第2章:利尿薬の作用機序に学ぶ腎生理と疾患別実践的な投与法

各種利尿薬の特徴と投与法

板橋中央総合病院腎臓内科 塚本雄介(腎臓ネット)

浮腫性疾患に適応となる利尿薬にはその作用機序により、ループ利尿薬、サイアザイド系(および類似)利尿薬、K保持性利尿薬、バソプレシンV2受容体アンタゴニスト、浸透圧利尿薬がある。その他にも利尿薬としては緑内障治療に使われる炭酸脱水素酵素阻害薬もあるが浮腫性疾患での適応はない。

I.各利尿薬の特徴

A.ループ利尿薬

ループ利尿薬というのはヘンレループの太い上行脚にあるNa--K-2Cl輸送系(NKCC2)を阻害する利尿薬の総称で、もっとも多く使用されて来たのはフロセミド(経口薬、静注薬)だが、他にブメタニド(経口薬、静注薬)とトラセミド(本邦では経口薬のみ)がある。また長時間作用型としてアゾセミドが本邦では使用されている。以前エタクリン酸もあったが現在は製造中止されている。

表1:ループ利尿薬の種類と投与法(製品名は主な先行品のみ)

ループ利尿薬 投与経路 投与量 作用発現および持続時間
フロセミド
(ラシックス錠®)
経口 40~80 mg/日 Tmax 1~2時間、T1/2 0.35時間
フロセミド
(ラシックス注®)
静注 20~500 mg/回 作用発現は5分以内で、半減期T1/2は20~30分、効果持続は2~3時間程度。
トラセミド
(ルプラック錠®)
経口 4~8 mg/日(分1) 10mgでTmax 0.9時間、T1/2 2.2時間
ブメタニド
(ルネトロン錠®)
経口 1~2 mg/日 利尿作用は投与後約30~60分からあらわれ、
次第に効果が増強されて60~180分で最高に達し、
効果の持続時間は180~300分。
ブメタニド
(ルネトロン注®)
静注、筋注 0.5~1 mg/日 投与後 5~10分後に発現し、最大効果発現 は約60分後であった。
また、作用持続時間は投与後90~180分。
アゾセミド
(ダイアート錠®)
経口 60~240 mg/日(分1) 経口投与後1時間以内に作用が発現し、9時間後まで持続した。
Tmax 3.3時間、T1/2 2.6時間
特徴と投与法
  1. フロセミドは効果発現における個体感差異が大きい!

    特にフロセミドは生体利用度が個体間また病態によって大きく作用される。閾値を超えるまで効果は発現しないので十分な用量を投与する必要がある。

  2. アルブミンに結合して運搬される!

    いずれのループ利尿薬も血中ではそのほとんどがアルブミンと結合しており、近位尿細管における有機酸トランスポータによって尿細管内に分泌されて利尿効果を発揮するには蛋白結合している必要がある。このため低アルブミン血症が重症(Alb<2 mg/dL)であると効果が減弱していく。このような条件ではアルブミンとフロセミドの同時投与が試みられている。例えばフロセミド40mg+アルブミン6.25gや200ml 20%アルブミンにフロセミド60mgを混注など。

  3. フロセミド経口投与は吸収率50%!

    フロセミドを経口で投与した場合その吸収率は約50%なので静注20mgと同様の作用を期待するなら経口40mgが必要になる。一方、ブメタニドとトルセミドの経口吸収率はほぼ100%とされている。また浮腫性疾患では腸管浮腫が起きている場合が多くこの経口吸収量は低下する。このため重症例では静注薬を用いる必要がある。

  4. 各薬剤間の最大効果投与量は?

    フロセミドは健常人では静注では10mgから効果が発現して用量依存性に増加し40mgで最大効果を発揮するとされる。但し病態が重症になる程最小効果を発する閾値が増加し最大効果発現にさらに高用量が必要になることが多い。その静注40mgに匹敵するのはブメタニドでは1mg、トラセミドでは15~20mg(本邦では最大投与量8mg、経口フロセミドの40mgに匹敵)とされる。静注ではフロセミドとブメタニドの作用発現はそれぞれ数分から5分で、半減期T1/2は20~30分、効果持続は2~3時間程度である。

  5. 尿中Na+、K+、Cl-、Ca2+、Mg2+排泄を増加!

