症の進行を抑えるのに扁桃腺摘出やステロイド療法が効果的、というのは本当でしょうか?

IgA腎症とした場合、扁桃腺摘出が50%の確率で蛋白尿の減少につながると云われており、効果があったと考えられます。
現在、蛋白尿が1+程度だとし、正常の腎機能と考え合わせると、今後の経過は5ー10年は病状が安定してゆく可能性が十分考えられます。
また逆に1日1g以上の蛋白尿が持続すると徐々に腎機能が低下して進行してゆきます。
しがたがって、その時点で扁桃線を摘出し、ステロイド療法を開始します。
この治療の評価は今後時間をかけて判断されると思いますが、おそらく進行を抑える可能性が大きいと考えています。



20
.慢性腎炎の女性は妊娠中毒症になりやすいのでしょうか?

IgA腎症を含む慢性腎炎の患者が妊娠中毒症の頻度が高い事実はありません。
北里大学病院の妊娠した31名中4名が妊娠中毒症になりましたが、この頻度は健康妊婦と差異がありません。また、全員出産後はもとのIgA腎症の病状にもどっており、進行した方はおりません。
仕事も十分注意して対応すれば、継続可能です。




21.
巣状糸球体硬化症(FGS)で血尿が出るのは良いことなのですか?

1。巣状糸球体硬化症という病気は一般には蛋白尿が主体で、 血尿は少ないのが特徴です。 しかし、血尿が蛋白尿と同時にみられることも決して稀では ありません。
2。巣状糸球体硬化症の診断は腎臓の組織検査で決まります。 その際、腎生検で採取した腎組織を光学顕微鏡、電子顕微鏡、 蛍光抗体法の三つの検査で検討します。この三つの検査は 大きな医療施設であれば、必ず行っていると思います。 巣状糸球体硬化症はこの三つの検査所見を総合して行います。




22.紫斑病性腎炎とはどのような病気ですか?


紫斑病性腎炎は小児に多い病気ですが、20-30才代でも、けして稀れではありません。
紫斑病性腎炎は皮膚に紫斑が生じるため、このような病名がついています。
その他、腎臓や消化管、関節などに異常が生じることがあります。
腎臓の病気、すなわち、紫斑病性腎炎は皮膚の紫斑と同時に始まる場合もありますが、おくれて始まってくる場合も少なくありません
。皮膚の紫斑は、しばしば繰り返すこと(再発)がありますが、紫斑病性腎炎は多くの場合1年前後で蛋白尿や血尿が消失し、再発はほとんどありません。
そして腎臓の病気の程度は蛋白尿の程度とほぼ比例します。




23.
学童の紫斑病性腎症は治らない病気でしょうか?安静はどの程度必要ですか?

紫斑病性腎炎であれば蛋白尿や血尿は徐々に少なくなりま す。
9割以上は1年以内に蛋白尿や血尿は消失し、完全寛解の状態になります。
再発は多くの慢性腎炎と異なり、ほとんどありません。
もし、良くなったあとに 蛋白尿や血尿が3+-2+と再び出現してきたら、他の腎炎との鑑別のために腎生検 が 必要になってきます。
とくに、IgA腎症との鑑別が大切になってきます。
それは、IgA腎症が一生続く病気だからです。
一般に腎臓の病気はその急性期は安静が必要ですが、1ケ月程度過ぎたあとはなるべ普通の生活をしながら長期にわたる腎臓の病気を治療してゆくことが大切です。
とくに、慢性腎炎の場合はそうです。 お子様の紫斑病性腎炎の場合は確かに腎臓の病気が始まってから1ケ月前後は入院なり、自宅安静が必要ですが、その後は自然の経過で軽快してゆくことが 大部分ですから、なるべく、学校生活は普通にした方がよいと考えます。
ただし、以上の療養に関する事柄はお子様を実際に診ていただいている主治医の 先生のご意見を伺った際の参考にしていただければ幸いです。




24. 微小変化型(リポイド)ネフローゼ症候群の治療法を教えて下さい。

成人発症の微小変化ネフローゼ症候群という腎臓の病気に対するステロイド療法は標準的には以下のように考えられています。
初期量はプレドニゾロンで40mg/日から開始し、1ケ月用います。
その後、月5mgづつ減量し、15ないし10mgになったら、その後は2、3ケ月毎に5mgづつ減量し、全治療期間1年間でステロイドを中止します。
この治療法での再発率は約50%です。
また、頻回再発も30%みられます。
ただし、再発を繰り返しても90%以上の患者さんで、3〜5年間でステロイドを完全に中止することが可能です。
腎臓の病気はどれ一つとっても、まだ、基準となる治療方法が定まっていません。医療機関や医師によりそれぞれ異なっているのが現状です。



25.ネフローゼと言われましたが、運動はしても良いのでしょうか?

