CKDにおいて骨折を予知できるマーカー

執筆:板橋中央総合病院腎臓内科 塚本雄介(腎臓ネット)

1.骨代謝マーカー

原発性骨粗鬆症においては骨折を予知する、または治療の効果を判定できるマーカーの開発が行われてきた。これらのマーカーはCKDにおいて腎機能が低下してくるとその影響を受けるものもあり、また透析療法による影響も受けることもあってCKDにおける有用性がこれまで不確かなものが多かった。ここでは現在得られるエビデンスの範囲でどのような骨代謝マーカーがあるのか、そしてそのCKDにおける有用性を検証する。

(1)目的別の骨代謝マーカー

表1. CKDで使用できる血清骨代謝マーカー

  マーカー名 測定法(基準値)a カットオフ値a eGFRに依存bcf 血液透析による変化c 最小有意変化a DXAとの相関d 骨折の予知e
骨量減少 骨折
骨吸収マーカー TRACP-5b EIA (120-420 mU/dL) 309 420 No 4.8% 12.4%  
  s-NTX EIA (7.5-16.5 nmolBCE/L) 13.6 16.5 Yes NA 16.3%    
  s-CTX EIA (0.100-0.653 ng/mL) 未確定 0.653 Yes 30% 23.2%(日内変動大)    
骨形成マーカー BAP EIA (77.9-29.0 U/L) CLEIA (2.9-14.5 μg/L) 21.1 (EIA) 29.0 (EIA) No No 9%(CLEIA), NA(EIA)
  s-P1NP RIA (14.9-68.8 μg/L) NA NA No No 12.1%    

TRACP-5b:酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ、s-NTX:血清I型コラーゲン架橋Nーテロペプチド、s-CTX:血清I型コラーゲン架橋Cーテロペプチド

BAP:骨型アルカリフォスファターゼ、s-P1NP:I型プロコラーゲンN末端プロペプチド

a.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会、b.文献[7] 、d.文献[3]、e.文献[1]、f.文献[2]

表1に現在日本で測定できる骨代謝マーカーを示している。

この内、CKDにおいて5Dまで使用が現在推奨されているのは骨吸収マーカーとしてのTRACP-5b(酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ-5b法)、骨形成マーカーとしての骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)およびintact P1NP(I型プロコラーゲンN末端プロペプチドintact assay法)である。

どの骨代謝マーカーを使用するかは、測定の目的によって決定する。
目的は、a. 骨折リスクの予知、b. 治療の効果判定、c. 骨疾患の診断、である。

  1. 骨折リスクの予知

    これまで血液透析患者で骨折をアウトカムとして行われた前向き研究によって、骨折を予知できると結果が一致したマーカーはBAPである。BAPの骨折予測はAUC0.766と有能であり、そのcut-off値は20.1μg/L(CLEIA法)であった(文献1)。DXAによる骨密度とよく相関するのはBAPの他にTRACP-5bがある(文献2)。P1NPは骨形成マーカーとして血液透析患者でQCTによって測定した皮質骨骨量増加を予測する(文献3)。ただし、CKDとくに5D患者においてはintact P1NPの測定が推奨される。なお表1で示すカットオフ値は原発性骨粗鬆症(以下OP)において検証された値なので、そのままCKDのstage G3以降に適応できるかは不明である。

    マーカーではないが血清intact PTHに関しては表2に示すようにPTH低値および高値の片側または両側で骨折リスクの増加が見られるといったように結果が一定していない(文献1、4〜6)。やはり骨折の予知は、骨側の反応因子で見るのが妥当と思われる。

  2. 治療の効果判定

    International Osteoporosis FoundationではP1NPを治療効果判定と骨折リスクの測定に推奨している。また骨吸収マーカーとしての表1に示すマーカーの有用性が示されている。残念ながらCKDにおいて実際の治療でマーカーの有用性を検証した研究はない。ただ、今後骨粗鬆症治療薬のビスホスホネート、デノスマブ、テリパラチドの適応が進むにしたがって、骨吸収または骨形成マーカーによる治療反応を見ることが検証されていく。