    その効果は尿量のみならず尿中電解質の再吸収抑制に現れる。Bartter症候群と同様の低K血症性代謝性アルカローシスとなる。因みにサイアザイドはGittelman症候群と同じ電解質変化、すなわち尿中Ca2+排泄の低下を起こす点が異なる。

  6. TGフィードバックを抑制しない!

    生理的な条件下では体液量の増加が起きて遠位尿細管管腔内へのNa+, Cl-の流入が増加すると、そこと糸球体の間にあるmacula densaへのNa+, Cl-の流入が増加することでアデノシンが分泌されて結果的に輸入細動脈が収縮し糸球体濾過量が抑制される(これを尿細管ー糸球体TGフィードバックと呼ぶ)。ループ利尿薬は遠位尿細管へのNa+, Cl-の供給を増やすものの、macula densaのNKCC2を阻害してNa+, Cl-の流入を抑制する。このためGFRの低下を自動的に起こしにくいとされている。

  7. 利尿ブレーキを克服するには?

    ループ利尿薬は当初Na, Kともに負バランスとなるが持続的に使用していくと負バランスが解消され効果が減弱していく。それまでの期間はループでは通常数週間である。その理由にはいくつかあり、そのうち遠位尿細管におけるNa-Cl共輸送(NCC)の代償性増加がある。このためNCCを阻害するサイアザイドの併用がふたたび利尿作用を増強させることがある。また体液量、心拍出量の減少はRAA系を賦活化させ、これがNa+, Cl-再吸収を遠位部ネフロンで増加させ拮抗的に働く。このためRAA阻害薬の併用が効果を増強持続させる働きがある。一方、K+に関しては摂取量が少ないと低K血症が発現し重症化させる恐れがある。このためK+補給を十分に行う必要がある。

  8. ワンショットか持続静注か?

    フロセミドを大量に静注する場合、ワンショットと持続静注でどちらが効果的かつ安全かという問題がある。ループ利尿薬の一つの問題は効果が発現している数時間は水Naバランスは負になるが、その後急激にNa利尿作用が減弱することで、ともするとネットで十分な負のNaバランスを保てない場合がある。このことから持続静注が単回投与より継続的に利尿効果を得られる可能性があるが、これまでの8つのRCTの結果では利尿作用や心不全の改善効果には有意差はなかった<Ho KM, et al. Anaesthesia, 2010, 65, 283>。

  9. 短時間作用型か長時間作用型か?

    経口フロセミド(Tmax 1~2時間、T1/2 0.35時間)のような短時間作用型と経口トラセミド(10mgでTmax 0.9時間、T1/2 2.2時間)や経口アゾセミド(Tmax 3.3時間、T1/2 2.6時間)のような長時間作用型の心不全に対する効果が検討されている。日本のCOLD-CHF研究やMELODIC研究ではアゾセミド群で長期のBNPおよびANP抑制作用がフロセミドに比し大きく、長時間作用型の神経内分泌系の改善作用における優位性を報告している<Miyata, M., et al. J Cardiol 59:352, 2012>。

副作用
  1. AKIにおける有用性と毒性

    フロセミドは腎髄質での酸素消費を減らし、PGE2産生を抑制して腎還流の改善をもたらすことが実験的には示されている。このため脱水やNSAIDsによってPGE2産生が抑制されている病態では逆効果になる危険性がある。AKIにおいてフロセミドの効果を比較したRCTのメタ解析では死亡率やRRTの必要性に関する有用性または毒性に関しては有意差がなかなか見られていない。その理由の一つにはAKIの多様性を持った病態にあると考えられる。どんな病態でも利尿効果が得られるのであれば、水Na負荷を取り除くだけでなく、正常アニオンギャップ性及びアニオンギャップ性代謝性アシドーシスの改善をもたらす。心不全における適応で血液浄化による除水と利尿薬との比較のRCTが行われているが、どれも血液浄化がより腎機能を維持するというエビデンスは得られていない(Ho KM, et al. Anaesthesia, 2010, 65, 283)