寛解時の運動と食事は原則として規制はありません。
ただし、ステロイドを服用している間は、股関節や膝関節の骨壊死を予防する目的でそれぞれの関節への荷重をかけないようにすることが必要です。
したかって、長時間歩いたり、重いものと持ったり、激しい運動は避けるべきです。散歩程度の運動が適切です。



26.
ネフローゼ症候群はなぜ再発するのでしょうか?

病気の原因が不明ですので、再発の原因も不明です。
日常生活と再発の関係は明らかではありません。
再発がもっとも多いのはステロイドを減量する時期です。
したがって、減量に際しては少量づつ行っています。



27
.IgA腎症のためステロイド療法を行うと言われました。腎機能は80%以上はあるそうです。どのくらいの効果が期待できるのでしょうか?

1)現在の腎機能が正常の80%以上あると仮定した場合、プレドニゾロン40mgから開始し2年間ステロイド療法を行うとすると、60ー70%の確率で蛋白尿が1g以下に減少し、その後腎機能が保持される可能性があります。残りは蛋白尿が減少せず、徐々に腎機能が低下する可能性です。
2)蛋白尿が減少した場合、2年間のステロイド療法を終了したあと、約30%の確率で、再び蛋白尿が増加します。そのまま経過をみてゆくと、このような場合は腎機能が徐々に低下します。したがって、腎機能が低下しないうちにステロイド療法の再開が必要になります。
3)もし、ステロイド療法の効果が余りみられない場合は扁桃腺摘出を行うこともIgA腎症の進行を抑制するのに有効な対応と考えています。




28.
腎生検によって推定された腎機能はどのくらい正確なのでしょうか?


IgA腎症においても、その他の腎炎においても、腎臓の組織病変の程度で腎機能を判断するのは困難です。腎機能は血清のクレアチニン値かクレアチニン・クリアランスという腎機能検査をして判断します。



29.膜性腎症と膜性増殖性糸球体腎炎III型はどのように違うのでしょうか?

膜性増殖性糸球体腎炎III型と膜性腎症はしばしば鑑別が困難なことがあります。
腎生検の組織を電子顕微鏡で観察をして初めて区別している疾患です。
前者は膜性腎症と組織所見も臨床経過も類似しています。



30.膜性腎症の予後を教えてください。


膜性腎症の長期予後が徐々に分かってきていますが、蛋白尿が1.0g/日前後と少なくなってくると予後良好です。多くの場合末期腎不全には進行しません。




31.膜性増殖性糸球体腎炎のIII型の長期予後を教えてください。

膜性増殖性糸球体腎炎のIII型の長期予後はまだ不明ですが、恐らく、膜性腎症と同様の経過をとり、蛋白尿が1.0g/日前後と少なくなってくると予後良好です。
多くの場合末期腎不全には進行しません。



32..腎臓病患者に対するインフルエンザワクチンの安全性および効果につき教えてください。

移植患者へのインフルエンザワクチンの安全性は確立されていますが、効果については多少議論があるようです。UpToDateではこれを推奨しています(Clin Transplant 1996 Dec;10(6 Pt 1):556-60)。一方塩酸アマンタジンは腎障害患者には十分注意して投与すべきとされています。
また透析患者での抗体産生は低下していることが考えられますが、実際の効果は一般とあまり変わりないということで投与が推奨されます(Semin Dial 2000 Mar-Apr;13(2):101-7)
ネフローゼ症候群、IgA腎症、SLEなど対しステロイドなど免疫抑制療法を施行中の患者様にも推奨されています。
なおタマゴや他の薬剤にアレルギーの経験がある方は避けたほうが良いです(花粉症は関係ありません)





