第4章:KDIGO CKD-MBDガイドライン 2017改訂版

CKD-MBDの治療:異常PTH濃度の治療(CHAPTER 4.2)

駒場大峰(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科講師)

4.2.1: 透析療法をおこなっていないCKDステージG3a-G5患者において、適正なPTH濃度は不明である。しかしながら、intact PTH濃度が進行性に上昇したり、そのアッセイ法での正常上限を持続的に超えたりしている場合は、介入可能な因子、すなわち高リン血症、低Ca血症、リンの過剰摂取、ビタミンD欠乏などを評価することが望ましい(2C)。

2009年版KDIGOガイドラインでは,CKDステージG3-G5において至適と考えられるPTH濃度は明らかでないとされていた。その後も,保存期の至適PTH濃度に関する新たなエビデンスはなかったことから,今回のガイドライン改定で至適PTH濃度に関する条文は変更されないこととなった。

保存期CKDにおける至適PTH濃度は明らかでないものの,正常上限値を超える場合は,前版ガイドラインと同様,今回の改定ガイドラインでもその要因となる介入可能な因子を評価することが望ましいとされた。但し,保存期CKDにおけるPTH上昇は,恒常性を維持するための妥当な反応でもあることから,今回の改定ガイドラインでは,前版ガイドラインと異なり,単回のPTH上昇ではなく,PTH濃度が進行性に上昇したり,持続的に高値を示したりする場合に,その要因を検索するよう変更がなされた。

PTH上昇の要因となる因子としては,前版ガイドラインでも言及されたビタミンD不足,低カルシウム血症,高リン血症が今回のガイドラインでも取り上げられた。ビタミンD補充に関しては,CKDステージG2-G4の患者において25(OH)D濃度の上昇とともにPTH濃度が有意に低下したことが報告されている 1)。リン吸着薬に関しては,3報のRCTの結果が報告されている。2報のRCTでは,セベラマー塩酸塩,セベラマー炭酸塩投与群において,プラセボ群と比較しPTH濃度に変化がなかったことが報告されている 2,3)。もう1報のRCTでは,酢酸カルシウム,セベラマー炭酸塩,ランタン炭酸塩からなるリン吸着薬治療群において,プラセボ群と比較しPTH上昇が抑えられたことが報告されている 4)

さらに今回の改定では,PTH上昇の要因となる因子としてリンの過剰摂取が取り上げられた。リンの過剰摂取は必ずしも高リン血症をきたさないが,PTH濃度は上昇することが知られている。食物,添加物からのリン摂取は介入可能な因子であるが,その評価法の確立が今後の課題である。

4.2.2: 透析療法をおこなっていないCKDステージG3a-G5患者において、カルシトリオールやビタミンDアナログは、ルーチンには投与しないことが望ましい(2C)。カルシトリオールおよびビタミンDアナログを、重症で進行性の副甲状腺機能亢進症を有するCKDステージG4-G5患者のために準備することは妥当である(グレードなし)。

小児においては、年齢相応の血清Ca濃度に維持する上で、カルシトリオールやビタミンDアナログの投与を考慮しても良い(グレードなし)。

2009年版ガイドラインでは,CKDステージG3-G5においてPTH濃度が進行性に上昇する場合は活性型ビタミンD製剤の投与を行うことが記載されていた。これは,保存期CKDにおいて活性型ビタミンD製剤がPTH分泌を抑制し,骨組織所見を改善するという報告に基づくものであったが,骨折や心血管イベントなどハードアウトカムへの効果を根拠とするものではなかった。また活性型ビタミンD製剤を使用する際は高カルシウム血症に注意が必要であるが,この点は解説の中で言及されるのみであり,当時は重大な懸念として認識はされていなかった。

2009年版ガイドラインの後,保存期CKD患者における活性型ビタミンD製剤の効果に関して2つのRCT(PRIMO試験,OPERA試験)の結果が報告されている 5,6)。ともに左心肥大への影響を主要評価項目とする試験であったが,両試験とも有意な効果は示されず,さらに高頻度に高カルシウム血症が起こったことが報告された。近年のメタアナリシスにおいても,活性型ビタミンD製剤は高カルシウム血症のリスクとなることが示されている 7,8)