  2. 内耳障害

    特にフロセミドの大量投与に際しては耳鳴、難聴などの内耳障害に注意する。これらの多くは非可逆性である。大量投与に伴う耳鳴などの内耳障害は持続静注の方が少ないようである。ただし多くの研究では大量のフロセミドを使用しており、2011年DOSE研究では48時間にわたって12時間毎のワンショットと48時間持続静注を比較しており、その総投与量は72時間で前者が592mg、後者が480mgとなっている。

  3. 高尿酸血症

    ループ利尿薬は有機酸であり、尿酸と同じトランスポーターを競合するために尿酸排泄が減少する。このためサイアザイドと同様に痛風発作を起こすリスクを高めていることが報告されている。一方、大量の生食を同時投与することで尿酸及びその他の有機酸(シスプラチンも含む)排泄を増やすことが可能である。

  4. 低K血症

    低K血症に伴うミオパチーや心筋障害、そして肝硬変や肝門脈シャントがある場合は血中アンモニア濃度の増加に注意が必要である。そして脱水を起こす危険が特に経口摂取が制限されている場合に多い。

作用を減弱させる要因
  1. インドメサシン及びNSAIDs

    PGE2抑制によりループ利尿薬の効果を減弱させる。

  2. プロベネシド

    尿酸とともにフロセミドの分泌を行う有機酸トランスポータを阻害することで効果を減弱させる。

  3. 塩分過多

    塩分摂取量が多いと急速な効果としては尿中Na+排泄量は一時的に増加するものの、その後にNa+貯留が起き、結果的にNa+バランスは正となってしまう。Na+が貯留している病態では塩分制限を同時に行う必要がある。

  4. 重炭酸Naおよび代謝性低Cl性アルカローシス

    遠位部ネフロンでのNa+再吸収が促進され、ループ利尿薬のNa+利尿作用を減弱させる。これはサイアザイド感受性NCCの増加に寄与するところが大きく、サイアザイドの併用はこの場合の利尿効果減弱と拮抗する。代謝性低Cl性アルカローシスはループ利尿薬の効果と拮抗するのでこれを改善する努力が必要である。

B.トルバプタン

トルバプタン(サムスカ®)はバソプレッシンV2受容体選択的アンタゴニストで2010年以降日本でも「その他の利尿薬が効果的でない体液貯留を伴う心不全と肝硬変」に経口薬として使用されるようになり(3.75 mg~15 mg/日)、2014年からは利尿薬としてではなく常染色体優勢遺伝多発性嚢胞腎ADPKDの進行抑制を適応として投与が開始されている(~120 mg/ 日)。またトルバプタンに先立ち「腫瘍性のSIADH」に限って2006年からはもう一つのV2R阻害薬であるモザバプタン(フィズリン®)がすでに使用されている。いずれも集合管のV2受容体の選択的拮抗薬であり水チャネルAQ2の誘導を阻害して水再吸収を選択的に抑制する。他の利尿薬と異なり、水を選択的に排泄促進し、電解質の尿中喪失が少ない点が特徴である。

特徴と投与法
  1. 低Na血症を伴う体液過剰に効果的!

    何と言ってもループ利尿薬ではむしろ増悪させてしまう希釈性低ナトリウム血症を合併している体液貯留に有効な点である。血清Na濃度が正常化した場合は、口渇を適切に感じ自由水を自由に経口摂取できるならば飲水を許可することで高Na血症を予防できるが、そうでない場合は適切に自由水を補給することが必須になる。また心不全や肝硬変では希釈性低ナトリウム血症であり、Na自身の貯留はあることから投与にあたっては他の利尿薬との併用が推奨されている。ただしRAA系阻害薬との併用は高カリウム血症をきたしやすくするので注意する。

  2. 急激な血清Na濃度上昇と肝障害に注意!

    このため、どの適応においても開始時は入院下で投与することが義務付けられており、急激な利尿とそのための高Na血症は意識障害や橋中心髄鞘崩壊症を引き起こす危険があるので急速な血清Na濃度の上昇に十分注意する。特に高張食塩水との併用は危険である。また、ADPKDへの大量投与では重篤な肝機能障害の発症例があるので肝機能チェックによる全例報告が義務付けられている。

  3. 薬物動態は?

