第4章:chapter 4

KDIGO活動の現状ーガイドライン作成・改訂、コントロバーシーカンファレンスと インプリメンテーション活動、日本の貢献は?

監修:塚本雄介(MSグループ板橋中央総合病院副院長)

KDIGO ホームページ

http://www.kdigo.org/

ガイドライン全文や推奨サマリー(日本語版あり)の無料ダウンロードをはじめとして KDIGO 活動についての全てを知る事ができる。

KDIGO iPad アプリ

https://itunes.apple.com/us/app/kdigo-mobile/id732080057?mt=8

ベッドサイドで使用するのに最適。以下からダウンロードできる。

1.KDIGO の NKF からの運営の独立

KDIGO (Kidney Disease: Improving Global Outcome)はベルギーに本拠地をおく国際 NPO 団体で 2004 年に発足し 10 周年にあたる。この KDIGO はそれまで活動してきた各国や欧州などの地域毎のガイドラインの指導者たちが集まって、国際的に統一した腎臓病ガイドラインを作ろうという合意により発足した。その発足の根拠は、エビデンスは世界共通であり、これを各国がばらばらに行う事はリソースの浪費でしかない、という共通認識である。この運営はNKF(米国 腎臓財団)が引き続き行ってきたが、2012年10月にその運営を離れ完全に独立した。この運営費はしたがって完全にKDIGOによる自助活動に基づいており、主に企業からの寄付で成り立っている。昨年独立をした際には日本企業からの寄付も大きな原動力となった。

2.KDIGOの基本活動

  1. コントロバーシー・カンファレンス(CC)の招集によるガイドラインが必要と考えられる分野の決定と課題整理。
    KDIGO ホームページ・http://www.kdigo.org/:ガイドライン全文や推奨サマリー(日本語版あり)の無料ダウンロードをはじめとしてKDIGO活動についての全てを知る事ができる。
    KDIGO iPad アプリ:ベッドサイドで使用するのに最適。以下からダウンロードできる。https://itunes.apple.com/us/app/kdigo-mobile/id732080057?mt=8
  2. エビデンスレビューチーム(ERT)による決定された課題に関する推奨を作成するためのエビデンス収集と分析に基づくエビデンステーブルの作成:PICO(Population/Patients; Intervention; Comparator/control; Outcome)に基づくエビデンスレビュー
  3. 作成が決定されたガイドラインの作業部会(WG)の組織と草案の作成
  4. ガイドラインの発表
  5. ガイドラインの各国へのインプリメンテーション活動
  6. アウトカムの研究
  7. ガイドラインの改訂

3.KDIGO の組織

決定機関は Executive Committee(理事会)で10名以下の委員からなる。その選任はNominating Committee が行う。代表は2名のCochairで Executive Committee が決定する。それぞれ任期は3年間。当初からあった50名からなるBoard of Directors(執行委員会)は2012年10月より廃止されている。 ガイドライン作成はガイドライン毎のWorking Groupが行い、エビデンスの解析と等級付けは独立したエビデンスレビューチームが行う。ガイドラインの普及と適応の促進はImplementation Task Force委員会の責任である。同委員会は世界を6つの領域(アジア太平洋、北米、中南米、東欧州、西欧州、中近東 アフリカ)にわけ、各国にその代表者を選任している。日本では今井圓裕氏に現在お願いしている。

4.2012−2013年の活動

コントロバーシーカンファレンス(開催地) CPC 開催地
2012 2   上海
  3 糖尿病性腎症(ニューデリー) ニューデリー
  10 NKF から運営を独立  
2013 10   グアダラハラ
  10   東京
  11 CKD-MBD(マドリード)  
  11   カンクーン
  11   モスコー
  12 緩和ケアー(メキシコシティー)  
2014 1 PKD(エディンバラ)  
  3 鉄補充療法(サンフランシスコ)  
  4   マニラ

これまでのコントロバーシーカンファレンスの報告論文は KDIGO iPad アプリの resource から pdf でダウンロードできる。

1.コントロバーシーカンファレンス

通常コンセンサスカンファレンスと呼ばれる会議と基本は同じだが、よりアグレッシブに課題を追求するという意味合いでKDIGOでは当初からこの呼び名が使用されている。診療ガイドラインが必要と考えられるテーマについて2004年から行われている。形式は通常50名程度のそのテーマのエキスパートを招待する形で行われる。自由参加は認めていない。その費用は基本的には企業のコンソーシアムによって支払われる。これまで開催されたテーマにはCKDの診断・ 治療・合併症・予後の判定(アムステルダム、ロンドン計3回)、腎移植レシピエントのケアー(リスボン)、CKD-MBD(マドリード計 2 回)、貧血(ニューヨーク)、ガイドラインの透明性(ニューヨーク)、血圧管理(ニューヨーク)、心血 管病(ロンドン)、血液浄化法(パリ)、糖尿病腎症(ニューデリー)、薬用量(ボルチモア)。それぞれの報告が Kidney Int から発表されている。エビデンスが十分存在しないとなれば必ずしもガイドラインにはならない。