33.
ANCA関連腎炎について教えてください。

ANCA関連腎炎はこの病気が報告されて10年前後とまだ経過が短く長期的な見通しを申し上げるのは難しいところがあります。分かっている範囲で申し上げます。
ANCA(anti-neutrophil cytoplasmic antibodyの略です)(日本語では抗好中球細胞質抗体といいます)は自己抗体(自分の一成分に対して出来る抗体のことです。この場合は自分の好中球の細胞質に対して作られた抗体です)の一つで、この抗体が体で作られるといろいろな血管に対して障害を及ぼすことになります。なかでも、腎臓
に障害が生じ易いのが一般的です。この抗体によって起こる腎臓の病気をANCA関連腎炎と呼んでいます。
  ANCA関連腎炎は発病の仕方により二つに分けることが出来ます。一つは急に発病する場合です。この場合は発病したあと腎機能が急速に低下し、治療が行われない場合は2ー3ケ月で腎機能を失い透析治療が必要になります。いまでは、この病気の診断が容易に出来るようになったため早期に治療を開始することにより腎不全を防止することが可能になってきました。
  二つ目は蛋白尿や血尿がしばらく続き、数ケ月から数年かけて徐々に腎機能が低下していく場合です。この場合もある時期から急に病気が進行し腎機能が急速に低下することもありますので注意が必要です。
  治療の基本はステロイドの大量療法から開始し、経口的にステロイドの一定量を服用することです。ステロイド療法が効果がない場合はエンドキサンという免疫抑制薬を併用することになります。これは急激に進行する場合も徐々に進行する場合も同じです。
後者の徐々に進行する病型の場合、ステロイド療法に2ー3ケ月間で反応し蛋白尿が減少したり、クレアチニン値が改善したりすることは多くはありません。一般の慢性腎炎の場合と同様に進行を抑えるのに1ー2年のステロイド療法が必要なことが少なくありません。ステロイド療法の効果が少ないと判断されたら、おそらく、エンドキサンの併用を始めます。ステロイド薬とこの免疫抑制薬の併用療法は進行を抑え、蛋白尿や腎機能の改善がかなり期待出来ます。




34. 慢性糸球体腎炎と診断されました。肉体労働をしていますが大丈夫でしょうか?

重労働を続けることは腎臓の病気の種類いかんに拘わらず病気の進行を速めると昔から考えられています。私もそう考えます。これまで30年以上腎臓内科医として診療にあたり、そのように対応してきました。
なぜ、重労働や過激な運動が腎臓に悪い影響を与えるかということに関して、医学的に明確な説明がなされていません。今後もそのような重労働や過激な運動をしながら長期間経過をみるという危険な検討はすることは不可能と思います。
私自身が重労働や過激な運動は腎臓の病気によくないと考えている理由をお話しします。重労働や過激な運動をすると、血液が内臓に流れる量が明らかに減少します。腎臓を流れる血液も当然減少します。とくに沢山の汗をかくような場合は腎臓の血液の流れはさらに減少します。この腎血流の減少は腎臓の機能を低下させたり、高血圧を惹き起こします。そのほかにも病気の腎臓の修復過程を抑えてしまうことがあるようです。
健康な腎臓であれば、休養をとりさえすれば、またもとの状態に回復することは分かっていますが、障害を持った腎臓の場合は回復は困難と考えられています。




35.微小変化型ネフローゼ症候群の再発はどれくらい、どういう時に起こるのですか?

微小変化ネフローゼ症候群は小児に多い病気ですが、成人でも珍しくありません。
ステロイド療法に著効を示し、全例が一旦蛋白尿が陰性となり寛解に入ります。
成人の場合50ー60%の方が再発します。再発した方の約半数が年に2、3回以上再発する頻回再発型となります。しかし、殆どの方が再発を繰り返しても発症から3ー4年の間にステロイド薬を必要としない状態になり、一生再発をしなくなります。
まれに、10年以上経って再発する場合もありますが。そして、この病気の最も特徴とするのは頻回再発の方でも腎機能は低下しません。透析医療を必要とすることはありません。
再発が何故起こるのかということは現在のところ分かっていません。それは、この病気が何故起こるのかという病気の原因が分かってないからです。しかし、再発がどういう状況で起こり易いかということは経験から少し分かっています。
1)最も再発が起こる時期はステロイド薬の減量の時です。ステロイド薬の量がまだ多い30mg/日のとき、10mg/日と少なくなってきたとき、完全に中止したあと、など、人によりまちまちです。また、同じ人でも、再発の時により、服用しているステロイドの量が異なることがあります。しかし、一般的には、再発するたびに、再発する際のステロイド薬の量が少なくなります。一例をあげますと、最初の再発が30mg/日で起こっても、その次の再発は15mg/日となり、そのあとは5mg/日と減っていきます。
2)この病気はアレルギーを持った方がほとんどですが、アレルギーが起こる時期ないし、アレルギーが起こった場合に再発することも少なくありません。
3)風邪をひいた際にも、再発が起こることがあります。
4)再発の誘因が分からないことも少なくありません。