    トルバプタンは生体利用率は40-50%でほとんどが蛋白結合し肝臓でCYP3A4により代謝されるので併用薬に注意する。血中半減期は6-8時間で、最大利尿までの時間は2時間である。

  4. 血清K、Ca、Mg濃度に大きな変化をもたらさない!

    他の利尿薬に見られるように自由水が減少することで変化を受けるNa+, Cl-以外の電解質濃度に大きな変化をもたらさず、酸の排泄も促進しないので代謝性アルカローシスも防ぐことができる。低カリウム血症は心筋の収縮能を低下させたり、腎におけるアンモニア産生を増加させたりすることにより心不全や肝硬変にとって極めて好ましくない副作用であり、この点でのトルバプタンの有用性は高い。

  5. 腎機能とUosmに有効投与量が規定される!

    肺うっ血を伴う心不全に対する最高15mg/日までの本邦での研究では開始時の尿浸透圧UosmとGFRに効果は規定されているようで、開始前のUosm>358 mOsm/L、投与4-6時間後のUosm低下が24%以上であることが反応良好群の条件としている(Imamura, T., et al. Circ J 2013; 77: 1208)。しかし腎機能の低下しているADPKDに対しては60 mg/日から開始して120 mg/日まで増量するが、Uosmで観察すると120mgに到るまで腎機能が低下していても用量依存性にUosmの低下が見られる。ADPKDでは腎機能悪化に対する効果という点でeGFR>15ml/分/1.73m2までの投与となっているが、尿量がある末期腎不全患者での効果も報告されており、フロセミド同様かなり腎機能が低下していても効果は期待できるようである。

  6. 血管拡張を伴わない!

    トルバプタンはV2受容体選択的なので血管拡張による低血圧は起こさない。この点がカルペリチド(ハンプ®)との違いである。もちろん、過剰な利尿による体液減少は低血圧を引き起こす。

  7. EVERESTトライアルとは?

    欧米の4133名の心不全患者に患者に標準的な治療に加えトルバプタンとプラセボを投与して3年間観察したRCTでは、長期予後に有意差はもたらさなかったものの、初期治療における浮腫と呼吸困難の改善には有意な差をもたらした(Konstam, MA, et al. JAMA. 2007;297:1319-1331 )。

  8. トルバプタンの効果が少ない場合は?

    低ナトリウム血症の15%でトルバプタンへの反応が悪いことが報告されている。その理由として考えられるのは、i) まず重症の低浸透圧血症ではADH濃度が高いことがあり、相対的にトルバプタンの投与量が少なくなっている; ii) 次にバソプレシンに非依存性な部分のネフロンにおいて尿希釈が行われているような病態で重度の心不全や肝不全で見られる;iii) 過剰な水摂取により低Na血症が持続している場合;iv) 粉砕して経管で投与すると効果が減弱する。v) 作用亢進性V2R遺伝子異常のNephrogenic Syndrome of Inappropriate Antidiuresis (NSIAD)と呼ばれる稀な病態が存在する。

C.サイアザイド系およびサイアザイド系類似利尿薬

ループ利尿薬よりも遠位部の遠位尿細管におけるNaCl-共輸送(NCC)を阻害して利尿効果を発する。本邦ではサイアザイド系としてはトリクロルメチアジドやヒドロクロチアジドなど、サイアザイド系類似としてはインダパミド、トリパミド、メフルシド、などが本邦では使用されている。いずれも経口摂取による吸収はよく蛋白と結合して運搬され、近位尿細管から排泄される。そのT1/2はGFRの低下および高齢で延長し利尿効果は減弱する。食塩感受性高血圧症に良い適応になっているが、浮腫性疾患に対しては単独で使用されることは少ない。

表2:主なサイアザイド系およびサイアザイド系類似利尿薬(製品名は主な先行品のみ)