すなわち,保存期CKD 患者に対する活性型ビタミンD製剤の投与は,PTH分泌を抑制し,骨組織所見を改善するものの,患者予後への効果は明らかではなく,高カルシウム血症の要因となる。保存期CKDにおけるPTH上昇は,恒常性を維持するための妥当な反応でもあることから,今回の改訂ガイドラインでは,保存期CKD 患者において活性型ビタミンD製剤はルーチンには使用しないことが望ましいとされた。但し,CKDステージG4-G5で重度,進行性の二次性副甲状腺機能亢進症を有する場合は,活性型ビタミンD製剤の使用を考慮して良いものとされた。

活性型ビタミンD製剤には,生体内で合成されるカルシトリオールの他,パリカルシトールなどのビタミンDアナログがあるが,保存期CKD 患者におけるPTH抑制効果や高カルシウム血症のリスクに関して,両剤に差異はなかったことが報告されている 9,10)。天然型ビタミンDは,保存期CKDにおいて高カルシウム血症をきたすことなくPTH濃度を低下させることが可能であるが,活性型ビタミンD製剤との優位性に関して,ガイドラインの基準を満たす十分なエビデンスはないとされた。さらに近年,徐放型の25(OH)D製剤が開発され,改定ガイドラインのエビデンスレビュー後に発表されたRCTでは,本剤が高カルシウム血症をきたすことなくPTH濃度を低下したことが示されている 11)。しかし,ハードアウトカムへの効果は明らかでないことから,改訂後のガイドライン条文を修正する必要性はないものと判断された。

以上の記載はすべて成人に関するものであるが,小児でもPTH上昇は骨量低下や血管石灰化と関連することが知られている。さらに,小児では骨の成長のためカルシウムの需要が高まっていることから,年齢に見合った血清カルシウム濃度を維持するためにも,活性型ビタミンD製剤の投与を考慮して良いものとされた。

4.2.3. CKDステージ5D患者において、iPTH濃度をそのアッセイ法の正常上限値の2倍から9倍に維持するのが望ましい(2C)。

iPTH濃度がこの範囲内でどちらかの方向に著明に変化した場合、この範囲外への逸脱を防ぐために治療の開始もしくは変更を行うことが望ましい。

2009年版ガイドラインでは,観察研究における死亡リスクとの関連性に基づき,透析患者におけるPTH濃度は正常上限の2倍から9倍とされていた。しかし,PTH濃度への介入がアウトカムに及ぼす影響に関するエビデンスはなかったことから,推奨の強さや根拠は弱いものとされていた。その後,EVOLVE試験の結果が発表され 15),サブ解析でPTH濃度への介入が予後に及ぼす効果が限定的ながらも示されたが,主解析の結果は有意ではなかったことから,今回のガイドライン改定でこの条文は据え置きとなった。

4.2.4: CKDステージG5D患者においてPTH抑制療法が必要となった場合、カルシミメティクス、カルシトリオール、ビタミンDアナログのいずれか、またはカルシミメティクスにカルシトリオールまたはビタミンDアナログを併用することが望ましい(2B)。

透析患者の二次性副甲状腺機能亢進症の治療手段としては,2009年版ガイドラインの後,シナカルセト塩酸塩に関して新たなエビデンスが登場している。最も重要なエビデンスはEVOLVE試験から出されたデータであり,今回のガイドライン改訂会議でもその解釈に多くの時間が費やされた。

EVOLVE試験は,二次性副甲状腺機能亢進症を有する血液透析患者3,883名を対象に,シナカルセト塩酸塩が心血管イベント発症のリスク低下に及ぼす影響を検証することを目的に実施された試験である 12)。主要評価項目は死亡,および心筋梗塞,心不全,末梢血管疾患,不安定狭心症による入院からなる複合エンドポイントとされた。主解析の結果,主要評価項目に関してシナカルセト塩酸塩群ではプラセボ群と比較し7%のリスク低下が認められたが,統計学的に有意ではなかった。しかしEVOLVE試験には,両群間の患者背景の違い,高い脱落率,脱落者における市販のシナカルセト塩酸塩の使用などの問題点があり,これらの問題点を考慮したサブ解析では,シナカルセト塩酸塩により心血管イベントのリスクが有意に低減したことが示されている。またシナカルセト塩酸塩の効果には年齢と交互作用があることも示され,65歳以上の症例ではシナカルセト塩酸塩による心血管イベントのリスク低減効果がより強く認められることが報告されている 13)