36.微小変化型ネフローゼ症候群の再発を防ぐにはどうすればよいですか?

1)再発が起こる状況ないし時期を注意深く乗り切ることを考える必要があります。とくに、ステロイド薬の減量の時期が重要です。ステロイドの副作用を恐れるあまり、減量を早くしないことです。ステロイド療法を開始して2ー4週間で蛋白尿が陰性化しますが、それでも、早くても、5mgを1ケ月かけて少しずつ減量します。
もっと慎重にする場合は2ケ月をかけて5mg減量します。そして、減量の途中再発がない場合は発症して1年後にステロイドを中止することになります。

2)アレルギーの時期と減量の時期が重なるような場合は、アレルギーの時期を乗り越えてから減量に入った方が良いと思います。風邪の場合も同様で、風邪がよくなってから減量をすることが大切です。

3)その他、食事や嗜好品では特に再発を惹き起こすものはないと考えています。もちろん、食物アレルギーがある場合は別です。

4)運動や仕事と再発の関係はないと思います。

5)たばこ は再発とは関係がないと思いますが、たばこ による腎臓の血液の流れが悪くなることを考えると、たばこ を吸っている方は禁煙の努力をされた方がよいと思います。アルコールは問題ないと思います。

再発を防ぐことと同時に再発を起こした時の対応が、その後の経過を軽くするためには非常に大切になります。

1)まず、再発をなるべく早く発見することです。それには、蛋白尿が陰性になっている時期に1週間に1回は自分で試験紙(市販されています)で蛋白尿を調べることです。そして、蛋白尿が陽性になったらなるべく早く主治医を受診することです。再発の発見が早ければ早いほど、再発の時に用いるステロイド薬の量も少なくて済
みます。また、減量も時間をかけずに済みます。

2)ステロイド薬を服用している時の再発の場合は、発見が早ければ早いほどステロイド薬の増量も少なくて済みます。ステロイド薬を服用している際の再発で大切なことは、再発した時のステロイド薬の量より10mg程度上乗せして再発を抑えることが一般的です。蛋白尿が陰性化してから減量に入りますが、今度は再発した量より5mg程度多い量をすこし長めに服用することが、そのあとの再発を防ぐことにつながっていきます。
なお、治療薬として漢方薬が用いられることがあります。西洋医学で一般に用いている漢方薬は”紫玲湯”です。保険も通っています。ただ、発病の最初から使うことはなく、再発した場合ステロイド薬と併用すると、ステロイドの減量を速めたり、再発の回数を減らしたりする効果が期待されています。





37.微小変化型ネフローゼ症候群と言われました。再発しやすいと言いますが、どのくらいの頻度で再発するのでしょうか?また再発を予防することはできるのでしょうか?

1)再発の頻度について
この微小変化ネフローゼ症候群という病気は小児でも成人でも、50〜60%の 患者さんが再発します。そして、頻回再発も30〜40%にあり、再発の多い病気の一つです。この病気の原因が不明のため、再発の原因も分かっていません。
しかし、再発をしやすい状況は分かっています。

2)再発の防止について
再発を完全に防ぐことは困難ですが、再発を起こし易い状況を注意して乗り越え ることが大切です。
(1)一番再発が多い状況はステロイドの減量の時期です。ステロイドの一定量で尿 蛋白が陰性の場合ステロイドの量を減量していきますが、減量の量が多すぎたり、減 量の時期が早かったりすると、しばしば、再発します。この減量と再発は個人差がありますので、慎重な対応が求められます。したがって、実際に病気を診ていただいている主治医とよく相談して下さい。
(2)病気の経過中に風邪やその他の感染症を併発すると、しばしば、再発します。
風邪を引いたらなるべく早く診ていただき早く治すようにすることが大切です。
(3)この微小変化ネフローゼ症候群という病気はアレルギー体質の方に発生することが多い病気です。したかって、アレルギーの時期になると再発する可能性が高くなります。その場合、アレルギーの時期になったらステロイドの減量を慎重にすることも必要になってきます。




38.
非IgA腎症と診断されました。腎不全になってしまうのでしょうか?