サイアザイドまたは類似薬 投与量 適応 Tmax T1/2
トリクロルメチアジド
(フルイトラン®)
2~8 mg/日 高血圧症(本態性,腎性等),悪性高血圧,心性浮腫(うっ血性心不全),腎性浮腫,肝性浮腫, 月経前緊張症 Tmax 1.75時間
T1/2 2.3時間
ヒドロクロロチアジド
(ダイクロトライド®)
25~100 mg/日 高血圧症(本態性,腎性等),悪性高血圧,心性浮腫(うっ血性心不全),腎性浮腫,肝性浮腫, 月経前緊張症 Tmax 2-2.6時間
T1/2 9時間
インダパミド
(ナトリックス®)
2 mg/日 本態性高血圧症 Tmax 1.9時間
T1/2 19.8時間
トリパミド
(ノルモナール®)
15mg/日 本態性高血圧症 Tmax 3-4時間
T1/2 9-10時間
メフルシド
(バイカロン®)
25-50 mg/日 高血圧症(本態性,腎性) 、下記の慢性浮腫における利尿:心性浮腫,腎性浮腫,肝性浮腫 Tmax 1.5-5.5時間
T1/2 2.9-11.4時間
特徴と投与法
  1. 尿中Ca排泄が低下する!

    ループ利尿薬と異なり尿中Ca排泄は低下する。このために腎結石の予防として投与される一方、高Ca血症の原因ともなる。Ca結石予防効果は尿中Ca増加が見られない症例でも認められており、結石予防効果が認められるのはヒドロクロチアジドで50mg/日、インダパミドで2.5 mg/日である。(Reilly R, et al. Clin J Am Soc Nephrol 5: 1893, 2010)

  2. 強い降圧作用!

    サイアザイド系(類似薬を含む)どの薬剤でも有効性が認められているわけではない。降圧作用が最も認められているのは本邦では発売が中止されているクロルタリドンで、大規模RCTのMRFITの途中でヒドロクロチアジド群で冠動脈疾患での死亡リスクが44%増加した一方クロルタリドン群ではむしろ55%リスクが減少し、途中で全てクロルタリドンへ変更されたという経緯がある(Circulation 82: 1616, 1990)。他にはインダパミド2.5mg/日は脳卒中を合併している高血圧に有用性が示されている。

  3. GFR低下時の効果は?

    一般にGFR<30 ml/分/1.73m2以下では作用が期待できなくなる。ただしループ利尿薬との併用で利尿作用を復活させる働きが注目されている。この場合の投与量はヒドロクロチアジドでCcr>50 mL/分では25-50mg/日に対しCcr<20 mL/分の場合100-200 mg/日が推奨されている。(Brater DC:N Engl J Med 339:387, 1989)

  4. 脂質代謝改善効果?

    LDL-コレステロール増加、HDL-C減少効果がみられる。機序はよくわからないが、Na制限でも見られることからNaバランスが原因の様である。しかし持続的な投与で脂質変化は可逆的で持続はしない。

  5. 利尿ブレーキとは?

    ループ利尿薬同様にサイアザイドでもNa+,K+バランスは負から正に転換していく。ただしその発現までの時間は数日から年の単位になることもありかなりばらつきが大きい。

副作用
  1. 耐糖能異常

    初期の反応としては体液量減少とCO低下により交感神経系が賦活化され肝臓と筋肉へのブドウ糖取り込みが減少する。継続して使用すると血清K濃度が減少することでインスリン分泌が低下する。この作用は高K食やRAA系阻害薬で拮抗する。

  2. 低クロール性代謝性アルカローシス

    ループ利尿薬がBartter症候群様の作用をきたすのに対し、サイアザイドはGitelmann症候群様の作用をきたす。

D.カリウム保持性利尿薬

K保持性利尿薬としてはミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストとNaチャネル遮断薬がありいずれも遠位部ネフロンに作用する利尿薬である。いずれもループ利尿薬やサイアザイドの様にK+排泄及び酸排泄を促進しない。またCa2+, M2+排泄も増加させない。こうしたことからサイアザイドとの併用で有用性を発揮している。中でもスピロノラクトンは肝硬変による腹水治療には第1選択薬であり、かつ左左室収縮能不全によるうっ血性心不全にも神経内分泌学的に改善効果を示している。ただし腎機能の低下により高K血症を起こしやすくなるので定期的な採血のよる注意が必要である。

