第2章:KDIGO CKD-MBDガイドライン 2017改訂版

CKD-MBDの診断:骨(CHAPTER 3.2)

稲葉雅章(大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学教授)

3.2.1 CKD-MBDを示す所見、骨粗鬆症の危険因子のいずれかまたは両方を有するCKDステージG3a-G5D患者において、その結果が治療法の選択に影響を与える場合は、骨密度検査を骨折リスク判定のために行うことが望ましい(2B)。

A.理論的根拠

CKDステージG3a-G5D患者は、一般集団に比し骨折率が高いことが確立し、さらに大腿骨近位部骨折の新規発生が相当に高い罹病率や死亡率と関連する。2009年KDIGO CKD-MBDガイドラインの策定時期には、dual-energy X-ray absorptiometry (DXA)によるBMD測定が骨折リスクを評価可能かについて、CKD患者での既骨折(+)と(-)群の骨密度(BMD)を比較した横断研究のみであり、その結果は、研究により、またBMD測定部位により様々であった。DXAによるBMDが一般集団の骨折リスクを予測可能であるように、CKD患者でも可能かの根拠が欠如、DXAが骨疾患の組織所見を反映しないという点から、2009年ガイドラインはBMD検査をCKD-MBDを有するCKD G3a-G5D患者に対してのルーチン検査として推奨しなかった。さらには重要な点は、低BMDを呈するCKD患者での臨床試験がないことも、BMD測定の推奨を困難にした。

最近の根拠に基づく論文レビューで、成人CKD G3a-G5Dの成人患者で、DXAによるBMDと新規骨折に関する4つの前向きのコホート研究を認めた。これら研究で、CKD G3a-G5Dに亘ってDXA BMDが骨折を予測することが証明された。1番初期の研究は、日本の単一透析施設において毎年485名の血液透析患者(平均年齢60歳)のBMDをDXAで測定している。調整後コックス比例解析では、ベースラインの大腿骨頸部BMD、およびtotal hip BMD低値が骨折リスク上昇を予測した。例えば大腿骨頸部BMDの 1SD上昇で骨折リスクは0.65 (95%CI:0.47-0.90)と有意に低下した。PTH濃度の中央値204 pg/mL以下とそれを超える群の2群に層別化したROC解析では、低値群で大腿骨頸部BMDの濃度下面積(AUC)の0.717に対し、高値群では0.512であった。記録に値するのは、血清骨型アルカリホスファターゼ(bALP)でも新規骨折を予測できたことである。

2番目の研究で、Yenchekらは研究開始時70-79歳の地域コミュニティーに住む個人を対象にした前向き研究であるHealth, Aging and Body Composition Studyで、eGFR < 60 mL/min/1.73 m2のCKD患者でも非CKD患者でも、DXAのtotal hip BMD, および大腿骨頸部BMDと新規非椎体骨折との関連を評価した。2754人の参加者中、総計587人(21%)がCKD罹患で、その内、83%がCKD G3a, 13%がG3bであった。調整後の解析で、大腿骨頸部BMDは1SD低下するごとに骨折ハザード比(HR)は非CKD群で2.14 (95%CI: 1.80-2.55)、CKD群で2.69 (95%CI: 1.96-3.69)であった。Total hip BMDでも同様の結果であった。大腿骨骨折に限定すると、調整後の大腿骨頸部BMD 1SD低下によるHRは、CKD群で5.82 (95%CI: 3.27-10.35)、非CKD群で3.08 (95%CI: 2.29-4.14)であった。交互作用項で、BMDと骨折の関連は、CKD群と非CKD群との間で差はなかった。しかし、大腿骨頸部BMDと骨折との関連は、研究参加者すべてを合わせての解析で、PTH > 65 pg/mL(6.9 pmol/l; HR: 1.56, 95% CI: 0.90–2.70)の群では、PTH ≦ 65 pg/ml (6.9 pmol/l; HR: 2.41, 95% CI: 2.04–2.85)の群と比べて、両者の関連は有意に弱かった。このことは、上述したように透析患者で同じパターンが見られたことから注目に値する。