2.CPC:クリニカルプラクティスカンファレンス

2012 年上海を皮切りに各国で行われ、KDIGO ガイドラインの各国における普及適応(Implementation)を目的として開催されている。通常、KDIGOから国際的なエキスパートと現地のエキスパートがそれぞれの立場から講演を行ったり、症例検討を行い議論を深める。日本でも2013年10月に開催され、血圧管理とネフローゼ症候群に関してKDIGOおよび腎臓学会ガイドラインとの整合性が議論された。

5.KDIGO 診療ガイドライン

これらガイドラインは全てKDIGOホームページまたはKDIGO iPadアプリで見る事ができる。日本腎臓学会が監修訳を行った公式全訳版は東京医学社から発売されている。*腎移植レシピエントのケアーに関しては全訳版が中外製薬より配布されているが日本腎臓学会の監修ではない。

発表年 診療ガイドライン 公式全訳版
2008 4 CKD における C 型肝炎 なし
2009 7 CKD-MBD なし
  12 腎移植レシピエントのケアー なし*
2012 3 急性腎障害 2013/12 予定
  6 糸球体腎炎 2013/10 発表
  8 CKD における貧血 2013/12 発表
  12 CKD における血圧管理 2013/10 発表
  12 CKD の診断と治療 2014/1 予定
2013 11 CKD における脂質管理 2014 予定
2014   CKD-MBD の改訂(予定) 未定
    腎移植ドナー(予定) 未定

6.ガイドライン・インプリメンテーションと日本の貢献

2009年に KDIGO はガイドラインの各国における適応の推進を図る目的でImplementation Task Force (ITF)委員会を立ち上げた。その委員長に筆者が就任し、世界を6つの領域(アジア太平洋、北米、中南米、東欧州、西欧州、中近東アフリカ)にわけ、各国にその代表者を選任した。したがって各国の代表 representative がその地域におけるガイドライン普及活動ならびにガイドラインへのフィードバックの仲介役を勤めることから、KDIGO 活動の核をなしていると行って良い。ITF 活動は各国における腎臓関連団体と密接な協力関係を築いてきたが、2012年の KDIGO の運営独立を契機としてとくに国際腎臓学会との公式に連携関係を構築した。このためISNのGlobal Outreach (GO)活動と地域での連携を築いている。

日本のKDIGOへの積極的な参加は発足当時に遡る。その初代の発足メンバーに黒川清 (以後、敬称略)が名前を連ねており、日本腎臓学会は発足時から関与している。最初に開かれた2004年アムステルダムでのCKDに関するコントロバーシーカンファレンスには筆者と腎臓学会理事長になった菱田明が招聘されており、その後のコントロバーシーカンファレンスの全てに日本から必ず招聘されている。

Board of Directorsには2006年より筆者が2009年からは今井圓裕と私の2名が選任され、理事には2009年からアジアの代表として選任された。ガイドライン作業部会にはこれまでCKD-MBDに深川雅史、AKIに内野滋、CKDに井関邦敏、脂質異常に庄司哲雄が参加している。また、CKD Prognosis Consortiumとして発表したLancetの最初の論文の筆頭著者は名古屋大学からJohn's Hopkinsに留学している松下邦洋である(Lancet. 2010 12;375(9731):2073)。 そして、日本腎臓学会としてKDIGOガイドラインの全訳に全面的に協力し、2013年10 月には東京でKDIGO Clinical Practice Conferenceを招聘した。

こうした日本の積極的な参加を支えているのが日本企業による資金的な貢献である。特に2012年10月に運 営面で完全に独立した際に最初に口座に入った資金は日本企業(リストはKDIGOホームページにあるhttp://kdigo.org/home/partners/)からのものであり、力強い支援を得ている。またいくつかのコントロバーシーカンファレンスにも積極的な資金提供を受けている。これはこれらの企業が国際ガイドラインとその日本への適応が患者のアウトカムの改善に有効である事を理解されていることの現れであり大変心強い。

contents

第1章:chapter 1
マドリードカンファレンスで何が討議されたか?
深川雅史(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科教授)
第2章:chapter 2
KDIGO CKD-MBDガイドライン改訂の方向性は?
風間順一郎(新潟大学医歯学総合病院血液浄化療法部准教授)
第3章:chapter 3
EVOLVE研究に見られる統計手法の問題と課題
濱野高行(大阪大学大学院医学系研究科腎疾患統合医療学寄付講座助教)
第4章:chapter 4
KDIGO活動の現状ーガイドライン作成・改訂、コントロバーシーカンファレンスと インプリメンテーション活動ー日本の貢献は?
塚本雄介(IMSグループ板橋中央総合病院副院長)