EVOLVE試験は,さまざまな後付け解析もなされており,重度の治療抵抗性二次性副甲状腺機能亢進症(intact PTH 1000 pg/ml以上かつ血清Ca値10.5 mg/dl以上,あるいは副甲状腺摘出術の実施)の発生がシナカルセト塩酸塩により有意に抑制されたことが報告されている 14)。骨折に対する効果も検討されており,やはり主解析では有意な結果は示されなかったものの,患者背景の違いを調整したサブ解析ではシナカルセト塩酸塩による有意な骨折リスクの低下が示されている 15)

2009年版ガイドラインの後,EVOLVE試験の他にもシナカルセト塩酸塩に関するさまざまな臨床試験が行われており,シナカルセト塩酸塩と低用量活性型ビタミンD製剤の併用療法により,従来治療と比較し,より良好な二次性副甲状腺機能亢進症の管理が得られたこと 16),volumeスコアで評価される冠動脈石灰化の進展が有意に抑制されたこと 17) が報告されている。PARADIGM試験では,活性型ビタミンD製剤とシナカルセト塩酸塩の単剤としての効果が比較され,PTH降下作用に関しては両薬剤の効果は同等であったことが示されている 18)。またシナカルセト塩酸塩による治療前後の骨生検組織を比較したBONAFIDE試験では,シナカルセト塩酸塩により高回転型骨病変が改善したことが示されている 19)

以上の通り,前版ガイドラインの後,シナカルセト塩酸塩に関するさまざまなエビデンスが発表されたが,シナカルセト塩酸塩を二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬として第一選択とするかどうかに関して,Work Groupの意見は二分された。一つの意見は,EVOLVE試験の主解析で有意な結果が示されなかったことを重視するものである。もう一つの意見は,活性型ビタミンD製剤にはハードアウトカムに関するエビデンスがないことから,サブ解析であってもシナカルセト塩酸塩に有意な効果が示されたことは重視すべきというものである。

このようにWork Groupでシナカルセト塩酸塩の序列に関してコンセンサスが得られなかったことから,またシナカルセト塩酸塩に伴う薬剤費の問題も考慮され,改訂ガイドラインではシナカルセト塩酸塩と活性型ビタミンD製剤は同列に扱われ,条文ではアルファベット順にシナカルセト塩酸塩,カルシトリオール,ビタミンDアナログと記載されることになった。小児の場合は,骨の成長のためカルシウムの需要が高まっていることから,シナカルセト塩酸塩を使用する際は低カルシウム血症に特に注意するよう解説で記載された。

シナカルセト塩酸塩に加え,近年,静注製剤のカルシウム受容体作動薬であるエテルカルセチド塩酸塩が開発され,改定ガイドラインのエビデンスレビュー後に発表されたRCTでその効果が発表されている 20,21)。しかし,ハードアウトカムへの効果は明らかでないことから,改定後のガイドライン条文を修正する必要性はないものと判断された。

4.2.5. 内科的薬物療法が成功しなかった重症の副甲状腺機能亢進症を有するCKDステージ3-5Dの患者に対しては副甲状腺摘出術が望ましい(2B)。

2009年版ガイドラインの後,ガイドラインの基準を満たす新たなエビデンスはないものの,今回のガイドライン改訂でも,内科的治療に抵抗性を示す重度の二次性副甲状腺機能亢進症を有する場合は,副甲状腺摘出術を行うことが望ましいとされた。

文献

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  3. Lemos MM, Watanabe R, Carvalho AB, et al. Effect of rosuvastatin and sevelamer on the progression of coronary artery calcification in chronic kidney disease: a pilot study. Clin Nephrol. 2013;80:1–8.
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Contents

第1章
改訂の概要と特徴、WGで何が問題になったか?
深川雅史(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科教授)
第2章
CKD-MBDの診断:骨(CHAPTER 3.2)
稲葉雅章(大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学教授)
第3章
CKD-MBDの治療:高リン血症の治療と血清Ca濃度の維持(CHAPTER 4.1)
横山啓太郎(東京慈恵会医科大学腎臓高血圧内科准教授)
第4章
CKD-MBDの治療:異常PTH濃度の治療(CHAPTER 4.2)
駒場大峰(東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科講師)
第5章
JSDTガイドラインとの整合性
濱野高行(大阪大学大学院医学研究科腎疾患統合医療学准教授)

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