Westらは131名の平均62歳の保存期患者の2年間追跡の前向きコホートの結果を報告している。ベースラインで、CKD G3a to G3b、G4, および G5 の3群の割合は、それぞれ 34%, 40%, 26%であった。DXA BMD測定は、total hip, 腰椎、橈骨超遠位部、橈骨遠位1/3部でベースラインと2年後に行われている。すべての部位での低BMD、および年間BMD低下率高値は骨折を予測した。例えば、多変量モデルでtotal hipBMD 1SD低下のオッズ比は1.75 (95% CI: 1.30–2.20)であった。ROC AUCは、調整後モデルで腰椎の0.62から橈骨超遠位部の0.74の範囲であった。

さらに最近では、NaylorらがCanadian Multicenter Osteoporosis Studyの2107名の40歳以上の成人(320名のeGFR ≦60 ml/min/1.73 m2を含む;72%がCKD G3a, 24%がG3b,)において、Fracture Risk Assessment Tool (FRAX)の主要骨折リスクの予測可能性を評価した。その結果、FRAXとBMD値, FRAXのみでBMD値なし, および大腿骨頸部BMDT-scoreのいずれもが骨折を予測できた(AUC: 0.65 to 0.71)。AUCは、大腿骨頸部BMD T-scoreに転倒履歴を加えると最大となった。重要な点は、AUCがCKD群と非CKD群とでかわらなかったことである。

DXA BMDが、健常児童や思春期若者、CKD患者において骨折を予測できる根拠がますます増加している。しかし、CKDの児童や思春期青年においてDXA BMDと骨折との関連を検討した研究は存在しない。DXA BMDのCKD成人の骨折予測能が示されたように、CKD児童での骨折予測能の根拠がない観点から、今回のガイドラインではCKD児童では特定のrecommendationはなかった。しかし、CKD児童や思春期男女でしばしば著明な成長不良が起こることに注意すべき点である。DXA測定は2次元のareal BMD (g/cm2)として測定されるため、短身長の児童では3次元のvolumetric BMD (g/cm3)に比べて過小評価となる。2013年 International Society of Clinical Densitometry (ISCD) Pediatric Official Positionsに沿う形で、DXA BMDは骨サイズで調整すべきである。DXA BMDを身長Z scoreで調整する予測式が現時点で使用可能で、これを用いるとCKD児童でのDXA BMDのzスコアは大きな影響を受ける。最後の4つ目の研究は、171名のCKD G2- G5D児童に対する単一施設の研究で、BMDはpQCTによる脛骨皮質の3次元volumetric BMDとして測定されている。脛骨皮質BMDは、その後1年間の骨折を予測し、Zスコア1unit低下のHRは1.75 (95% CI: 1.15–2.67; P < 0.01)であった。

証拠に基づいた論文レビューで、CKD G3a-G5Dでの骨粗鬆症治療薬のBMDへの効果に関する臨床試験についても評価を行った。前回の解析で、閉経後骨粗鬆症に対する治療薬物(リセドロネート, アレンドロネート, テリパラチド, ラロキシフェン)の評価を行った大規模RCTについて、2009年のガイドラインで記述した。これら試験では血清クレアチニン上昇、副甲状腺機能亢進症や血清アルカリホスファターゼ上昇(すなわちCKD-MBD)の患者は特定して除外している。しかし、post hoc解析でこれら薬剤がeGFR中等度低下患者において、eGFR軽度低下もしくは正常患者に比較して、BMD改善や骨折頻度抑制の効果は同等であったことを見出している。2009年以降、3つの新規の臨床試験が見いだされた。デノスマブ研究もまた、閉経後骨粗鬆症女性で正常PTHを呈する患者を対象としたRCTのpost hoc解析であり、2817 名の CKD G3a- G3b と73名のCKD G4女性におけるデノスマブの骨折リスク抑制効果とBMD改善効果を示している。同時に、進行期CKD患者でのデノスマブに関連する低Ca血症のリスクについて言及する必要がある。残り2つの新規試験はアレンドロネートとラロキシフェンを用いた小規模研究(<60名の患者)であり、CKD-MBDを合併した患者を除外していない。これら研究ではDXA BMDに対する改善効果は一貫したものではない。概して、進行期CKD (特にCKD G5–G5D)に対してそのような治療介入による骨折防止効果に関するデータの存在しないことが大きな限界である。

