第2章:カルシミメティクス

A) カルシミメティクスをめぐる最新のエビデンス

昭和大学藤が丘病院腎臓内科教授 小岩文彦

はじめに

カルシミメティクスは副甲状腺に発現するカルシウム(Ca)受容体に作用して副甲状腺ホルモン(PTH)分泌を抑制する。カルシミメティクスはPTHだけでなく血中Ca濃度も低下させることから、これまで多くの臨床的有効性が示されてきた。国内で臨床応用された3種類のカルシミメティクスについて最新のエビデンスをまとめる。

1.シナカルセト

シナカルセトと活性型ビタミンD製剤を併用することにより活性型ビタミンD製剤の減量が可能となり、血清Ca、リン(P)を良好に管理しながらPTH管理が可能となる。併用が臨床的に優れた根拠として、副甲状腺細胞のCa受容体のみならずビタミンD受容体発現も増加して両薬剤の反応性が向上する機序が想定されている1)

国内の大規模コホートであるMBD-5D研究では、シナカルセトの開始と活性型ビタミンD製剤の減量の併用により、PTH低下効果に加えて血清Ca、P低下効果を高め2)、この併用パターンで試験デザインした海外のADVANCE試験では冠動脈や大動脈弁石灰化の有意な進展抑制が認められた3)

生命予後への影響では、海外のランダム化比較試験として実施されたEVOLVE試験の主解析で有意な死亡リスクの低下は見られなかった。この背景として、高率な脱落、市販のシナカルセトの使用、両群間における患者背景の違い、動脈硬化性病変と非動脈硬化性病変を混在して解析した、などの問題が浮上した。そこで動脈硬化性病変の有無で群分けしたサブ解析では、シナカルセトは非動脈硬化性病変(心不全、脳卒中、突然死など)のイベント減少と関連した4)。また年齢で層別したサブ解析では、65歳以上では治療群で主要評価項目である全死亡、心筋梗塞、末梢動脈疾患発症の有意な減少を認めたのに対して、65歳未満群ではいずれのイベントも治療の有無で差を認めなかった5)。シナカルセトの骨折に対する効果はEVOLVE試験の主解析で証明されなかったが、患者背景を調整したサブ解析で骨折リスクの有意な低下と関連した6)。MBD-5D研究でもintact PTHが500pg/mL以上の進行した二次性副甲状腺機能亢進症に対してシナカルセトは全死亡リスクの51%低下との関連を認めた7)

2018に発表されたEVOLVE試験の血中Ca濃度に関するサブ解析では、少なくとも1回の低Ca血症を呈した割合はシナカルセト群と対照群で58.3%、14.9%であり、主要評価項目(死亡、心筋梗塞、心不全、狭心症入院、末梢動脈疾患)に及ぼす低Ca血症の影響は見られなかった。また低Ca血症のエピソードは一過性であり、シナカルセト減量、ビタミンDやCa含有リン吸着薬増量などの処置をせずに自然に回復した割合が多かった8)。国外では2004年から、国内では2008年から臨床応用されているシナカルセトは多くのエビデンスが蓄積された豊富な臨床実績を有する薬剤である。

2.エテルカルセチド

エテルカルセチドは新規に開発された静注用Ca受容体作動薬で、2017年2月に世界に先駆けて日本で上市された。第一の特徴は静脈内に投与する注射剤であり、消化管に直接作用しないことから、消化器系副作用が軽減する可能性がある。第二の特徴として、D-アミノ酸ペプチド骨格を有するため生体内でほとんど代謝を受けず、腎排泄型であることから長時間にわたって血中PTH濃度を低下させることが可能である。投与後8~12時間で血中Ca濃度が低下するシナカルセトと異なり、投与後数時間のエテルカルセチドの血中Ca濃度低下は緩やかである。エテルカルセチドは血液透析により除去されるが、血中エテルカルセチド濃度は4週以降定常状態になる9)。初回投与と4週間の反復投与を比較すると、血中PTHの低下はほぼ同様で、血清Ca濃度は4週後やや低下傾向を認め、低下率は-12.75%であった10)