  1. スピロノラクトン

    高アルドステロンによる高血圧や難治性高血圧症に多く用いられるが、肝硬変による浮腫や腹水に有効であり、かつループ利尿薬の様に低カリウム血症によるアンモニア産生を増強しない点が重要である。またスピロノラクトンは左室収縮能不全に伴ううっ血性心不全には利尿効果のみならず心筋保護作用もあることから有用性が言われている。最近では末期腎不全にあってもこの心筋保護作用から高カリウム血症を十分に予防する条件下で有用性が言われる様になった。CKDの虚血性AKIからの血流回復にも有効だという報告がされている。スピロノラクトンは経口で速やかに吸収されそれ自体の半減期は短いが活性代謝物であるcanrenonesに代謝されこのT1/2は16時間で、さらに7 alpha-thiomethylspirolactone (T1/2 = 13時間)に代謝される。このため、臨床的なT1/2は約20時間に上り作用が最高になるのに10〜48時間におよぶ、とされている。

  2. エプレレノン

    スピロノラクトンが抗アンドロジェン作用およびプロジェステロン作用があるために女性化乳房、インポテンス、月経不順、性欲低下などの副作用をきたすことがある。この場合はよりこうした作用が少ないエプレレノンの良い適応になる。また最近の急性心筋梗塞後の左室機能の改善と心筋リモデリングを促進するために適応される。さらに虚血性のAKIがCKDに進展するのを防ぐ効果が最近報告されている。ただし、スピロノラクトンより半減期がT1/2 3時間と短いので1日2回投与が最適である。

  3. トリアムテレン

    遠位部ネフロンのNaチャネルENaCを選択的に阻害する本邦では唯一の薬剤で(海外ではもう一つアミロライドがある)スピロノラクトンと同様に肝硬変による浮腫に投与される。腎血流をフィードバックにより低下させることでPGE2の産生を増加させるので、これを阻害するNSAIDsとの併用は避ける必要がある。また尿をアルカリ化することから腎結石の原因となったり、AKIを起こす症例が報告されている。ENaCを抑制することからI型偽性低アルドステロン症と同様の電解質変化を起こすし、ENaCの先天的な作用亢進であるLiddle症候群の際にはトリアムテレンがそれを拮抗できる。

E.浸透圧利尿薬

マニトールやグリセロールは血中で水解を受けずに未変化体で糸球体からほぼ完全に濾過されかつ尿細管での再吸収を受けないために浸透圧利尿を起こす。マニトールはヘンレ上行脚に到るまでの水に透過性のあるネフロンを通過することで濃縮されNa+再吸収を促して管腔内Na+濃度は減少しその遠位部ネフロンでNa+のバックフローを生じNa+利尿を生じるとともにK+分泌も促す。マニトールは細胞からの水を除去し、血流量を増やし腎髄質血流の増加は尿を希釈し、腎血流の増加と膠質浸透圧減少はGFRを増加させる。

特徴と投与法
  1. 薬物動態は?

    血液中の半減期は腎機能に反比例し1時間から36時間におよぶ。1日投与量は50-200 gで15%または20%マニトールで投与し、脳圧亢進に対しては30-60分かけて点滴静注する。

  2. AKI防止効果?

    マニトールは細胞外液量の増加、TGFのブロックによるGFRの維持、RBFの増加、尿細管内の円柱による閉塞の防止などの効果を期待されてAKIの防止に関するRCTが行われているが現在のところ肯定的な結果は出ていない。ただし肝性脳症に伴う脳浮腫の治療では有意に生存率を増やすことに成功している。

  3. 腎前性AKIの鑑別に有用?

