第2章:chapter 2

ADPKDの診断と併存症の管理

監修:西尾妙織(北海道大学大学院医学研究科第2内科助教)

ADPKD治療の新しい展開 監修:東原英二、望月俊雄、西尾妙織、武藤 智、堀江重郎

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緒言
緒言
第1章:chapter 1
初めてのADPKD治療薬
第2章:chapter 2
ADPKDの診断と併存症の管理
第3章:chapter 3
多発性嚢胞腎の画像診断と嚢胞障害の治療法
第4章:chapter 4
KDIGOエディンバラ会議で何が話されたか?
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1.ADPKDの診断法

常染色体優性多発性嚢胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)は,両側腎臓に多数の嚢胞が進行性に発生・増大し、腎臓以外の種々の臓器にも障害が生じる最も頻度の高い遺伝性嚢胞性腎疾患である。加齢とともに嚢胞が両腎に増加、進行性に腎機能が低下し、70才までに約半数が末期腎不全に至る。わが国の診断基準は家族内発生が確認されている場合といない場合に分けて基準を設けている。

家族内発生が確認されている場合
  1. 超音波断層像で両腎に各々3個以上確認されているもの
  2. CT、MRIでは、両腎に嚢胞が各々5個以上確認されているもの
家族内発生が確認されていない場合
  1. 15歳以下では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々3個以上嚢胞が確認され、
  2. 16歳以上では、CT、MRIまたは超音波断層像で両腎に各々5個以上嚢胞が確認され、多発性単純性腎嚢胞、結節性硬化症、常染色体劣性多発性嚢胞腎などの除外すべき疾患が否定される場合をADPKDと診断する。
遺伝子診断の可否

ADPKDの原因遺伝子としてPKD1、PKD2が同定されているが、遺伝子解析は容易ではないため、現在わが国で遺伝子診断は行われていないのが現状である。

2.腎以外の臓器障害とその管理

肝嚢胞

肝臓は、腎臓に次いで嚢胞の好発部位であり、ADPKD患者の70~80%に認められる。肝嚢胞は年齢とともにその数、大きさは増す。巨大肝嚢胞は男性より女性に多く、経産婦に多い事からエストロゲンが肝嚢胞の増大に関与していると報告されている。よって肝嚢胞の大きいADPKD患者ではエストロゲン製剤を用いることをできるだけ避けた方がよい。

肝嚢胞は大きくなると腹部膨満、横隔膜挙上による呼吸障害、消化管通過障害からの栄養障害などの症状が出現するが、根本的治療法はないため、症状が強い場合には症状軽減を目的として嚢胞穿刺、硬化療法、嚢胞開窓術、部分肝切除術、肝移植などが考慮される。

脳動脈瘤

嚢胞以外の腎外病変として脳動脈瘤は広く知られており、4~12%に認められる。脳動脈瘤破裂による死亡率は4~7%であり、ADPKD患者の生命予後に影響を与える。脳動脈瘤は50%の症例で腎機能が正常の時に、29%の症例で血圧が正常範囲であるにも関わらず破裂していると報告されており、性別、透析の有無・肝嚢胞の存在などは有意な相関は示さない。このことから腎機能などから動脈瘤の破裂を予測することは困難である。

ADPKD患者の動脈瘤の破裂頻度は1/2,000人/年であり、ADPKD患者以外と比較すると約5倍高い。また破裂の平均年齢は41歳で一般の51歳と比較し有意に若い。

これらの事から、ADPKDの診断がされた時点でMRAにて検査をするのが望ましい。脳動脈瘤のスクリーニング検査の間隔10mm以下の動脈瘤で家族歴がない場合であっても0.05%/年の割合で破裂するという報告もあることから、3~5年間隔で検査することが望ましい。

3.CKDとしてのADPKD患者管理(血圧、食事療法)

血圧管理

ADPKDでは高血圧の発症頻度が高く50~80%に認められ、60%以上の患者は腎機能障害のないときから出現する。高血圧は、ADPKD患者にとって臓器障害および生命予後を左右する重要な合併症である。よってADPKD患者における降圧のおもな目的は、腎機能障害の進行を抑制することと、心肥大や心血管病変を抑制する事である。

降圧薬の種類ならびに降圧目標については、証拠不十分で結論づけることができないため、CKDにおける降圧療法に準じた130/80mmHg未満の管理で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を第一選択として治療を行う。

食事療法

慢性腎臓病の食事療法としてたんぱく質制限食は腎機能障害の進行を抑制することは知られているが、ADPKD患者においてGFR低下抑制に低タンパク食が同様の効果があるかは明らかではない。このため一律にCKDとして蛋白制限を行うことは意味がないと言える。ただし、CKDとしての位置づけからは、合併症の予防、特に心血管などの循環系障害について考えればCKD診療ガイドに準拠したバランスのとれた食事が推奨されている。

水分管理

通常の生活面では、増悪因子と考えられているバソプレシン分泌を抑制するように飲水を多くすることの有用性が指摘されており、通常の外来では1.5~2Lくらいを目安に飲水を促している。

contents

緒言
緒言
東原英二(杏林大学医学部多発性嚢胞腎研究講座教授)
第1章:chapter 1
初めてのADPKD治療薬
望月俊雄(東京女子医科大学第四内科講師)
第2章:chapter 2
ADPKDの診断と併存症の管理
西尾妙織(北海道大学大学院医学研究科第2内科助教)
第3章:chapter 3
多発性嚢胞腎の画像診断と嚢胞障害の治療法
武藤 智(帝京大学医学部泌尿器科講師)
第4章:chapter 4
KDIGOエディンバラ会議で何が話されたか?
堀江重郎(順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授)