国内の第Ⅲ相プラセボ対照無作為化比較試験では、intact PTH >300pg/mLの血液透析患者に対してエテルカルセチドもしくは対照薬を12週間投与した。エテルカルセチドの開始用量は5㎎週3回で、PTHや血清Ca濃度に応じて調整した。主要評価項目である管理目標PTH濃度の達成率は治療群、対照群がそれぞれ59.0、1.3%と有意に高値であった。また血清補正Ca値も対照群に比較して有意に低下した11)。投与量の内訳をみると、21例中5㎎が8例、7.5㎎が1例、10㎎が8例、15㎎が4例で、半数以上の1回投与量が5~10㎎であった12)。海外のシナカルセトを対照にしたランダム化無作為化比較試験(RCT)では、主要評価項目であるintact PTH濃度が前値から30%以上低下した割合においてエテルカルセチド群がシナカルセト群に対する非劣性を認めた。さらに副次評価項目であるPTH低下>50%かつ>30%は、エテルカルセチド群のシナカルセト群に対する優位性が示された13)。エテルカルセチドは透析中のCa変動がシナカルセトより少なく、国内臨床試験では292例中低Ca血症発現は3例(1.0%)で、副作用としてQT延長は報告されていない。しかしこのRCTでは、血清補正Caが8.3㎎/dl未満の発症割合はそれぞれ17例(5.0%)と8例(2.3%)と減少を示さなかった13)

3.エボカルセト

エボカルセトはシナカルセトの臨床的課題である消化器症状の軽減、薬物相互作用の改善を目的としてシナカルセトと同等の薬物動態プロファイルの薬剤を目指して開発された。維持血液透析患者を対象とした国内第Ⅱ相用量反応試験では、エボカルセト0.5、1、2㎎およびシナカルセト25㎎を1日1回3週間投与した結果、用量依存的なPTH濃度、血清補正Ca 濃度の低下を認め、PTH濃度低下率はエボカルセト2㎎とシナカルセト25㎎が近似していた14)。補正Ca低下が本剤2㎎群で3例認められ、開始用量は通常1㎎で、intact PTH が500 pg/mL 以上かつ血清補正Ca 濃度が9.0 mg/dL 以上では2㎎からの開始用量に設定された。

エボカルセトとシナカルセトの第Ⅲ相比較試験では、intact PTH 濃度平が60 pg/mL 以上240 pg/mL 以下を達成したPTH管理目標達成割合はエボカルセトが72.7%、シナカルセト群が76.7%とエボカルセトのシナカルセトに対する非劣性が証明された15)。安全性では悪心、嘔吐、腹部不快感、食欲減退などの上部消化管障害発現割合もそれぞれ18.6%、32.8%と本剤がシナカルセトに比べて低値であった。

第Ⅲ相長期投与試験では、開始用量は1 mg(事前検査時のintact PTH 濃度が500pg/mL 以上かつ血清補正Ca 濃度が9.0 mg/dL 以上の場合は2mg)とし、intact PTH 濃度を60 pg/mL 以上240 pg/mL 以下の範囲に管理することを目標に1~12mg の範囲で用量を調整した。その結果、管理目標PTH濃度の達成割合は0週の40.9%から52週後では72.3%に達した。血清補正Ca濃度も安定して推移し、52週後は8.90±0.57 mg/dL であった14)

エボカルセトの胃排出能はラットを用いた検討により、シナカルセトで見られた濃度依存性の抑制作用を明らかに改善した。またシナカルセトがPTH低下濃度の3倍、10倍の投与量増加で嘔吐発現が各々0、6例であったのに対してエボカルセトは10倍、30倍の投与量増加でも嘔吐発現が0、1例とシナカルセトより嘔吐マージンを拡大した16)。国内臨床試験でも先述のように上部消化管症状の発現率は明らかに減少しており、シナカルセトの上部消化器症状により増量困難、あるいは投与困難な患者に対する切り替え投与で副作用の軽減が期待される。

以上からエボカルセトはシナカルセトと同等のPTH、Ca低下作用とシナカルセトに比べて上部消化器症状の発現が軽減しており、投与量が1~12mgと幅広くPTH濃度低下率から換算するとシナカルセトに比べて低用量からの開始やより高用量の投与が可能であり、様々な程度の副甲状腺機能亢進症に対応可能な薬剤と考えられる。

おわりに

3種類のカルシミメティクスの特徴について最新のエビデンスを中心まとめた。

CKD-MBD管理を容易にしたカルシミメティクスは新規薬剤の登場によりこれまで投与できなかった対象にも拡大することが予想される。カルシミメティクスが問題点をクリアし、今後も新たなエビデンスを蓄積しながらCKD-MBD管理の向上に寄与することを期待したい。