    以前はこの鑑別のために推奨されていたが、現在のAKIガイドラインではこれを推奨していない。この目的で使用すべきではない。その理由はAKIの多くは腎実質性を含めた複合的な病態であることからで、また多くの病態で腎還流は減少していても細胞外液量は過剰であることがあるからである。

副作用
  1. 高K血性アシドーシス(腎機能低下例)

    細胞内液の除去により高張性低ナトリウム血症、低クロール血症をきたすが、その後に過剰な体液が減少すると細胞内K+とH+濃度が上昇し、細胞外に高カリウム性アシドーシスを結果する。腎機能が正常であればこれはすぐに補正されるがAKIでは持続する。また自由水が適切に補充されないと高ナトリウム性の脱水が起きる危険性が高い。これらから1日投与量は200g以下にしなければならない。

F.カルペリチド(ハンプ®)

心房から分泌されるNa利尿ペプチドで本邦で発見され、本邦でのみ急性心不全を適応として1995年に薬価収載されている。このためエビンデンスは限られている。投与法としては0.1μg/kg/分で持続静注し、0.2μg/kg/分まで増量できる。急性心不全109例に対しトルバプタンとのRCTの結果ではアウトカムに有意差はなかったとしている。ただしカルペリチドはトルバプタンと異なり血管拡張作用もあり、その副作用として低血圧に十分注意する必要があり、また低血圧症例には投与できない。

II.利尿薬投与の戦略

A.重症浮腫例に共通する戦略
  1. 至適な目標体重(体液量、循環血漿量)を想定する。

  2. 末梢浮腫を伴う場合は弾性包帯(ストッキング)着用や抗凝固療法、運動療法を併用する。

  3. 利尿薬の特徴をよく知って選択し、副作用、相互作用を熟知する。

  4. 静注ループ利尿薬の効果は5分程度で現れるので30分以内に効果が見られない場合は投与量を倍にして効果を再度見る。難治性の多くは不適切に少ない投与量と投与頻度である。

  5. 体重、血清K、Na、Clの頻回のチェック、及びCa, Mg濃度の定期的なチェックは欠かせない。血液ガス分析(特にHCO3-濃度)も重症例では定期的に行う。

  6. 選択した利尿薬の効果が少ない場合はその理由を考え、薬用量の増加、投与頻度、投与法(異なる利尿薬の併用も含む)を考える。

B.利尿薬に抵抗性の場合(特にフロセミド)

特にフロセミドは最強の利尿薬であり、これに抵抗を示す難治性浮腫の場合は以下を検討する。

表3:フロセミド抵抗性の要因

要因 原因 対策
1.
利尿薬が無効な浮腫
リンパ性浮腫、末梢静脈性浮腫、甲状腺機能低下症を鑑別する。 利尿薬を中止し、原病の治療。
2.
不適切なNaCl投与量
NaCl投与量が過多の場合負のNaバランスを保てず利尿効果は減少する。 Na+<2g (86 mEq)/日とし、利尿薬非投与時の24時間Na排泄量>100mmolであればNa投与過多。
3.
薬剤の吸収不良
腸管浮腫、非代償性心不全 静注に切り替える。
4.
尿細管への供給不全
低アルブミン血症 アルブミン+フロセミド同時投与
5.
有効循環血漿量・腎血流の低下
心拍出量低下、有効循環血漿量低下 輸液量増量、血管拡張薬、カルペリチド、トルバプタン投与
6.
糸球体濾過量の低下
AKI, CKD 投与量と頻度の増量
7.
RAA系亢進
浮腫に伴う続発性アルドステロン症、有効循環血漿量(腎血流)低下 スピロノラクトンの併用
8.
利尿ブレーキ
長期利尿薬使用 サイアザイド、スピロノラクトン等との併用
9.
PGE2産生抑制
NSAIDs投与 中止

III.各病態での投与法

A.うっ血性心不全

血管拡張薬とともにループ利尿薬を投与すると通常心拍出量の低下をきたさずにcentral filling pressureを減少させ、肺うっ血を改善するのに有効である。ただし注意すべきはうっ血性心不全では利尿効果を発する閾値が増加し、かつ最大効果も低下する。このため、往々にして経口ではなく静注が必要となり、かつ投与量も多くする必要がある。また浮腫が高度な場合は塩分と低Na血症(<130 mEq/L)の場合は水分摂取の制限が必要になる。通常フロセミドでは静注で20mg/回から初めて80mg/回まで必要に応じて増量する。それ以上の高用量を必要とする場合は持続点滴が望ましい。ブメタニドは静注で1 mgを投与する。これらによって効果が十分でない場合、カルペリチド(0.1~0.2 μg/kg/分)またはトルバプタン(3.75 mg~15 mg/日)を併用する。低Na血症がある場合はトルバプタンの良い適応だが高Na血症に注意し、カルペリチドは低血圧に注意する。