非IgA腎症という病気は、たとえば、IgA腎症という病気のように病気の疾患概念(病気がどのような原因で発病し、どのように経過し、どのような治療で進行が抑えられるのか、といった病気の姿、形のことを云います)が、まだ、十分に理解されていない糸球体腎炎の一つです。
この病気の診断は現在のところ、腎生検による組織所見から判断されています。
光学顕微鏡による検査では、糸球体のメサンギウムという場所で細胞が増加し、基質(線維のことです)が増加する(このことを”硬化”と称しています)という変化がみられます。
また、蛍光抗体法による検査では免疫グロブリンや補体成分が糸球体に認められません(”特異的な所見がない”ということと同じです)。
ただし、このような組織所見は、実は、高血圧症による腎硬化症という病気でもみらる変化でもあり、この組織所見からだけでは非IgA腎症という病気の確定診断をするのは難しい場合があります。
つぎに、非IgA腎症と診断した場合の臨床的な特徴は大きく分けて二つあります。
一つは長期間蛋白尿が少なく、腎機能も低下せず、安定して経過する場合です。
非IgA腎症はこの経過をとる場合が大部分です。
二つ目は経過中蛋白尿が徐々に増加してきて、腎機能が低下する場合です。
後者の経過はしばしば進行して最終的には腎機能を失い、透析療法が必要になります。
腎臓の病気はその大部分が一旦発症すると、一生つづくことになります。
しかし、蛋白尿が少ないまま経過する前者の場合は腎機能が保たれ、一生安定した経過をとる可能性が高いのも事実です。





39.
慢性腎臓病とはなんですか?


1. 慢性腎臓病は糖尿病や高血圧による腎臓障害、IgA(アイジーエイ)腎症などの慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎など沢山の原因による慢性に経過する腎臓病の総称で、2002年に米国で提唱され現在は世界的な用語になっています。

2. 腎臓の働き(糸球体濾過値)が60%未満に低下すると、心筋梗塞などの心臓病になって死亡する危険性が増します。糖尿病や高血圧、肥満、高脂血症などのメタボリックシンドロームは心臓病を引き起こす重要な原因となりますが、これらにより腎臓が侵され慢性腎臓病になると飛躍的にその危険性が高まります。

3. 慢性腎臓病が進行し腎不全となり透析療法をしなければならなくなる原因の第1位は糖尿病、第2位はIgA(アイジーエイ)腎症などの慢性糸球体腎炎です。年間3万6千人があらたに透析療法を日本では開始しています。

4. 慢性腎臓病は高血圧の原因となります。血圧が130/80以上の方は先の2つの簡単な検査を定期的にうけて、早期発見につとめましょう。

5. 糖尿病が進行すると慢性腎臓病になります。尿中アルブミン濃度が30 mg/gを超えたらその兆候です。腎臓専門医にも受診してください。





40.
ネフローゼ症候群(微小変化型)で再発を繰り返し、ステロイドを服用しています。再発しないようにこの先なるのでしょうか?他に治療法はないのでしょうか?