要約すると、先に述べた成人CKD患者での骨量測定を評価した4つの前向き研究の存在が、2009年ガイドライン以後の主たる進歩を表している。これら研究はCKDの異なる重症度にわたってなされたにもかかわらず、大腿骨BMDが骨折を予測しえたという知見は4つの研究を通じて一致しており、2つの研究では両者の関連はCKD患者でも非CKD群と同等であった。これら識見に基づくと、もし低BMDやBMDの低下が転倒防止策や骨粗鬆症治療薬の使用などの追加介入の根拠となるならば、BMD測定は合理的なものとなる。

B.Research recommendation

  1. DXA BMDに基づく介入が骨折率低下に関連するか、またその効果がベースラインPTH濃度、腎臓の基礎疾患、CKD GFRのカテゴリーによって異なるかを明らかにするRCTが必要。
  2. DXAに代わるQCTなどのイメージング技術がCKDでの骨折予測をさらに改善できるかを明らかにする前向き研究が必要。
  3. DXAがCKD小児での骨折を予測するか、小児のBMD測定部位としてISCDのrecommendationsによる全身や脊椎がCKDでも有用かを決めるCKD小児やや思春期男女での前向き研究が必要。大腿骨や橈骨BMDの小児の参照データが現在使用可能で、健常小児や思春期男女の新規骨折を予測する。

3.2.2: CKDステージG3a-G5D患者において、腎性骨異栄養症の組織型を知ることが治療法の選択に影響を与える場合は、骨生検を行うことは妥当である(グレードなし)。

A.理論的根拠

腎性骨異栄養症は、骨組織異常として定義され、CKD-MBDの骨異常の1つの要素として定義される。骨生検は腎性骨異栄養症の診断と分類のための金科玉条である。2009年ガイドラインで詳述されているように、DXA BMDは腎性骨異栄養症の組織型を識別できず、生化学マーカーの診断有用性は感度・特異度に劣ることから限定的となる。PTH測定法の相違(例えばintact PTH [iPTH]とwhole PTH)やそれに伴うや正常域の相違が研究間での不一致を生み出している。不幸なことに、横断研究では、基調となる骨組織型を予測するためのバイオマーカーの有用性に関して相反する結果が得られている。このことは、ほとんどの流血中バイオマーカーの短い半減期と、長い(3-6カ月)骨リモデリング(代謝回転)サイクルを考えれば驚くべきことではない。

KDIGOは最近国際共同事業を指導し、492名の透析患者においてバイオマーカー(すべての測定を同一検査施設で施行)と骨生検の診断能力に関する後ろ向きの横断研究を行った。その目的はPTH (iPTHとwhole PTHの両方), bALP,およびI型プロコラーゲン-N-プロペプチド(P1NP) などの骨代謝回転マーカーの予測指標としての価値を示すためであった。iPTH, whole PTH,および bALPレベルは骨代謝回転と関連していたが、どのマーカーも単独もしくは複合しても個々の患者で骨代謝回転低下、正常、亢進を診断するうえで十分に確固たるものでなかった。その結論は2009 KDIGOガイドラインを支持するもので、PTH抑制のための治療開始時期や中止時期を決定するためには、PTHの絶対的なターゲット範囲を定めるよりも、PTHの方向性を用いるべきというものであった。表1は治療法の開始・中止を決定するうえでの有用な血清PTH濃度の感度、特異度、陽性および陰性反応適中度を示しており、臨床医が直面する課題を示している。したがって、本KDIGOワーキンググループは、治療の指針となるようPTHの動きを継続して追跡し、PTHの方向性が一定しないときに骨生検を考慮すべきとすることを推奨する。

原因不明の骨折、治療抵抗性の高Ca血症、骨軟化症疑い、PTH上昇に対する通常療法に対する非定型の反応、もしくは通常療法に抵抗するBMD減少の持続などを呈する患者で骨生検が考慮されるべきである。骨生検の目的は (i)非定型もしくは予期しない骨病理所見の存在を除外すること、(ii)患者が骨代謝回転亢進か抑制かのどちらの状態かを決定し、薬物量を調整して腎性骨異栄養症を治療すること(例えば、Ca受容体作動薬、カルシトリオールやビタミンDアナログを開始・中止するかなど)、および(iii)治療変更の必要性のある骨石灰化障害の同定(例えばアルミ製剤の服用中止、もしくは積極的に低リン血症やビタミンD欠乏症を治療することなど)などが挙げられる。