文献

  1. Rodriguez, ME, Almaden Y, Canadillas S, et al. "The calcimimetic R-568 increases vitamin D receptor expression in rat parathyroid glands." Am J Physiol Renal Physiol 292: F1390-1395, 2007.
  2. Fukagawa M, Fukuma S, Onishi Y, et al. Prescription Patterns and Mineral Metabolism Abnormalities in the Cinacalcet Era: Results from the MBD-5D Study. Clin J Am Soc Nephrol 7: 1473-1480, 2012.
  3. Raggi P, Chertow GM, Torres PU, et al. "The ADVANCE study: a randomized study to evaluate the effects of cinacalcet plus low-dose vitamin D on vascular calcification in patients on hemodialysis." Nephrol Dial Transplant 26: 1327-1339, 2011.
  4. Wheeler DC, London GM, Parfrey PS, et al. EValuation Of Cinacalcet HCl Therapy to Lower CardioVascular Events (EVOLVE) Trial Investigators. Effects of cinacalcet on atherosclerotic and nonatherosclerotic cardiovascular events in patients receiving hemodialysis: the EValuation Of Cinacalcet HCl Therapy to Lower CardioVascular Events (EVOLVE) trial. J Am Heart Assoc 17 (6): e001363, 2014.
  5. Parfrey PS, Drueke TB, Block GA, et al. Evaluation of Cinacalcet HCl Therapy to Lower Cardiovascular Events (EVOLVE) Trial Investigators. The Effects of Cinacalcet in Older and Younger Patients on Hemodialysis: The Evaluation of Cinacalcet HCl Therapy to Lower Cardiovascular Events (EVOLVE) Trial. Clin J Am Soc Nephrol 7: 791-799, 2015.
  6. Moe SM, Abdalla S, Chertow GM, et al. Effects of cinacalcet on fracture events in patients receiving hemodialysis: The EVOLVE Trial. J Am Soc Nephrol 26: 1466-1475, 2015.
  7. Akizawa T, Kurita N, Mizobuchi M, et al. PTH-dependence of the effectiveness of cinacalcet in hemodialysis patients with secondary hyperparathyroidism. Sci Rep 6: 19612, 2016.
  8. Floege J, Tsirtsonis K, Iles J, et al. Incidence, predictors and therapeutic consequences of hypocalcemia in patients treated with cinacalcet in the EVOLVE trial. Kidney Int 93: 1475-1482, 2018.
  9. パーサビブ®インタビューフォーム(第1版).
  10. Yokoyama K, Fukagawa M, Shigematsu T, et al. A Single-and multiple-dose, multicenter study of etelcalcetide in Japanese hemodialysis patients with secondary hyperparathyroidism. Kidney Int Rep 2: 634-644, 2017.
  11. Fukagawa M, Yokoyama K, Shigematsu T, et al. A phase 3, multicentre, randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group study to evaluate the efficacy and safety of etelcalcetide (ONO-5163/AMG 416), a novel intravenous calcimimetic, for secondary hyperparathyroidism in Japanese haemodialysis patients. Nephrol Dial Transplant 32: 1723-1730, 2017.
  12. Yokoyama K, Fukagawa M, Shigematsu T, et al. A 12-week dose-escalating study of etelcalcetide (ONO-5163/AMG 416), a novel intravenous calcimimetic, for secondary hyperparathyroidism in Japanese hemodialysis patients. Clin Nephrol 88: 68-78, 2017.
  13. Block GA, Bushinsky DA, Cheng S, et al. Effect of etelcalcetide vs cinacalcet on serum parathyroid hormone in patients receiving hemodialysis with secondary hyperparathyroidism. A randomized clinical trial. JAMA 317: 156-164, 2017.
  14. オルケディア®インタビューフォーム(第1版).
  15. Fukagawa M, Shimazaki R, Akizawa T; Evocalcet study group. Head-to-head comparison of the new calcimimetic agent evocalcet with cinacalcet in Japanese hemodialysis patients with secondary hyperparathyroidism. Kidney Int 2018 Jul 20.
  16. Kawata T, Tokunaga S, Murai M, et al. A novel calcimimetic agent, evocalcet (MT-4580/KHK7580), suppresses the parathyroid cell function with little effect on the gastrointestinal tract or CYP isozymes in vivo and in vitro. PLoS One 13: e0195316, 2018.

Contents

第1章
CKD-MBD診療ガイドラインレビュー
(IMSグループ板橋中央総合病院腎臓内科部長 / 腎臓ネット代表)塚本 雄介
第2章
A)カルシミメティクスをめぐる最新のエビデンス
(昭和大学藤が丘病院腎臓内科教授)小岩 文彦
B)カルシミメティクス治療の問題点
(ア)消化器症状
(日高会日高病院腎臓病治療センター研究統括部長
 東京女子医科大学東医療センター客員教授)永野 伸郎
(イ)低カルシウム血症
(東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科准教授)常喜 信彦
第3章
ビタミンD療法のUp-To-Date
(大阪市立大学大学院医学研究科血管病態制御学研究教授)庄司 哲雄
第4章
カルシミメティクス時代の副甲状腺摘出術の意義と位置付け
(東海大学医学部付属八王子病院腎内分泌代謝内科教授)角田 隆俊

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