  3. 骨疾患の診断

    CKDにおいてはその早期では原発性骨粗鬆症やステロイド性骨粗鬆症、GFRの低下に伴いPTHによる骨代謝異常がより増加する。従来、これを線維性骨炎、骨軟化症、無形性骨と分類していたが、これらは骨生検によってのみ可能な診断であるし、かつクリアーカットに分類できる症例は以前のように多いとは思えずあまり意味もないように思える。非観血的な方法として、これらのマーカーを測定することで骨吸収が亢進している病態なのか、それに骨形成亢進が加わっているのか、といった骨代謝状態を予測することが可能であり、治療効果の判定にはむしろ適当かもしれない。

表2. 5D患者におけるintact PTHの骨折cut-off値

コホート研究 骨折カットオフ値
2002 Coco M [文献4] intact <195 pg/ml for hip Fx
2006 Danese MD [文献4] PTH<50 pg/ml for both hip and vertebral Fx and Lowest risk around 300
2006 Jadoul M [文献4] >900 pg/ml for any frcture
2012 Iimori S. [文献4] PTH<100 pg/ml, PTH>290 pg/ml
(2)CKDにおける骨代謝マーカーの条件

OPに使用されている骨代謝マーカーのうち、尿中で測定するものは日内変動の影響を受けないものの(血清NTXやCTXは日内変動があり、さらに食事の影響もある)、筋肉量の影響が尿中Crを介して認められる。したがって、GFRの低下によって不正確になるので血清を測る方法が適している(文献7)。

その中でGFRの影響を受けないものとしては、骨形成マーカーではBAPとintact P1NPがある、骨吸収マーカーとしてはTRACP-5bのみとなる。BAPとPINPは骨芽細胞由来で、TRACP-5bは破骨細胞由来である。NTXとCTXは架橋によって重合しているコラーゲンが破骨細胞によってその架橋が切られ血中に放出されるものを測定しているが、GFRと相関してしまうのでGFRが低下していくと精度が低下してしまう。

(3)今後に期待される新しい骨代謝マーカー
  1. FGF-23

    fibroblast growth factor-23は骨細胞osteocytesが産する。CKDの早期にあって上昇し始めMBDの開始をもっとも早期に告げ、心血管病と血液透析患者の予測因子としても期待される。このFGF-23は血管石灰化と相関することが知られているが、類骨石灰化とも相関し、腰椎骨密度の1年間の喪失と相関することが報告されている(文献8)。

  2. sclerostin

    骨細胞でSOST geneによって産生され、Wnt signaling pathway(骨形成を抑制するpathway)を阻害する。この抗体で治療した閉経後骨粗鬆症患者で腰椎骨密度が5.3%増加した(文献9)。血液透析患者で血中濃度の増加が見られ、骨密度の減少を予知する結果が報告されている。pQCTで測定した骨密度と異常な微細構造と相関する(文献3)。

  3. dickkopf-1

    これもsclerostin同様にWnt signaling pathwayを阻害する。5D患者において高回転骨の診断にintact PTH やsclerostinよりも優れているとも報告されている(文献10)。

2.骨密度測定

(1)CKDにおけるDXA法の意義

DXA法による骨密度測定は原発性骨粗鬆症の診断基準であり、治療効果の判定基準でもある。しかしながら、2009年KDIGO CKD-MBDガイドラインではCKD stage 1-2における意義は認めながらも、それ以降のステージにあっては「モニターすることを推奨しない」とした。それは腎性骨異栄養症の組織型を反映しないというのがその根拠であった。しかしながら、その後前向き研究においてDXAによる骨密度測定(特に大腿骨頸部)が非透析CKD(文献11)、血液透析(文献1)、移植後(文献12)において骨折リスクの判定に有用であるという報告が相次いだ。このことから2015年に予定されているKDIGO CKD-MBDガイドラインの改訂において変更されると思われる。

図1は2003年から2008年の5年間に維持透析を行った485名の血液透析患者を対象に行われた前向きコホート研究の自験例で、DXAによる骨折予測のROC曲線を表している。この結果、Femoral neckでAUC0.616 (p<0.05)だが男女で分けると男性でAUC0.9 (cut-off値0.55 g/cm3)、女性でAUC0.73(cut-off値0.42 g/cm3)と極めて有効な測定法となっている(表3、4)。

一方、intact PTH値204 pg/mLで層別するとそれ以下では男女合わせてAUC0.717と改善するものの、204 pg/mLより高値ではAUCに有意差が消失した。すなわち、高PTHでは骨密度よりも骨微細構造の異常がより骨折に結びついていることが推測され、DXA法による骨折予測はPTHが低いほど有用であると考えられた。非透析CKDでも同様の結果が得られている。一方、同じ試験においてPTHの高低に関わらずb-APの骨折予測はAUC0.766と有能であり、そのcut-off値は20.1μg/L(CLEIA法)であった。なお、腰椎にあっては自験例では有意な予測能はなかった(文献1)。