2009ガイドラインでは、CKD G4 - G5D患者、CKD-MBDを示唆する生化学的根拠のある患者、低BMD患者かつ/または脆弱性骨折のある患者で骨吸収抑制薬治療前の骨生検の施行が推奨されている。その理論的根拠として、低BMDがCKD-MBD(例えばPTH高値)によるかもしれないこと、PTH抑制療法が骨吸収抑制薬投与より安全で適切な治療であることによる。加えて、ビスホスホネートは低回転骨疾患を惹起する恐れがある。この事は、13名のCKD G2-G4患者にビスホスホネート種々期間治療後に骨生検を行った唯一の横断研究結果に基づいている。現在に至るまで、CKD患者の研究でビスホスホネートが無形成骨を惹起することを明確に示した研究は存在しない。さらに、腎蔵病のない場合でも骨吸収抑制薬が骨形成率を抑制することが確立した事実でおり、CKD患者での骨代謝回転過剰抑制に関する懸念は空論かもしれない。例えば、閉経後骨粗鬆症治療のためのゾレドロン酸のRCTでは、治療期間12か月の時点で、ゾレドロン酸投薬群のbALPレベルは偽薬群に比べて59%低い。これらの根拠が限定的にかかわらず、ビスホスホネートのリスク・ベネフィット比率を加重すると、2009年KDIGOガイドラインは治療前の骨生検の必要性を示唆している。2009年以来。骨吸収抑制薬(デノスマブ)の追加治療がCKD G3a-G3b、G4患者において、Recommendation 3.2.1で討論されたように有用であることが証明された。現時点で決定的な臨床試験がないものの、CKD患者で骨粗鬆症治療薬投与の経験がますます増加したことが低BMDで高骨折リスクの患者を骨吸収抑制薬で治療する安心感を増している。さらに、追加データでCKD患者での新規骨折率が著明に高いことが明らかとなり、骨生検を実施不能なことが、高骨折リスク患者に骨吸収抑制療法を控えることを正当化しないようになった。それ故、ワーキンググループでは、CKD患者での骨粗鬆症治療薬の使用は個々に取り扱うべき事項であるため、骨吸収抑制療法開始前の骨生検の必要性を削除することを投票で決定した。しかし、これら薬剤の使用には注意深くあるべきで、腎性骨異栄養症の基調となる疾患に最初に取り組むことが未だ賢明となる。有効性に関しては、骨吸収抑制療法は活性化破骨細胞のない状況では無形成骨同様、治療から得られる効果は小さいと思われる。さらには、CKD G3a-G5の患者では、薬剤によるAKIなどの付加的な副作用についても考えてみる価値がある。

要約すると、骨生検は腎性骨異栄養症の評価のための金科玉条であり、臨床症状や生化学的異常からその病因が明らかではなく、骨生検の結果によって治療が変更されうる場合には、その施行が考慮されるべきである。このステートメントにあたり、ワーキンググループは多くの施設で骨生検の実施経験やその評価を行う経験が限られていることを熟知している。このことを念頭に置き、骨吸収抑制薬の治療がCKD G3a-G3b、G4患者において有用である根拠がますます増大していること、これら薬剤が明確に無形成骨を引き起こすという堅牢な証拠がないことを追加すると、今回のガイドラインでは、骨吸収抑制薬投与前の骨生検施行をもはや示唆しなかった。

B.Research recommendation

  1. 血清バイオマーカーが骨組織所見の変化を予測しうるか否かを明らかにする前向き研究は必要である。

Contents

第1章
改訂の概要と特徴、WGで何が問題になったか?
深川雅史(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科教授)
第2章
CKD-MBDの診断:骨(CHAPTER 3.2)
稲葉雅章(大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学教授)
第3章
CKD-MBDの治療:高リン血症の治療と血清Ca濃度の維持(CHAPTER 4.1)
横山啓太郎(東京慈恵会医科大学腎臓高血圧内科准教授)
第4章
CKD-MBDの治療:異常PTH濃度の治療(CHAPTER 4.2)
駒場大峰(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科講師)
第5章
JSDTガイドラインとの整合性
濱野高行(大阪大学大学院医学研究科腎疾患統合医療学准教授)

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