第1章:chapter 1

マドリードカンファレンスで何が討議されたか?

監修:深川雅史(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科教授)

マドリードカンファレンスで何が討議されたか?

CKD-MBDという新しい概念と用語が提唱された 2005年のマドリッド会議以降、この病態が,骨や副甲状腺だけでなく、血管石灰化を含む心血管系、全身の病気であることが広く認識されるようになった。さらに、それを元に生命予後を指標にしたKDIGO ガイドラインも2007年に発表されている。さて、今回開かれたマドリード会議は第2回となるが、どのような目的で開かれたのだろうか?

ガイドライン作成はKDIGOの主要な活動のひとつであり、これは事前のControversies Conferenceから始まる、ガイドラインが出来ると、それをimplementし、数々のresearchが行われ、Clinical Practice Conferenceなどを経て、改訂するか手直しするかを決めるというサイクルを経て、次の Controversies Conferenceにつながっていく。

実際この間の進歩は著しい。たとえば、現在その価値が非常に高く評価されているFGF23も、初回のときには測定されるようになったばかりで、その意義の 重要性は十分には認識されていなかった。また当時欧米で使われ始めていた薬剤も、一部は我が国でも使えるようになるとともに、経験が蓄積し、生命予後 も含めた臨床研究の結果が得られるようになった。そこで、まず1日目は、この間の進歩を、領域別にまとめ、それを検証するという作業が行われた。参加 者はその中で、ガイドラインを変えうる、これまでとは違う知見が出てきているのか、さらにこれから検証すべき問題点は何かがそれぞれ認識出来たものと 思われる。

その後は、次項で内容が詳しく述べられているように、サブグループに分かれたディスカッションが行われた。今回はガイドラインの改訂を目的としたわけ ではないが、実際は条文ごとに、変える必要がありそうかの検討がなされ、その結果は、最後の2日にわたって全体会で報告された。以上を踏まえて、今後 正式にガイドラインの改訂が決定されると予想される。ディスカッションを期待していた、「腎機能」をもっとはっきり予後として入れることは、残念なが ら取り上げられなかった。

カンファレンスの副題にあるBack to the Futureとは、実は、未来のために過去を振り返るということも含むのかもしれない、夕食時の限りないディスカッションも楽しく、進歩を感じ、何をやるべきかを考えた暑い秋の3日間であった。

さて、教科書的に網羅するレベルから始まったガイドラインであるが、統計学、疫学の手法が新しくなるにつれて、エビデンスレベルの検証やガイドラインの作成法が学問的に進歩、専門化し、そのような方法を経たもののみをガイドラインと呼ぶべきであるといわれるようになった。(実際、EDTAは Guidelineをやめ、European Best Practice と名称を変えている.) これらの進歩は、方法が科学的,客観的に厳密になったという点ですばらしいことであり、確実にこの方向に進んで行くであろう。しかしながら、こうして出来たガイドラインが実際に使いやすいかは、不完全ながらそうやって作成されたはずのKDIGOのガイドラインを例に挙げるまでもなく、議論のあるところである。それでは、われわれは、正式なガイドラインとは別に、ガイド、ないし解説書の作成を必要とするのだろうか?。メタアナリシスが自分で出来ない者は、医学の進歩やガイドラインに貢献出来ないのだろうか?。

今回の会議で感じたが、貢献出来るひとつの方法は、これまでの定説を変えうる研究を行い、メタアナリシスに採り上げられるレベルのきちんとした論文を 出すことである。骨密度と骨折のリスクは、これまでCKD患者では関係がうすいと考えられてきたが、日本からの報告(Imori et al, NDT, 2012)をはじめとして、解析結果をかえうるような論文が複数出ており、ガイドライン改訂にも影響を与えそうである。もちろん、きちんとした症例検討や小規模研究も、そのシーズとなりうるわけで、役にたたないから不要と考えるべきではない。

ガイドラインは、学者のものではなく、ユーザー、そして最終的には患者の利益のためにある。そのことを忘れないようにしたい。

contents

第1章:chapter 1
マドリードカンファレンスで何が討議されたか?
深川雅史(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科教授)
第2章:chapter 2
KDIGO CKD-MBDガイドライン改訂の方向性は?
風間順一郎(新潟大学医歯学総合病院血液浄化療法部准教授)
第3章:chapter 3
EVOLVE研究に見られる統計手法の問題と課題
濱野高行(大阪大学大学院医学系研究科腎疾患統合医療学寄付講座助教)
第4章:chapter 4
KDIGO活動の現状ーガイドライン作成・改訂、コントロバーシーカンファレンスと インプリメンテーション活動ー日本の貢献は?
塚本雄介(IMSグループ板橋中央総合病院副院長)