図1.5D患者の骨折予知におけるDXAとb-AP値の診断精度(AUC曲線)

5年間の前向きコホート研究において、骨折(全て部位)を予測できる精度と特異性は血清BAPでAUC=0.766(p<0.0001)、femoral neck BMDでAUC=0.61 (p<0.05)、femoral torochanter BMDでAUC=0.616 (p<0.01)、1/3 distal radius BMDでAUC=0.588 (p<0.05)であった[1]。

表3.QDRによるDXA測定の骨折cut-off値
a. 2012原発性骨粗鬆症診断基準より引用。b. 文献[1]より引用

  原発性骨粗鬆症(女性)-QDR法a 血液透析患者(女性)-QDR法b
大腿骨頸部 0.565 g/cm2 0.42 g/cm2
Total hip 0.625 g/cm2 0.57 g/cm2
橈骨1/3遠位端 なし 0.40 g/cm2

表4.5D患者男女別のDXAによる骨折予知[1]

3.FRAX法

FRAXというのはWHOが開発した骨折リスク評価ツールFracture Risk Assessment Toolであり11個の骨折危険因子から向こう10年間の骨折の予測をする絶対骨折率算定モデルである。

その骨折危険因子は年齢、性、BMI、両親の大腿骨近位部骨折歴、現在の喫煙、ステロイド薬の使用、関節リウマチ、続発性骨粗鬆症の有無、アルコール摂取(1日3単位以上)、大腿骨近位部骨密度、である。これをCKDにも適応できるか検証した試験では、eGFR≧60 ml/min/1.73m2 (n=1787)ではその予測AUCは0.76でありeGFR<60 (n=320)の0.69に比し有意な差はなかった(文献13)。この結果はCKDにおいても骨折リスクの予測にFRAXが役立つ可能性を示唆している。

そのiPhone用計算アプリが購入できる。

https://itunes.apple.com/us/app/frax/id847593214?ls=1&mt=8

4.その他の骨密度、骨質の測定法

表5に各骨パラメーターの測定法を表している(文献14)。骨代謝マーカー、骨生検による骨形態計測、骨病理検査、DXAおよびQCTによる骨密度検査以外は実施できる施設は限られており、研究的なもので一般臨床への応用は期待できない。ただ、治療の効果判定として骨密度の増加は必ずしも骨折リスクの低減に結びつかない場合もある。そして骨折の原因が骨量の減少だけでなく、骨の構造上の脆弱化に伴うことも知られている。したがって、量だけでなく骨の質的な変化をモニターできる非観血的方法が必要になっている。

表5.骨パラメータの測定法。 文献[13]より改変掲載

骨パラメータ 測定法
骨密度 DXA
皮質骨と海綿骨での骨密度 QCT, pQCT
骨代謝回転 骨代謝マーカー(PTH, b-AP, sclerostin)、骨形態計測
微細骨構造 HR-pQCT, HE-MRI, microCT, microMRI、骨形態計測
マトリックス組成 赤外線分光光度計, ラマン分光光度計
微小骨折 共焦点顕微鏡, 病理組織検査
骨石灰化 骨形態計測

文献

  1. Iimori S, Mori Y, Akita W, Kuyama T, Takada S, Asai T, et al. Diagnostic usefulness of bone mineral density and biochemical markers of bone turnover in predicting fracture in CKD stage 5D patients--a single-center cohort study. Nephrol Dial Transplant. 2012 ;27:345-51.
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  14. Moorthi RN, Moe SM. Recent advances in the noninvasive diagnosis of renal osteodystrophy. Kidney int. 2013 84:886-94.

Contents

緒言:TOP
緒言
第1章
CKDにおいて骨折を予知できるマーカー
板橋中央総合病院腎臓内科 塚本雄介(腎臓ネット)
第2章
CKDにおける骨折を予防する治療法
大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学教授 稲葉雅章
第3章
CKDにおいて心血管石灰化を調べる検査
東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科 常喜信彦
第4章
CKDにおける血管石灰化の予防と治療法
湘南鎌倉総合病院腎臓病総合医療センター腎免疫血管内科主任部長 大竹剛靖

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