B.ネフローゼ症候群

低アルブミン血症のある場合はループ利尿薬の投与量を増加させる必要がある。静注で行いフロセミドの総量で120mg/日(経口で240mg/日)までは増量できる。またブメタニド 1 mg、トルセミド8 mg/日も投与できる。血清Alb濃度が2.0g/dL以下の場合は、しばしばアルブミンとフロセミドの同時投与が効果的である。この場合も塩分制限と水分制限は必須となる。ネフローゼ症候群などの浮腫性疾患では往々にして循環体液量の低下を疑うが、実際には低下していないことが報告されており、AKIを合併しない限りは利尿薬で効果的に治療は可能である。

C.肝硬変による浮腫・腹水

AASLDガイドラインでは軽症例にはスピロノラクトン25-50mg/日から開始し、より重症な例ではフロセミド40mg+スピロノラクトン100mgから最高フロセミド160mgとスピロノラクトン400mgの併用を行う(いずれも経口薬として)。またトルバプタンが低ナトリウム血症のある場合有効で3.75mg/日からの投与を検討する。どの利尿薬を使うかは血清KおよびNa濃度によって判断する。

D.CKD

糖尿病性腎症などの場合はネフローゼ症候群に治療は準じる。ループ利尿薬が第1選択で、難治性の場合にはサイアザイドの併用が効果的な場合がある。浮腫がなく水Naバランスが保たれていてもアシドーシスと高K血症の是正にステージG4以降にループ利尿薬を投与することも多い。フロセミドは「急性または慢性腎不全」に対しては単回で500mgまで、1日1000mgまでとされているがこの高用量が必要となる場合は持続静注で緩徐に行う。ループ利尿薬およびサイアザイドのCKDにおける投与ではより尿酸値を上昇させることが多く、それ自体が腎機能を低下させる危険を伴うので注意する。サイアザイドは理論的にはGFRを低下させるので通常stage G3以降では投与しない。ただし難治性の浮腫でループ利尿薬の効果が減じている場合、サイアザイドの併用が有効な場合がある。

E.AKI

AKIは以前、腎前性、腎性、腎後性と分類されていたが、2012年KDIGOによる急性腎障害ガイドラインではこのような分類を推奨していないように、単純に鑑別できる場合はむしろ少ない。したがって利尿薬を使用する場合、何が原因のAKIかを鑑別した上で利尿薬の適応を検討する。水腎症では勿論禁忌だが、急性尿細管壊死を伴う場合効果はあまり期待できない。AKIにおいて利尿薬を用いることが予後の改善にはつながらない、というRCTの結果はあるが、溢水の改善に可能性があれば躊躇すべきではないだろう (Nigwekar, SU, et al. Seminars in Nephrology 31, 2011, 523) 。まずは十分量のフロセミドの効果を判定することが必要で、大量になる場合は内耳障害に十分注意する。心不全に伴うAKIであればカルペリチドやトルバプタンの投与も検討する。

重要な参考文献

  1. Chapter 51. Diuretics. Hoorn, EJ, et al. Brenner and Rector's The Kidney, 2-Volume Set, Tenth Edition (2016) 1702-1733.
  2. In Brady HR, Wilcox CS, editors: Therapy in nephrology and hypertension, 2nd ed. London, 2003, Elsevier Science.
  3. Brater, DC.: Treatment of refractory edema in adults-UpToDate®2016.
  4. Radhakrishnan, J.: Pathophysiology and treatment of edema in patients with the nephrotic syndrome-UpToDate®2016.

Contents

第1章
尿濃縮のメカニズムと利尿薬の作用部位、
そして生じるそれぞれの電解質(血中および尿中)およびRAA系の変化
東京医科歯科大学名誉教授(腎臓内科学)・医療法人社団清湘会理事長 佐々木 成
第2章
各種利尿薬の特徴と投与法
板橋中央総合病院腎臓内科 塚本雄介(腎臓ネット)

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