第1章:KDIGO CKD-MBDガイドライン 2017改訂版

改訂の概要と特徴、WGで何が問題になったか?

深川雅史(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科教授)

腎臓はミネラル代謝の調節に重要な役割を果たす臓器であり、その機能が障害される慢性腎臓病(CKD)では、かならずミネラル代謝の異常が生ずる。従来骨や副甲状腺の病気として「腎性骨異栄養症」とよばれていたこれの異常が、全身疾患として「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常」(CKD-MBD)と呼ばれるようになって10年が過ぎた 1)。当初は、心血管イベントリスクや生命予後の不良の原因として血管の石灰化が注目されたが、FGF23などの新しい液性因子の関与による病態が解明され、その概念と障害臓器の範囲はますます拡大しつつある 2)

KDIGOでは、その後2009年に生命予後を主要なアウトカムとし、エビデンスに基づいたCKD-MBD診療ガイドラインを発表した 3)。その後の進歩を考慮し、2013年マドリードのControversies Conferenceで部分改訂を行うことが決定され 4)、そして本年出版されたのが、KDIGO 2017 Clinical Practice Guideline Update for the Diagnosis, Evaluation, Prevention, and Treatment of Chronic Kidney Disease-Mineral and Bone Disorder (CKD-MBD) 5) である。. ここでは、改訂の変更点の概要をまとめる 6)。詳細については、各論を参照されたい。

A.エビデンスの抽出と評価

腎臓病学の分野、特にこの領域はエビデンスに乏しくRCTも少ない。改訂にあたっては、まずresearch questionsをもとに、独立したエビデンス評価チームがこの10年間のエビデンスを抽出、評価した。基準は英語で書かれた原著論文で、観察期間や患者数で基準がある以外に、治療はRCTのみ、観察研究は前向き研究のみ、という厳しい条件があり、抽出された約1万の論文の中で、採用されたのは、97研究からの109論文のみであった。日本からは、5つの論文が採用された。

B.主な変更点

今回最大の変更点は、骨密度の有用性を支持するエビデンスが蓄積したことと、カルシウムの負荷を極端に警戒していることに尽きる。後者の実際としては、カルシウム含有リン吸着薬の使用や、保存期での活性型ビタミンD製剤のルーチン使用の制限が挙げられる。副甲状腺ホルモンの管理としては、カルシウム感受受容体作動薬と活性型ビタミンD製剤のいずれが優位であるというエビデンスがないため、並列して挙げられている。

なお、前回のガイドラインをくつがえすエビデンスが出なかったステートメントは、そのままになっていることに注意されたい。

C.今後の問題点

今後、このグローバルガイドラインを、地域でどう使っていくかが問題である。これには、人種差だけでなく、地域の医療制度、経済状態を考慮して進めていく必要があるが 7)、多くのエビデンスは欧米の研究に立脚しており、今後我が国から良質のエビデンス 8) を発信していくことが、これまで以上に求められる。

文献

  1. Moe, S., et al. Definition, evaluation, and classification of renal osteodystrophy: A position statement from Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO). Kidney Int 2006; 69: 1945-53.
  2. KDIGO Clinical Practice Guideline for the Diagnosis, Evaluation, Prevention, and Treatment of Chronic Kidney Disease–Mineral and Bone Disorder (CKD–MBD). Kidney Int 2009; 76(Supplement 113): S1-S130.
  3. Fukagawa M. et al: Introduction: expanding concepts of chronic kidney disease-mineral and bone disorder (CKD-MBD). Kidney Int Supple 2013; 3: 1-2.
  4. Ketteler, M., et al. Revisiting KDIGO clinical practice guideline on chronic kidney disease—mineral and bone disorder: a commentary from a Kidney Disease: Improving Global Outcomes controversies conference. Kidney Int 2015; 87: 502-528.
  5. KDIGO 2017 Clinical Practice Guideline Update for the Diagnosis, Evaluation, Prevention, and Treatment of Chronic Kidney Disease–Mineral and Bone Disorder (CKD-MBD). Kidney Int Supplements 2017; 7: 1-59.
  6. Ketteler, M., et al. Executive summary of the 2017 KDIGO Chronic Kidney Disease–Mineral and Bone Disorder (CKD-MBD) Guideline Update: what’s changed and why it matters. Kidney Int 2017; 92: 26-36.
  7. Fukagawa M., et al: Chronic Kidney Disease-Mineral and Bone Disorder in Asia. Kidney Dis 2017; 3: 1-7.
  8. Hamano T., et al: Clinical features of CKD-MBD in Japan: cohort studies and registry. Clin Exp Nephrol 2017; 21(Supple 1): 927-S20.

Contents

第1章
改訂の概要と特徴、WGで何が問題になったか?
深川雅史(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科教授)
第2章
CKD-MBDの診断:骨(CHAPTER 3.2)
稲葉雅章(大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学教授)
第3章
CKD-MBDの治療:高リン血症の治療と血清Ca濃度の維持(CHAPTER 4.1)
横山啓太郎(東京慈恵会医科大学腎臓高血圧内科准教授)
第4章
CKD-MBDの治療:異常PTH濃度の治療(CHAPTER 4.2)
駒場大峰(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科講師)
第5章
JSDTガイドラインとの整合性
濱野高行(大阪大学大学院医学研究科腎疾患統合医療学准教授)

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