この微小変化型ネフローゼ症候群という腎臓の病気に対する治療は基本的にはステロイド療法です。ネオーラルという免疫抑制薬も再発の際に併用される薬ですが、あくまでステロイド薬で治療してゆきます。他の薬剤に替えて治療することは現在の医療では行われておりません。その最大の理由はステロイド薬ほど効果のある薬剤がないからです。
さて、微小変化型ネフローゼ症候群という病気についてお話ししましょう。この病気は一般に小児期に多発しますが、成人でも珍しくありません。成人発症の場合も、ステロイド療法を行いますが約50%の方が再発します。再発したうちの約50%の方(全体の約20-30%になります)が再発を繰り返すいわゆる頻回再発性の状態になります。ただ、再発を繰り返しても発病から3年から5年経つと再発をしなくなるのがほとんどです。再発を繰り替えす方の約10%の方が残念ながら10年から20年間再発が起こることがあります。このように再発を長い間繰り替えしても、幸いなことに腎機能が低下して透析医療を必要になることは全くありません。なぜ再発をするのか、なぜ再発を繰り替えすのかはまだ分っておりません。それは微小変化型ネフローゼ症候群という病気そのものの発病原因が残念ながら分っていないからです。
再発を繰り返してきた場合、どうしたら再発が起こるのを少しでも先に引き延ばせるのか、最終的には再発を終わらせることが出来るのか、ということに対していろいろな治療上の工夫がされています。一つはネオーラルのような免疫抑制薬の併用です。
そして、最も重要なことは蛋白尿が消失したあとのステロイド薬の減量の仕方です。
例えば、プレドニン15mgで再発をするとすると、一旦増量したステロイド薬の量を減量してきて、再発をした15mgの前の20mgの量の時点で、再発をしたときの服用期間より長く服用して、それから15mgに減量するのです。前の再発の際に20mgをもし1ヶ月間服用して15mgに減量したとすると、今度は20mgを2ヶ月から4ヶ月間服用してから15mgに減量します。そうすると今度は15mgに減量しても再発をしなくなるのが一般的です。このように、減量の時間をゆっくりと行うことにより、15mgで再発していたものが、つぎの再発は10mgかもっと少ないステロイド薬の量になってゆきます。再発を起こすステロイド薬の量を段々と少ない方向にもってゆくことにより、最終的にはステロイド薬から離脱することが出来るようになります。この減量の速度は人により異なりますので主治医とよく相談をしながら対応していただきたいと思います。
私自身30年余の腎臓医療の経験から再発の対応をこのようにして参りましたが、多くの患者様が最終的に再発をしなくなってきています。ステロイド薬の副作用も心配ですが、心配のあまり早く減量してしまいますとなかなか再発から抜け出すことが難しくなってしまいます。





41.
膜性腎症に対するステロイド療法と免疫抑制薬の効果について教えてください
(2007/2/7)

1.ステロイド療法について。
5年ほど前に当時の厚生省の『進行性腎障害調査研究班』で全国調査をした結果、膜性腎症によるネフローゼ症候群の治療としてステロイド療法は明らかに有効であるとの報告が出されました。ステロイド薬単独でも多くの方が不完全寛解I型(尿蛋白の1日の量が1.0g以下になる状態のことです。このレベルまで蛋白尿が改善した場合は将来腎機能が低下して末期腎不全にならないという状態です)に改善することが分ってきております。私どもの施設(30年間北里大学病院に在籍しておりました)でもステロイド薬単独で約80%の方が2年間の治療により不完全寛解I型に達しました。したがって、ステロイド療法を行って蛋白尿が減少傾向になり、明らかに効果があると考えられた場合は、そのままステロイド薬の単独療法で2年間治療をしております。私どもの2年間のステロイド療法はプレドニン40mg/日から開始して7ヶ月で15mgまで漸減し、その後の1年半を15~10mgで維持しております。このような治療に反応しない場合、免疫抑制薬を併用するようにしております。最初から免疫抑制薬を併用していない理由は、ご存じのように免疫抑制薬にもいろいろな副作用があるからです。ステロイド薬も副作用がある薬ですから、いくつもの副作用がある薬を同時に用いることを避けております。問題はステロイド薬単独で効果が現れない場合です。

2.ステロイド薬と免疫抑制薬の併用について。
この場合、多くの施設でステロイド薬に加えて免疫抑制薬を併用しております。ご存じのように免疫抑制薬にもいくつか種類があります。それぞれの免疫抑制薬が実際に膜性腎症に有効であるかどうかは全国調査の段階では明らかにされておりません。多くの施設で現在検討が行われているところで、5〜10年先きにはこの効果の有無があきらかになると期待されています。お話しのブレデニンという免疫抑制薬はわが国で開発された薬で副作用が少ない薬です。その効果に関しては、まだ、十分に明らかにされておりませんが、厚生省の薬事審議会で成人のネフローゼ症候群に対して保健の適応が承認された薬剤で一定の評価はされております。




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