第2章:chapter 2

KDIGO CKD-MBD ガイドライン改訂の方向性は?

監修:風間順一郎(新潟大学 医歯学総合病院 血液浄化療法部准教授)

KDIGO CKD-MBD ガイドライン改訂の方向性は?

KDIGO CKD-MBD Consensus Conference 会議は4つのサブグループに分かれて進められた。

1.血管石灰化グループ

CKD 診療における血管石灰化の重要性や診療パターンの違いによる発症進展リスクの違いなどが再確認されたものの、診療パターンの画期的な変化に繋がる 提案は特に示されなかった。スクリーニングのタイミングという基本的な方針についてすらもコンセンサスが得られなかったのが現状である。

2.Ca/P グループ

高 P 血症に加えて高 Ca 血症の危険が再確認された。血管石灰化への結果ともあわせ、P 吸着薬における Ca 非含有系薬剤の優位性が今まで以上に強調された。 ただし、この方針を構築するために引用された研究における Ca 含有 P 吸着薬の対照群は塩酸セベラマー単独のものと塩酸セベラマー+炭酸ランタンの混在しているものの両方があり、厳密には焦点が絞り切れていない。P を制限する食事療法として食品添加物に対する注意が喚起された。ただし、実際的な対策の確立にはまだ越えなければならない壁があるだろう。

3.PTH/ビタミンD グループ

従来は保存期の副甲状腺機能亢進症に対して積極的な Ca 摂取も奨励されていたが、上記 2 グループの勧告にもあったように今後は見直されることになるだろう。適切な副甲状腺レベルの設定についても、特に保存期においては、必ずしもはっきりとしたコンセンサスを得るに至らなかった。活性型ビタミンD治療の功罪についてもなお検討の余地がある。特に高 Ca 血症/Ca 蓄積の危険を重視する傾向が強かったこの会議においては、活性型ビタミンDによる血清 Ca 上昇作用について問題視する声が多かった。

4.骨質グループ

従来のKDIGOガイドラインではDXAによる定期的な骨量測定は必ずしも推奨されていなかったが、本会議では骨量スクリーニングの意義を積極的に認め、その結果によってはdenosumabやteriparatideによる治療を推奨する方向でコンセンサスが得られた。その他、DXA の解析法や CKD に特化した FRAX の加点について検討すべきという声も上がるなど、CKD 患者にも今日の原発性骨粗鬆症診療の枠組みを導入しようするはっきりとした動きが見られた。

解説

会議は主に 2009 年の KDIGO CKD-MBD ガイドラインが発表された後に報告された データを叩き台として進行されたが、その中でも「それが診療上どのような有益性をもたらすか?」という視点が大きなウエイトを占めた。 この点で特に明暗を分けたのが血管石灰化と骨質である。今日、できあがった血管石灰化に対しては有効な治療法がない。極論すれば画像でスクリーニングする意義すらも乏しいわけで、そうなると現状でできることは Ca/P 代謝を厳密 に管理して発症予防に努めることくらいしかない。新提案が乏しかったのも宣なるかなである。

一方、近年の新規骨粗鬆症治療薬の進歩から、従来はハードルが高いとされてきたCKD患者の骨量を増やす治療が現実的な視野に入ってきた。そうなると骨 量測定で骨折のリスクを予知しうるというデータにも俄然意義が見出せる。CKD患者に骨折が頻発することは周知の事実であったが、今までは骨折予防という 視点ではほとんど無策といわれても仕方がなかった。それがこのたび原発性骨粗鬆症診療のスキームを大胆に取り入れる方向に踏み出したことは画期的な方針転換であるといえるだろう。

ただ、この方針変換は「低骨量に対して骨量を増やす治療を行う」というものであって、厳密にいえば骨質へのアプローチではない。CKDに特異的な骨質の異常とは何か?それに対するアプローチは?という問題は棚上げにされたままであり、したがってこれがCKD患者に対する脆弱性骨折予防策の最終形態でない こともまた確かであろう。道はなお半ばである。

contents

第1章:chapter 1
マドリードカンファレンスで何が討議されたか?
深川雅史(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科教授)
第2章:chapter 2
KDIGO CKD-MBDガイドライン改訂の方向性は?
風間順一郎(新潟大学医歯学総合病院血液浄化療法部准教授)
第3章:chapter 3
EVOLVE研究に見られる統計手法の問題と課題
濱野高行(大阪大学大学院医学系研究科腎疾患統合医療学寄付講座助教)
第4章:chapter 4
KDIGO活動の現状ーガイドライン作成・改訂、コントロバーシーカンファレンスと インプリメンテーション活動ー日本の貢献は?
塚本雄介(IMSグループ板橋中央総合病院副院長)